さくらももこの今尚輝きつづける感性に迫る
2020年、猛威を振るった新型コロナウイルス感染症により、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、なかなか訪れられない日々が続きました。
しかし、新しい生活様式のもと事前予約をはじめ、検温や消毒など徹底した感染症対策を行い、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべく、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。
そのような経緯から横浜・そごう美術館にて開催中の「さくらももこ展」をご紹介したいと思います。
そごう横浜店内6階にある美術館のそごう美術館は、1985年9月20日にオープンした際に開館しました。
百貨店内の博物館としては日本初の博物館法に基づく施設で、分野を問わず幅広く内外の作品を企画展にて紹介しています。
現在、横浜・そごう美術館にて開催中の「さくらももこ展」では、大人から子供まで誰からも愛される国民的まんがとなった『ちびまる子ちゃん』でお馴染みの作者、さくらももこの今尚輝きつづける感性に迫ることができます。
さくらももこは、まんが家、エッセイスト、作詞家、脚本家といくつもの顔を持ち、新しいキャラクターやエッセイを次々と生み出し続けた稀代のアーティストです。
小さいころ教師に「平成の清少納言」と言われたことがきっかけで、エッセイのようなマンガを描こうという動機が生まれ、1986年に連載を開始し、90年のアニメ化以来、自身の少女時代をモデルとした代表作で、大人から子供まで誰からも愛される国民的漫画『ちびまる子ちゃん』は今尚愛されています。
また、自身の文章力を生かした初期エッセイ集三部作『もものかんづめ』『さるのこしかけ』『たいのおかしら』は、いずれもミリオンセラーを記録しています。
会場では、序章から終章まで7部構成となっており、数々の代表作品を含む直筆原稿やカラー原画など、約300点もの作品が展示されています。
作者の学生時代を振り返る作文や文集はもちろん、『ちびまる子ちゃん』や『COJI-COJI』といった人気作品の原画、仕事場の様子、少女時代の私物、息子との合作絵本なども展示されており、これまでにないボリュームで展開されています。
筆者にとって『ちびまる子ちゃん』が一番馴染みが深く、主人公を取り巻く家族や友人たちにまつわる ものから、爆笑できるものや思わずほほ笑んでしまうエピソードなど、一点、一点、その直筆原稿を読み込んでしまいました。
子供の頃の出来事や体験で感じたことは、大人になると記憶が褪せてしまうものですが、これほど具体的に描写できることはもちろん、誰しもがその共感できるツボを抑えられていることにも驚かされます。
“描く”ことと“書く”ことを楽しみつくし多忙を極める一方、季節のうつろいや小さな日常をこよなく愛した、さくらももこ。
大人も子供も世代を超えてその世界観を楽しみながら、彼女の全ての仕事を見て楽しめ、今尚輝き続ける感性に迫る本展覧会。
ぜひ会場でさくらももこの魅力に触れてみてはいかがでしょうか。
取材・撮影・文:新麻記子
【取材】
さくらももこ展
会期:2023年4月22日(土)〜5月28日(日)
会場:そごう美術館(横浜市西区高島2-18-1 そごう横浜店 6階)
休館日:会期中無休
入館料:一般1,400円、大学・高校生1,200円、中学生以下無料
ホームページ:https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/