
展示風景
アイティーエル株式会社では、一人でも多くの方が美術館や博物館を訪れるきっかけとなるべく、2020年7月より【ミュージアム・レポート】を開始いたしました。
困難な状況下においても美術館・博物館ではさまざまな企画や対策をおこなっていることから、全てのアートシーンに対してこれからも変わらず応援していくべく、アイティーエルも継続して情報を発信していきたいと思います。
今回は東京美術館にて開催中のミロの人生と作品の変遷が辿れる『ミロ展』(会期:開催中〜7月6日(日))をご紹介します。
本展覧会について

展示風景
色彩と形の鮮やかなシンフォニーを奏でる、20世紀を代表するスペインの画家、ジュアン・ミロ。
シュルレアリスムの画家として名声を得ますが、それに留まらずさまざまな表現を試みたことで、彼の創作活動は、没後40年を迎えた今、世界的に再評価されています。
本展は、〈星座〉シリーズをはじめ、初期から晩年までの各時代を彩る絵画をはじめ、陶芸、彫刻により、90歳まで新しい表現へ挑戦し続けたミロの芸術を包括的に紹介します。
世界中から集った選りすぐりの傑作の数々によりミロの芸術の真髄を体感できる空前の大回顧展です。
ジュアン・ミロについて

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1893年にスペインのカタルーニャ州に生まれたジュアン・ミロ(1893〜1983年)は、同じくスペイン出身のピカソと並び20世紀を代表する巨匠に数えられます。
1893年スペインのバルセロナに生まれ、同地の美術学校を中退後、会計の仕事に就いたものの2年余りで辞めて、バルセロナのガリ美術学校で本格的に絵画の勉強を始めます。
1918年バルセロナで最初の個展を開催。彼の芸術は自身の生地であるカタルーニャの歴史と風土に深く結び付いています。
1919年パリに出て、1924年にシュルレアリスム運動の主唱者であるアンドレ・ブルトン、ルイ・アラゴン、ポール・エリュアールらと知りあい、シュルレアリストの一員となり、幻覚的、オートマティスム的絵画を経て、オブジェやコラージュなど様々な画風を取り入れて自己の表現を試みます。

展示風景:右:ジュアン・ミロ
1936年に始まったスペイン内戦に刺激を受けて、描かれた壁画の大作『刈り入れ人』(逸失)を1937年パリ万国博覧会スペイン共和国館に発表。
1940〜41年、第二次世界大戦の戦禍のさなかに欧州を転々としながら、天上的な霊感と美をもつ〈星座〉シリーズを制作。星、女、鳥などの象形文字的形象を駆使して、幼児的天真爛漫と絶妙な技術との結び付いた詩的絵画を制作しました。戦後は、彫刻、陶器、版画にも優れた作品も生み出しました。
戦後には、美術の中心地となったアメリカで評価されて巨匠としての地位を確立します。1970年代には、晩年にも関わらず大画面の作品を描き、新たな表現に挑戦し続けました。
1983年マジョルカ島で没しましたが、太陽や星、月など自然の中にある形を象徴的な記号に変えて描いた、詩情あふれる独特な画風は日本でも高い人気を誇ります。
本展覧会みどころ
1. ミロの創作活動全体を振り返る大回顧展

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90歳で亡くなるまで新たな表現に挑戦し続けたミロ。本展はその70年におよぶ創作活動全体を振り返ります。日本でのミロの回顧展としては、存命中の画家自身が協力した1966年の展覧会に並ぶ、最大規模の回顧展になります。
2. 代表作の〈星座〉シリーズのうち3点が出品

展示風景:〈星座〉シリーズ
ミロの代表作に挙げられるのが1940年から41年にかけて描いた〈星座〉シリーズです。戦禍を逃れながら、夜や音楽、星を着想源にして、平和への希望を託した全23点が描かれました。現在、シリーズの各作品は世界中に散らばっており、複数の作品をまとめてみられる機会は貴重です。
3. 各時代を代表する名品が世界中から集結

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故郷カタルーニャの地で描いた初期の名作《ヤシの木のある家》、1920年代の傑作《オランダの室内I》、晩年を迎えても新たな表現に挑戦した《焼かれたカンヴァス2》など、各時代を代表する作品の数々が世界中から集います。
最後に

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ミロの初期作品は、素朴で具象的な自画像や風景画が中心で、まだ伝統的な絵画スタイルを前面に出していましたが、が、パリの前衛芸術に触れることで作風が一変し、シュルレアリスムの影響を受けた奇抜な色彩や幻想的なモチーフが増え、晩年作品になるとシンプルながら力強い線とカラフルな色彩が特徴的になるなど…ミロの人生と作品の変遷が辿れる本展覧会。
会期中には、「スペイン☆ミロウィーク」と題して、ミロが生まれ育ったカタルーニャやスペインの文化を体感できる関連イベントを開催。スペインにゆかりの楽曲が聞けるギター演奏会等が催されるほか、チュロスやノンアルコールサングリアなどスペインの食を楽しめるキッチンカーが美術館正門横に出店されます。
ぜひ世界中から集った選りすぐりの傑作の数々により、ミロの芸術の真髄を体感できる空前の大回顧展に足を運んでみてください。
【展覧会情報】
ミロ展
会期:2025年3月1日(土)~7月6日(日)
会場:東京都美術館 企画展示室
休室:月曜日、5月7日(水) ※ただし、4月28日(月)、5月5日(月・祝)は開室
時間:9:30~17:30、金曜日は20:00まで(入室は閉室の30分前まで)
ホームページ:https://miro2025.exhibit.jp/