
レンタルと組み合わせて柔軟に運用できる、
足りなくなった際もすぐに対応・手配してフォロー
展示照明における「光」の役割について、どのようにお考えでしょうか?
私は、光が展示空間や作品の意味を根底から変えてしまうほど重要な役割を担っていると考えています。
HOSOO GALLERYは、西陣の老舗『細尾』が運営するアートギャラリーとして、2019年9月に設立されました。アーティスト、デザイナー、建築家など、さまざまな分野の専門家と協働しながら、作品を制作し、企画展示を行っています。
西陣織は、「紋織物」と呼ばれる立体的な構造を持つ織物であり、単なる平面作品とは異なり、光によって十色に変わってしまうアート作品です。そのため、作品の魅力を引き出すには、「色」なのか、「(縦と横の組み合わせによるミクロの世界に迫る)構造」なのか、あるいは「光の反射」なのか、どこに織物の焦点を当てるのかを考えることが重要だと思っています。
そして、それを表現する手段として、「光」の役割=照明の設計は、欠かせない要素だと感じています。
ITLの照明を使って、実際にどのような空間づくりや作品演出ができましたか?
最大の魅力は、ブレードがついているカッタースポットにあります。
ギャラリーの空間を黒い壁面で構成し、作品が浮かび上がるように見せる方法を計画した際に、光のあたる範囲を緻密に調整できるカッタースポットがとても効果的でした。
また、調光・調色機能があることも大きな魅力です。
例えば、桜の樹木による染色を見せる展覧会では、太陽光に近いニュートラルな光にして自然な見え方を目指し、あえて色温度をあたたかみのあるトーンに設定して強調したりと、1つの展覧会においても作品ごとに異なる光を当てるという試みも行いました。
これにより、桜色の複雑な様相を表現することができ、それぞれの作品が持つ固有性を際立たせることができました。
また、ズームスポットでは光の中心からその周辺に伸びるグラデーションがとても美しく、カッタースポットでは作品にムラなくあたるので、他社の照明器具製品よりもさらに自然な没入感を与えてくれます。
作品展示において、普段どのような照明の工夫や配慮をされていますか?
上記で答えたように、色も光も絶対的なものではなく、環境によって変わるものなので、展示空間でしかみせることができない最高の状態を作り込むことを心がけています。
またHOSOO GALLERYは、本来外光が差し込む窓もあるホワイトキューブのギャラリーなのですが、来場者に目の前の展示作品に集中してもらうため、展示によっては、外光を遮断し、黒壁にして、空間の荒を削ぎ落とした非現実的な空間を演出しています。
しかし、暗すぎて目が慣れるまで奥の小部屋にある展示作品に気づいてもらえないこともあるので、来場者への配慮として通路の導線として照明を活用することもあります。
また映像作品を展示する際には必然的に展示空間を真っ暗にしなくてはいけないのですが、影響がでないように空間照明としてバランスを調整しながら使用したり、光を限定的に絞りこめたり、調光・調色を調整して、光を繊細に演出できるので、本来は作品を照らすものですが、空間全体を作り上げることにも活用できることも強みだと思います。
ITLの照明レンタルサービスを利用されて、どのようなメリットを感じましたか?
他社の場合ですとレンタル品ですと質が落ちてしまうケースがあるのですが、ITLの照明器具ですと一定のクオリティで安心できるのも大きいと感じました。
また、展示企画によって、作品の形状も壁面の色もまちまちなので、その都度展示内容にあったレンタルの照明器具について、照明デザイナーのようにアドバイスいただけたり、レンタルの実機を持ってきてくださって、照明器具を試すことができるのは最高にありがたいです。
どの展示でも使いやすい汎用性の高い照明と、企画ごとに必要となる特殊な照明は異なりますが、レンタルと組み合わせて柔軟に運用できる点や、足りなくなった際もすぐに対応・手配して、フォローしてくださるのも嬉しいです。
ITLの照明を選んで「よかった」と感じた点を教えてください。
照明器具の購入に際しては、どこが優れているかを熱弁される他業者さんと異なり、実際にギャラリーに足を運んでもらい、実機のデモをしていただいたことがとても参考になりました。
実際の展示の計画に合わせて照明プランを作成していただきながら、購入する機器について的確なアドバイスを受けられたことで、無駄のない照明器具選びができました。また、展覧会によって照明デザイナーさんが入る場合以外にも、私が照明を当てることがあるので、そういった際に気軽に相談にのってもらったり、光=照明に対しての考え方を教えてもらったり…単純に商品を購入しているだけではなく、照明に対しての解像度が上がり、光に対するリテラシーも向上しました。