アイティーエル株式会社では、一人でも多くの方が美術館や博物館を訪れるきっかけとなるべく、2020年7月より【ミュージアム・レポート】を開始いたしました。
困難な状況下においても美術館・博物館ではさまざまな企画や対策をおこなっていることから、全てのアートシーンに対してこれからも変わらず応援していくべく、アイティーエルも継続して情報を発信していきたいと思います。
今回は、パナソニック汐留美術館にて開催中の『ベル・エポック―美しき時代 パリに集った芸術家たち ワイズマン&マイケル コレクションを中心に』をご紹介します。
本展覧会について
パリは、1870年から71年にかけて、普仏戦争とパリ・コミューンの動乱を経験して以降およそ半世紀近くの間、平和と政治的な安定を享受しました。この時代に、オペラ座、エッフェル塔、サクレ=クール寺院など、現在のパリの都市景観を象徴する建造物も次々と完成し、巨大な近代都市へと変貌を遂げました。
19世紀末から1914年頃までのパリが芸術的にもっとも華やいだ時代「ベル・エポック」。
本展覧会は、ベル・エポック期から1930年代に至る時代の美術、工芸、舞台、音楽、文学、モード、科学といったさまざまなジャンルで花開いた文化のありようを重層的に紹介するものです。
会場には、トゥールーズ=ロートレックやジュール・シェレによるポスター、当時のブルジョワたちが身にまとった衣服に装身具、エミール・ガレやルネ・ラリックの工芸作品に加えて、芸術家同士の交流がうかがえる書簡や稀覯本など、その頃のパリの繫栄や活気を鮮明に伝える多様な分野の作品が展示されます。
展示の中核をなす、デイヴィッド・E.ワイズマン氏とジャクリーヌ・E.マイケル氏の絵画コレクションは、19世紀末から20世紀初頭のモンマルトルの世相を色濃く反映した珠玉の作品群です。
展覧会の見どころと特徴
あらゆる分野の芸術文化を重層的に紹介
さまざまな芸術文化、科学が花ひらいたベル・エポック期のパリ。この時代を紹介する本展覧会では、絵画や工芸、舞台、音楽、文学、モードなど、あらゆる分野の芸術文化を重層的に紹介しています。
会場では、当時描かれパリの暮らしを伝える絵画のみならず、シャルル・ボードレールやポール・ヴェルレーヌの初版本や、マルセル・プルーストの自筆書き込み校正刷など、当時のブルジョワ階級の女性や子どもたちが身にまとった衣服や装身具、自宅を飾ったマイセンやガレやラリックの工芸作品などを取り上げます。その一方で、豊かな社会の影で生きる人々を見つめた芸術家たちの作品もご紹介します。
パリの街を彩ったグラフィック作品が集結
パリの街を一望できるモンマルトルは、19世紀から20世紀にかけて、ナポレオン3世が進めた都市整備事業(パリ大改造)により、中心部を離れざるを得なかった市民たちの移住地のひとつであり、美術や文芸、音楽、演劇などに携わる多彩なアーティストたちがジャンルを越えて交わる場所です。
ベル・エポック期には、エンターテイメントの中心地として、大小の劇場が多数登場して賑わいを見せ、新興のキャバレーやダンスホール、カフェ・コンセールが軒を連ね、歌やダンス、大道芸が供される歓楽街としても賑わい、近くにアトリエを構えた画家たちの格好の題材となりました。
シェレ、ロートレック、テオフィル=アレクサンドル・スタンランといった芸術家たちによって描かれた演目を紹介するポスターをはじめ、フォリー・ベルジェールで披露された最新の科学技術である電気照明を駆使する幻想的なロイ・フラーのダンスを描いた絵画、非日常的要素を提供するサーカスの存在も、芸術家たちを引き付け、出し物や出演者たちをモチーフにした多くの作品が残されました。
自身の才能を社会で発揮した女性たちに注目
ベル・エポック期のパリでは、フェミニズム運動も高まりを見せ、社会的自立を目指す女性が登場し、教育を受けた女性の中には、初等教育の現場で働き、医師や弁護士の資格を取得する者もいました。
本展では、放射線の研究でノーベル賞を受賞した物理学者のマリー・キュリー、画家のモデルを務めて自身も女流画家として活躍したメアリー・カサットやシュザンヌ・ヴァラドン、ミュシャのポスターでも描かれた伝説的な舞台女優サラ・ベルナールといった、さまざまな分野で頭角を現して自身の才能を社会で発揮した女性たちを紹介します。
会場では、女性の社会進出を象徴するかのようにアール・ヌーヴォー期の優雅な曲線美からアール・デコ期の活動的なスタイルへと移行した様子が伺えるファッションや装飾美術を展示しています。
最後に
会場では、パリが最も活気に満ち溢れた時代「ベル・エポック」の美術、工芸、舞台、音楽、文学、モード、科学といったさまざまなジャンルを多角的に紹介されていることで、豊かな文化の発展と技術革新の構想が伺えることでしょう。
モンマルトルで活躍した若い芸術家たちの前衛的な作品によって構成されているデイヴィッド・E.ワイズマン氏とジャクリーヌ・E.マイケル氏の豊富なコレクションから、当時のパリの側面を浮かび上がらせ、当時の空気感が味わえます。
パリ好きの方はもちろん、この時代が好きな方には、刺さる展覧会だと思いますので、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
【情報】
ベル・エポック―美しき時代 パリに集った芸術家たち ワイズマン&マイケル コレクションを中心に
会期:2024年10月5日(土)〜 12月15日(日)
会場:パナソニック汐留美術館
開館時間:午前10時~午後6時(ご入館は午後5時30分まで)
※11月1日(金)、22日(金)、29日(金)、12月6日(金)、13日(金)、14日(土)は夜間開館 午後8時まで開館(ご入館は午後7時30分まで)
休館日:水曜日(ただし12月11日は開館)
HP:https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/24/241005/#exhibition-detail-moredetail