国民的漫画を生んだサザエさんの作者・長谷川町子の魅力に触れる
新型コロナウイルス感染症により美術館・博物館・ギャラリーなどに気軽に足を運べなくなってしまいました。
そんな状況下に負けじと感染症対策をきちんと行いながら、運営に努める施設関係者への思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけになること考え、美術館・博物館・ギャラリーの様子を伝える【ミュージアムレポート】をスタートすることとなりました。
そのような経緯から、今回はその第一弾として、長谷川町子記念館・長谷川町子美術館をご紹介します。
7月11日(土)より長谷川町子生誕100年を記念し、『長谷川町子記念館(長谷川町子美術館の分館)』がオープンしました。
今尚、お茶の間で人気を誇る『サザエさん』の作者としてお馴染みの漫画家・長谷川町子。
15歳で漫画家としてデピューしてから、約半世紀ほどその活動において第一線を走り続け、これまで心に残る数々の作品を生み出してきました。その仕事は新間や雑誌の連載にはじまり、自ら興した姉妹社から単行本の制作出版、絵本づくりなど多岐に渡ります。
この度、美術館の分館として設立された長谷川町子記念館では、約1万点にも及ぶ収蔵作品から、原画や仕事道具の展示により、その輝かしい功績を紹介しています。
会場では、漫画家長谷川町子の代表作品『サザエさん』、『エプロンおばさん』、『いじわるばあさん』の世界観をデータと書籍の双方向から楽しめるコーナーや、彼女が描いたさまざまな作品やその人となり、数々の資料から仕事の全貌がご覧になれる常設展。そして、今後あらゆる角度から漫画家長谷川町子の仕事を紹介する企画展が楽しめます。
今回、記念館のオープンとともに9月27日(日)まで開催される企画展『長谷川町子の漫画創作秘話』では、代表作『サザエさん』を中心に漫画の創作過程を追いながら、作品に込められたこだわりとその心情、垣間見える苦悩なども織り交ぜながら、長谷川町子の漫画制作の秘密に触れられます。
展示作品から、草稿(ネーム)を見ると同じテーマでも何パターンも考察し、納得のいくまで作品と向き合っている姿勢が見られます。彼女が描いた美しい線画が年月を重ねるごとに洗練され、そのわずかな線で個性や性格まで表そうとする様子が伺えます。
さらに、館内1のSHOP(購買部)では長谷川町子の原画や作品をもとに作られたオリジナルグッズがお買い求めになれるほか、同空間のCAFE(喫茶部)では長谷川町子が好んで口にしたことから着想を得た、下町の老舗のほうじ茶やパパイアのお菓子などがご提供されます。
また、記念館の向かいにある1985年に開館した長谷川町子美術館では、長谷川町子と姉・毬子で蒐集した美術品が展示されています。
収蔵コレクション展『長谷川町子が愛したものたちⅠ』では、シャガール、ルオー、ユトリロ、ピカソなどのフランス近代絵画の作家が手掛けた絵画作品、山口華陽、加山又造、東山魁夷など巨匠が描いた日本画作品や、藤田喬平などの美しい工芸品もご覧になれます。
長谷川町子が生きた明るくポップで少しレトロな昭和の良さが感じられ、大人から子どもまで楽しめる心地良い空間(長谷川町子記念館・長谷川町子美術館)に足を運んでみてはいかがでしょうか。
昭和、平成、令和と時代とともに著しく変化していくものもありますが、日々の暮らしといった原点に触れられることでしょう。
取材・執筆・撮影:新 麻記子
長谷川町子記念館
所在地:世田谷区桜新町1-30-6
※長谷川町子美術館、向かい側
開館時間:10:00〜17:30(受付締め切りは16:30)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合はその翌日)、展示替期間、年末年始
お問い合わせ:TEL 03-3701-8766
HP:https://www.hasegawamachiko.jp/#top