
アイティーエル株式会社では、一人でも多くの方が美術館や博物館を訪れるきっかけとなるべく、2020年7月より【ミュージアム・レポート】を開始いたしました。
困難な状況下においても美術館・博物館ではさまざまな企画や対策をおこなっていることから、全てのアートシーンに対してこれからも変わらず応援していくべく、アイティーエルも継続して情報を発信していきたいと思います。
今回は世田谷美術館にて開催中の横尾忠則の最新個展であり、彼の創作活動の新たな展開を示す展覧会「横尾忠則 連画の河」(会期:2025年4月26日(土)~6月22日(日))をご紹介します。
横尾忠則ってどんな人?

横尾忠則(よこお ただのり、1936年6月27日生まれ)は、日本を代表する美術家、グラフィックデザイナー、版画家、作家であり、前衛芸術の先駆者として国内外で高く評価されています。
兵庫県西脇市に生まれ、1960年に日本デザインセンターに入社、グラフィックデザインを手掛けるようになりました。1960年代から1970年代にかけて、ポップアートやサイケデリックアートの影響を受けた独自のスタイルを確立し、広告、映画、音楽など多岐にわたるメディアで活躍しました。
本展覧会について

「横尾忠則 連画の河」は横尾忠則の最新個展です。会場では、横尾が2023年春から取り組み始めた「連画(れんが)」シリーズを中心に、新作油彩画約60点と関連作品が展示されています。
横尾忠則は、他者の言葉を引き取りつつ歌を詠み、それをまた別の他者に託すという和歌の「連歌」に倣い、昨日の自作を他人の絵のように眺め、そこから今日の筆が導かれるままに描きながら、明日の自分=新たな他者に託して描くという「連画」を制作しています。
このプロセスを通じて、横尾は自らの創作の流れを楽しみ、思いもよらぬ世界を展開しています。悠々と流れる大河=連画のゆくえを、ほぼ制作されたとおりの順で追いかけ、見守る楽しみを味わえます。
起点は同級生たちとの記念写真
展覧会の起点となったのは、1970年に故郷の西脇(兵庫県)で同級生たちと撮った記念写真であり、これを起点に横尾の筆は日々運ばれています。水は横尾の作品の重要なモチーフの一つであり、「連画の河」として、さまざまなイメージが現れては消え、誰も見たことがないのになぜか懐かしくもある光景が広がっています。
見どころ

横尾忠則の作品は、視覚的なインパクトだけでなく、深い哲学的な意味を持っています。彼の作品には、死、生、夢、幻想、宗教、神話などのテーマが織り交ぜられ、観る者に強い印象を与えます。また、彼は日本の伝統文化と西洋のモダンアートを融合させることで、独自の世界観を築き上げています。
横尾は88歳になり、視力、聴力、腕力に脚力と、身体のさまざまな能力が衰えるなかでも淡々との反復を続けています。その日その時の肉体からしか生まれてこない色、筆触、かたちが、150号(約182×227㎝)を中心とする大きな画面に躍り、流れ、変化してゆきます。王道をゆく「絵画」ならではの快感を、全身で味わえることでしょう。
最後に

会場では、150号を中心とする大きな画面に躍動する色彩や筆触、変遷するかたちなど、横尾忠則の現在の創作世界を体感することができます。横尾の肉体を通じて作品が観客に新たな鑑賞体験を提供しています。
本展覧会は、横尾忠則の創作の流れを追い、彼の芸術の現在を感じる貴重な機会となっています。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
【情報】
横尾忠則 連画の河
会期:2025年4月26日(土)~6月22日(日)
会場:世田谷美術館(東京都世田谷区砧公園1-2)
開館時間:午前10時~午後6時(入場は午後5時30分まで)
休館日:月曜日(5月7日(水)は休館)
ホームページ:https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/special/detail.php?id=sp00223