アイティーエル株式会社では、一人でも多くの方が美術館や博物館を訪れるきっかけとなるべく、2020年7月より【ミュージアム・レポート】を開始いたしました。
困難な状況下においても美術館・博物館ではさまざまな企画や対策をおこなっていることから、全てのアートシーンに対してこれからも変わらず応援していくべく、アイティーエルも継続して情報を発信していきたいと思います。
今回は、東京現代美術館にて開催中の坂本龍一の大型インスタレーション作品を包括的に紹介する、日本では初となる最大規模の個展「坂本龍一 | 音を視る 時を聴く」展(会期:開催中〜2025年3月30日(日))をご紹介します。
坂本龍一(さかもと・りゅういち)とは?
坂本龍一(1952-2023)は、日本を代表する音楽家、作曲家、ピアニスト、プロデューサー、そして環境活動家です。さまざまなジャンルでの功績によって国際的に評価されています。
坂本は50年以上に渡り、多彩な表現活動を通して、時代の先端を常に切りひらいてきました。
90年代からはマルチメディアを駆使したライブパフォーマンスを展開し、さらに2000年代以降は、さまざまなアーティストとの協働を通して、音を展示空間に立体的に設置する試みを積極的に実践しました。
1980年代から2000年代を通じて多くの展覧会や大型メディア映像イベントに参画、2013年山口情報芸術センターでアーティスティックディレクター、2014年札幌国際芸術祭ゲストディレクターを務めました。
2018年piknic/ソウル、2021年M WOODS/北京、2023年M WOODS/成都の大規模インスタレーション展示、また没後も最新のMR作品が世界を巡回するなど、アート界への積極的な越境は今もつづいています。
本展覧会について
本展覧会では、生前坂本氏が東京都現代美術館のために遺した展覧会構想を軸に、坂本氏の創作活動における長年の関心事であった「音と時間」をテーマにしています。
美術館屋内外の空間に、坂本氏が手がけた大型インスタレーション作品を軸に、アピチャッポン・ウィーラセタクンとともに制作した《async-first light》や、坂本の音楽を使ったカールステン・ニコライの新作映像作品、高谷史郎と協働した2007年の作品《LIFE–fluid, invisible, inaudible…》など10作品余りを公開。
会場では、音楽鑑賞や美術鑑賞とは異なる未発表の新作とこれまでの代表作を通し、没入型・体感型サウンド・インスタレーション作品をダイナミックに構成・展開し、坂本氏の先駆的・実験的な創作活動の軌跡をたどり、この類稀なアーティストの新しい一面を広く紹介。
本展覧会のおすすめ作品
本展の見どころの一つは、坂本龍一+中谷芙二子+高谷史郎《LIFE-WELL TOKYO》霧の彫刻 #47662。
坂本龍一と高谷史郎、そして、大阪万博のペプシ館を水による人工の霧で覆った「霧の彫刻」(1970年)で知られ、世界各地で霧のプロジェクトを実施している中谷芙二子との特別コラボレーション。
その時の風、気温、湿度などで姿を変える霧の動きをカメラで捉え、坂本氏による音へと瞬時に変換しているといいます。会場では、霧と音に満たされた空間に浸ることができるでしょう。
本作品は、美術館屋外のサンクスガーデンに設置され、霧と光と音が一体となり、自然への敬愛や畏怖を想起させ、夢幻のシンフォニーが幻想的で壮大な世界へと誘います。
また、筆者の印象に残っている作品の一つは、1996年に水戸美術館で初演された音楽と映像のコラボレーションが楽しめる坂本龍一×岩井俊雄《Music Plays Images X Images Plays Music》。
本作品は、岩井氏の所蔵するアーカイブ資料から発掘された、坂本氏が演奏する「アルスエレクトノニカ97」でのMIDIデータと、その記念映像データから伝説的なパフォーマンスの再現を蘇らせました。
先鋭的なメディアを楽しみつつ巧みに使いこなし、音を通した表現の可能性を拡張した、坂本氏の原点とも言える姿を垣間見る/聴くことができます。
最後に
坂本龍一氏の「音を視る、時を聴く」ということは、鑑賞者の目と耳を開きながら、心を揺さぶり、従来の音楽鑑賞や美術鑑賞とは異なる体験を生み出します。
彼が追求し続けた「音を空間に設置する」という芸術的挑戦と、「時間とは何か」という深い問いかけは、時代や空間を超えて、新たな視座をもたらし、創造と体験を開き続けてくれることでしょう。
【情報】
「坂本龍一 | 音を視る 時を聴く」
期間:2024年12月21日〜25年3月30日
会場:東京都現代美術館 企画展示室 1F・B2ほか
住所:東京都江東区三好4−1−1|地図
営業時間:10時〜18時(入場は閉館30分前まで)
休:月曜・12月28日〜1月1日・14日・2月25日休(1月13日・2月24日は開館)
料金:一般2,400円
問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
ホームページ:https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/RS/