
アイティーエル株式会社では、一人でも多くの方が美術館や博物館を訪れるきっかけとなるべく、2020年7月より【ミュージアム・レポート】を開始いたしました。
今回は、森美術館にて開催中の森美術館が3年に一度、日本の現代アートシーンを総覧する定点観測的な展覧会『六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠』をご紹介します。
本展覧会について

展示風景:「六本木クロッシング 2025 展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」森美術館(東京)2025-2026年
制作協力:SCAI THE BATHHOUSE, Tokyo
第8回目となる今回は、森美術館のキュレーターに加えて国際的に活躍するアジアのゲストキュレーター2名を迎え、「時間」をテーマに、国籍を問わず日本で活動する、もしくは日本にルーツがあり海外で活動するアーティスト全21組を紹介します。
会場では、絵画、彫刻、映像といった伝統的メディアだけでなく、工芸や手芸、ZINE、インスタレーション、サウンド・ピース、参加型プロジェクトまで、約100点を超える多様で多彩な表現が一堂に会します。
本展の副題である「時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」が示すのは時間の貴さと儚さ。
各作品に現れるさまざまな時間の交差をとおして、日本のアートを多角的に見つめ直します。
本展を紐解く4つの鍵ー時間ー

本展のテーマ「時間」を読み解く4つの観点から、多様な作品同士の繋がりを理解することができます。
最初の展示室では、”さまざまな時間のスケール”として、個人的な経験と普遍的な事柄の関係性を探求する作品を紹介しています。これらのアーティストは、限られた一人の人生の時間を、日常、身体、歴史といった異なる時間と結びつけています。
続く、”時間を感じる”では、時計で測られる一律な時間ではなく、多様な時間の存在を感じさせる作品を紹介します。時間とは均一ではなく、多様に感じられるものだということを示します。

“ともにある時間”として、歴史的な時間がいかに現在において持続するか、また相互理解が協働プロセスをとおしていかに生まれるかを示す作品も紹介します。
最後の”生命のリズム”では、世界のあらゆる存在が独自の生命のリズムを刻むことで、「時間」が流れていることを表現した作品を紹介しています。これらの作品は、時間が複数のリズムで現在を形作ること、そして、人間の時間的経験の不可逆性を提示します。
見どころ①多様なメディアによる新作

本展では、多くのアーティストが新作を発表します。A.A.Murakamiによる、AIが記述したオペレーティングシステムによって機能する、シャボン玉を用いた大型の新作インスタレーション《水中の月》のほか、廣直高の新作絵画と彫刻作品、和田礼治郎の彫刻、マヤ・ワタナベの映像など、多様なメディアによる作品が揃います。
見どころ②体験型、参加型の鑑賞体験

木原共によるAIゲーム作品のプレイ体験に加え、宮田明日鹿が会期中に実施する「出張手芸部」への参加など、本展会場ではさまざまな体験が可能です。
アメフラシはワークショップを通して、草鞋づくりなどの伝統産業継承プロジェクトを紹介し、北澤潤はろうけつ染めのワークショップを行います。
また、ズガ・コーサクとクリ・エイトによる作品が、展覧会最終日に解体される際には、鑑賞者は作品のパーツを持ち帰ることができます。
見どころ③「日本」を再考する―グローバルなアートシーンのなかでの「日本」
日本のアートがいまや国籍や地理的な境界に限定されないことを本展は明示します。
ケリー・アカシはブロンズやガラスを用いた彫刻作品を通して、身体や記憶、刹那と永遠性といったテーマを詩的に表現し、キャリー・ヤマオカは歴史的記憶とその消失、また風景を巡る一連の作品を創り出すためにアナログ写真の手法を用います。
ともに日系アメリカ人であるアカシとヤマオカの作品には、国境や世代を越えて共鳴する日本的な抒情性を見出すことができます。
シュシ・スライマンはマレーシア人アーティストでありながら、長年にわたり尾道で土地の歴史やコミュニティに根差した活動を続けています。
多様な視点による記憶、移動、越境といったテーマが見て取れるこれらの作品は、日本の社会と文化を様々な形で物語ります。
最後に

副題が示すように、永遠とするものと儚いもの、個人的な記憶と歴史的時間の交差が各作品の軸となっており、鑑賞者自身の時間への意識を刺激します。
作品は、身体や記憶、コミュニティ、歴史といった軸を横断しながら、個々の時間感覚が普遍的な時間と、どう共鳴し合うのかを問いかけている気がしました。
国内で活動する作家だけでなく、日本にルーツを持つ海外のアーティストも含め、その多様な経験や視点によって、より「時間」の捉え方に奥行きを与えてくれます。
「時間」について深く思索するための贅沢な場であり、 現代アートの多層的な言語を通して、鑑賞者自身の時間感覚を豊かにする展覧会といえるでしょう。
【情報】
六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠
会期:2025年12月3日(水)~ 2026年3月29日(日)
会場:森美術館
時間:10:00~22:00 ※火曜日のみ17:00まで
※最終入館は閉館時間の30分前まで
休館:年中無休
ホームページ:https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/roppongicrossing2025/index.html