アイティーエル株式会社では、一人でも多くの方が美術館や博物館を訪れるきっかけとなるべく、2020年7月より【ミュージアム・レポート】を開始いたしました。
困難な状況下においても美術館・博物館ではさまざまな企画や対策をおこなっていることから、全てのアートシーンに対してこれからも変わらず応援していくべく、アイティーエルも継続して情報を発信していきたいと思います。
今回は三菱一号館美術館で開催中の「異端の奇才──ビアズリー」展(2025年2月15日(土)〜5月11日(日))をご紹介します。
本展覧会について

展示風景
オーブリー・ビアズリーは、わずか25年間の短い生涯で約1000点の作品を手がけ、大胆な白と黒の色面や精緻な線描からなるその奇抜で機能的な作風は、19世紀の末の欧米社会に大きな衝撃を与えました。
本展覧会は、19世紀末の英国で活躍した画家オーブリー・ビアズリー(1872-1898)に焦点を当てた大規模回顧展で、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)の全面協力のもと、初期の作品から晩年にかけての代表作約220点を展示します。
会場では、出世作のマロリー著『アーサー王の死』(1893-94)をはじめ、日本でもよく知られるワイルド著『サロメ』(1894)、後期の傑作ゴーティエ著『モーパン嬢』(1898)の挿絵や希少な直筆の素描に加え、彩色されたポスターや同時代の装飾など、約220点を通じてビアズリーの芸術を展覧します。
展示構成と見どころ

展示風景
展示は、幼少期から最晩年の早逝するまでを全6章で、ビアズリーの画業を時系列に沿って紹介しており、初期の精緻なペン画から晩年の大胆で退廃的な表現に至るまで、その変遷をたどることができます。
彗星の如くあらわれ時代の寵児となるも、予期せぬ出来事から早すぎる転落へ。再起をはかり円熟期へ向かいますが、道半ばで奇しくも病に倒れてしまうといった、激動の人生をご覧になることができます。
初期作品と影響を受けた芸術

展示風景
展示の前半では、ビアズリーが影響を受けたラファエル前派との関係が強調されています。 特に、彼が敬愛したエドワード・バーン=ジョーンズの作品との比較など、ビアズリー独自のスタイルがどのように形成されたのかがわかることでしょう。
一躍注目を集めた出世作『アーサー王の死』

オーブリー・ビアズリー《アーサー王は、唸る怪獣に出会う》1893年、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館 Photo: Victoria and Albert Museum, London
本展のハイライトのひとつが、トマス・マロリーの『アーサー王の死』の挿絵群です。
この作品はビアズリーがわずか21歳の時に描かれたもので、黒と白の強いコントラスト、装飾性の高い線描、幻想的な人物表現が特徴です。ゴシックの要素を融合させたような独特のスタイルが確立され、これが彼の名を世に知らしめるきっかけとなりました。 展示室では、完成された挿絵だけでなく、ビアズリー自身の手による希少な直筆な素描なども公開されており、彼の制作過程を垣間見ることができます。
スキャンダラスな美の極致戯曲『サロメ』

展示風景 オスカー・ワイルド著書《サロメ》の挿絵より
オスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』のために制作された挿絵は、ビアズリーの名声と悪評を決定づけた作品です。 展示室に入って、まず目に飛び込んでくるのは、黒一色で描かれた異様に引き伸ばされたサロメの姿や、妖艶に絡み合う線の麗さ。 ワイルドの妖艶な文学とビアズリーの装飾的な美学が融合し、時にはグロテスクでありながら、驚くほど完成された世界観が表現されています。
また、ビアズリーがワイルドとの関係から大胆な表現に踏み込んでいたということも、本展では詳しく解説されているのでキャプションを読み込んでいただくことをおすすめします。

展示風景
さらに、『サロメ』の挿絵に描かれたアングロ=ジャパニーズ様式の調度や家具なども展示されたりと、当時の文化を知ることができる空間も凝っています。
晩年の作品と「退廃」の美学

展示風景
終盤では、ビアズリーが結核を悪化させながらも描き続けた晩年の作品群が展示されています。この時期の作品は、黒いカーテンの向こうに隠されたビアズリーの刺激的で退廃的な作品や、構図や新しい表現に挑戦した作品などが垣間見ることができます。
また、会場内にはビアズリーがロウソクの明かりを頼りに描いていた当時の雰囲気を体験できる空間が設けられており、まるで19世紀末の彼の仕事場に迷い込んだかのような感覚を味わえることでしょう。
最後に美術館ならではの特別な体験

展示風景
三菱一号館美術館では、本展に合わせたユニークな企画も実施されています。
館内の「café 1894」では、ビアズリーの象徴的なモノクロ表現を意識した特別メニューが提供されており、視覚だけでなく味覚でも彼の世界観を楽しめます。 また、「#英国チェックコーデ割」として、チェック柄のアイテムを身に着けて入場すると観覧料金が100円割引になるという遊び心のあるサービスも。
精緻な線描や大胆な白と黒の色面からなる洗練された、ビアズリーの独特な世界に浸ることができる貴重な機会の本展覧会に足を運んでみてはいかがでしょうか?
【情報】
異端の奇才——ビアズリー
会期:2025年2月15日(土)~5月11日(日)
会場:三菱一号館美術館
休館日:月曜日 (但し、3/31・4/28、5/5 は開館)
開館時間:10:00-18:00 祝日を除く金曜日と会期最終週平日、第2水曜日、4月5日は20時まで
※入館は閉館の30分前まで
観覧料:一般 2,300円 大学生1,300円、高校生 1,000円
主催:三菱一号館美術館、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、朝日新聞社
HP:https://mimt.jp/ex/beardsley/