【そごう美術館】「Perfume COSTUME MUSEUM FINAL EDITION」

会場風景

アイティーエル株式会社では、一人でも多くの方が美術館や博物館を訪れるきっかけとなるべく、2020年7月より【ミュージアム・レポート】を開始いたしました。
今回は、衣装を通して巡るPerfumeの20年の軌跡をめぐる、そごう美術館にて開催中の「Perfume COSTUME MUSEUM FINAL EDITION」展をご紹介します。
(※本展は『Perfume COSTUME BOOK 2005-2020』(文化出版局、2020年)を起点に、メジャーデビュー以降の選りすぐりの衣装を紹介する大規模衣装展として、2023年から全国を巡回してきました。)

本展覧会について

会場風景

2005年のメジャーデビュー以来、国内外で第一線を走り続けてきたテクノポップユニット Perfume 。ときに数万人の観衆の前に立つ、あ~ちゃん、かしゆか、のっちの3人に寄り添い、たくさんの挑戦や喜びをともにしてきたのが、美しくも可愛いがつまった独創的な衣装の数々と言えるでしょう。
これまでミュージックビデオ用の衣装とライブ/ツアー衣装が別の切り口で展示されてきたのを、本展覧会のグランドフィナーレをかざる横浜会場では、特別な演出として「FINAL EDITION」仕様で展示を構成。
これまで別々に展示していたミュージックビデオとツアーの衣装を、年代順に並べて同じ空間で展示することで、Perfumeの20年にわたる進化と変遷、各時期のデザインの特徴や表現の広がりを、衣装という視覚メディアを通してより鮮明にご覧いただけます。

展示構成|初期 ー“はじまりのゾーン”ー

『Perfume COSTUME BOOK 2005-2020』より「Dream Fighter」2008年 © 文化出版局

初期は比較的シンプルなラインの服が特徴です。その“服らしさ”には、3人それぞれの個性(あ〜ちゃん=膝丈スカート、かしゆか=ミニスカート、のっち=パンツなど)が反映されており、グループのバランスと個性の関係性が明確です。こうしたスタイルの基礎が、後の大胆な実験衣装の土台になっています。
このゾーンでは、当時のライブ映像やミュージックビデオが小規模なディスプレイで設置されており、衣装が動き、踊り、揺れる様子を、静的な展示だけでなく“映像越しに”体感できるように工夫されています。服というものが「衣装」「ステージ衣装」という機能を越えて、“動く彫刻”であることを認識させられます。

展示構成|中期 ー未来感とテクノロジーの融合ー

『Perfume COSTUME BOOK 2005-2020』より「SXSW/「COSMIC EXPLORER」2015/2016」2015年/2016年 © 文化出版局


2008年の武道館初公演や2010年東京ドーム初公演あたりを境に、Perfumeの衣装およびステージ演出は、大きな転換点を迎えます。
ミュージックビデオ用の衣装には、映像のフレームに映えるようなカッティングや素材使いが見られ、光沢のある布地、未来的なライン、そしてミニマルでありながらインパクトのあるシルエットが特徴です。一方、ライブ衣装にはステージ上での動きと照明効果を見越した構造、身体のラインと動きを妨げない設計、視認性と統一感を意識した3人の統合感など、「衣装としての設計思想」の明確さが感じられました。
そこでは、メタリックな質感やモノカラーを基調としつつ、LEDや照明と連動するような衣装の構造が垣間見えました。光と影、色の変化、ステージ全体との調和。その頃から、Perfumeはただ「音楽+踊り」を演じるだけではなく、「テクノロジーと身体表現の融合」を強く意識し始めたと感じられるでしょう。

展示構成|近年と現在 ー技術・身体・表現のさらなる高みー

会場風景:大阪・関西万博のNTTパビリオンで披露されたという最新衣装

時代が進むにつれ、Perfumeの衣装はさらに大胆かつ実験的な方向へ移行していきます。
「布」の衣装が、テクスチャ、構造、素材、そして機能含め、まるで別物に進化しています。
本展では2025年の大阪・関西万博のNTTパビリオンで披露されたという最新衣装も展示され、「Perfumeの現在地」が示されている。これは単なるノスタルジーではなく、「継続」「進化」「未来への挑戦」という、Perfumeのクリエイションの現在進行形を体感させる意味で、非常に重みがありました。

最後に ー身体表現とデザインのアーカイブー

会場風景

「Perfume COSTUME MUSEUM FINAL EDITION」は、単なる “懐かしさ” を提供する展覧会ではなく、衣装という媒体を通じて、過去、現在、そして未来──時間と記憶と可能性を同時に提示します。
2000年代前半のシンプルな衣装から、近年の光・映像と連動する衣装まで、その変遷はまさに「布 → インタラクティブな演出装置」へ進化。特に polygon-wave 以降の衣装に見られる、動きに応じて色や光が変化する構造や素材は、身体表現にテクノロジーを取り込む試みとして極めて先鋭的でした。
この展示を通して「服とは何か」「衣装とは何か」「身体とは何か」を改めて考える機会を得るとともに、デザイン/ファッション/パフォーマンスの交差点―そこにこそ新たな可能性があると感じました。
あなた自身で「Perfumeの20年」を体感するとともに、単なる“ファンの思い出巡り”を超えて、「衣装とは何か」「表現とは何か」を問い直すきっかけにしてみてはいかがでしょうか?

【情報】

Perfume COSTUME MUSEUM FINAL EDITION
(読み:パフューム コスチュームミュージアム ファイナルエディション)
会期:2025年11月15日(土)〜2026年1月12日(月・祝)
会場:そごう美術館
時間:10:00〜20:00(最終入館時間 19:30)
   *11月28日(金)、11月29日(土)、12月5日(金)、12月6日(土)は午後5時に閉館いたします。(入館は閉館の30分前まで)
   *12月31日(水)は時短営業、1月1日(木・祝)は休業いたします。
   (そごう横浜店の営業時間に準じ、変更になる場合がございます)
休館:不定休
ホームページ:https://sogo-museum.jp/exhibitions/details.jsp?id=983