【原美術館ARC】「虹をかける:原美術館/原六郎コレクション」展

原美術館とハラ ミュージアム アークの個性を原美術館ARCへと繋ぐ

ジャン=ミシェル オトニエル「Kokoro」2009年

まだまだ新型コロナウイルス感染症により、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、気軽に訪れられない日々が続いています。

しかし、そんな状況下に負けじとオンラインチケットで蜜を防ぎ、検温や消毒など徹底した感染症対策を行いながら、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべく、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。

そのような経緯から群馬・原美術館ARCにて開催している『虹をかける:原美術館/原六郎コレクション』をご紹介します。

ギャラリーA 展示風景


今年4月にリニューアルオープンした原美術館ARCは、1938年に邸宅として建てられた洋館を再生利用し、2021年1月に東京での活動を終えた原美術館と、1988年に群馬県渋川市に別館として開館したハラ ミュージアム アークを
統合した美術館です。

統合後初の展覧会「虹をかける:原美術館/原六郎コレクション」展の“虹をかける”とは、財団の名称「アルカンシエール(Arc-en Ciel)」の和訳と、人と人が美術を通じて対等に交流するための架け橋でありたいという財団の理念、さに原美術館とハラ ミュージアム アークの個性を原美術館ARCへと繋ぐ表象からつけられたそうです。

また、光が屈折することで複数の色彩が可視化される虹という現象は、視点や角度を変えることによって見えないものが見えてくる、美術のあり方に通じるようにも思えますね。

本展では「原六郎コレクション」と「原美術館コレクション」から、性別も国籍も文化も異なるアーティストたちの様々な表現を展観します。

ギャラリーB 展示風景


磯崎新の設計による黒を基調とした木造建築の原美術館ARCは、伊香保グリーン牧場に隣接する緑豊かな広い敷地に作られました。

ピラミッド型の屋根をもつ正方形のギャラリーAと、両翼に細長くのびる長方形のギャラリーB・Cでは、やわらかい自然光が降り注ぐシンプルな空間の中、数々の現代美術作品が展示されています。

展示室には、「原美術館コレクション」から、作品を買い上げた時の面白いエピソードがあるもの派で有名な李禹煥(リ ウファン)や、西洋美術史に影響を与えたロバート・ラウシェンバーグの絵画作品。

その他、カラフルな椅子が組み合わさったなかにも煌めく鞄がかけられているジム・ランビーの作品「トレイン イン ヴェイン」や、作家自身が「代表作だ!」と語る水玉模様が所狭しと部屋中を覆う草間彌生の《ミラールーム(かぼちゃ)などのインスタレーション作品ご覧になれます。

ギャラリーC 展示風景


また、原美術館から移設された、奈良美智、宮島達男、森村泰昌の人気常設作品が、リニューアルされて原美術館ARCの顔としてお披露目されます。

その中でも筆者が印象的だったのは、バリアフリートイレの扉をスライドすると表れる、ピンク色のライティングに照らされた森村泰昌の作品《輪舞(双子)》

原美術館の展示時には便器とひとつになったフィギュアが一体だったのに対し、原美術館ARCでは間に便器を挟んでフィギュアが二体向かい合い、壁面がガラスと鏡になっていることで、その光景が彼方まで続いていく不思議な空間が広がっていました。

森村泰昌「輪舞(双子)」1994/2021年 ©Yasumasa Morimura 撮影:木暮伸也


その一方、特別展示室「觀海庵」では、静謐な和風の空間
日本美術とともに、現代美術作品とのコラボレーションがご覧になれます。

京都・伏見から大阪・天満橋辺りにいたる淀川の流れが描かれている円山応挙の絵巻の向かい側には、穏やかな水平線を切り取った杉本博司の写真作品が展示されていたり、長寿の象徴として親しまれている鶴と松を画題にしている森徹山の《百鶴図屏風》の手前には、ごみをアクリルケースに入れたアルマンの《なまゴミ》がご覧になれたりと、展示方法にも工夫が感じられ、鑑賞者を楽しませてくれるでしょう。

「觀海庵」展示風景


中庭には木の年輪が模様として描かれ、実際に作品に座ることができる、鈴木康広の《日本列島のベンチ》。


屋外にはアンディウォーホルの《キャンベルズ トマト スープ》や広い空の下でおいしいコーヒーが飲めるカフェなどがあります。今後、原美術館に展示されていた様々な屋外作品も移設され、原美術館ARCに徐々に作品が増えていくそうなので、訪れるきっかけや楽しみが増えますね。

鈴木康広《日本列島のベンチ》と鈴木康広さんご本人


これからこの場所で数多くの鑑賞者が集い、多種多様な作品を通して様々な価値観を共有し、新たな交流が生まれることはもちろん、次世代を超えて紡がれていくことで、財団の理念である“虹をかける”がさらに大きな意味へと繋がっていくと思いました。

ぜひハラミュージアムアークと原美術館が掛け合わさって、リニューアルオープンした原美術館ARCに足を運んでみてはいかがでしょうか?

カフェ ダール外観

取材・執筆・撮影:新麻記子

【情報】
虹をかける:原美術館/原六郎コレクション
会期:第1期(春夏季):2021年4月24日(土)―9月5日(日)
第2期(秋冬季):2021年9月11日(土)―2022年1月10日(月・祝)
会場:原美術館ARC(群馬県渋川金井2855-1)
開館時間:9:30-16:30(入館は16:00まで)
休館日:木曜日(祝日・8月を除く)、9月6日(月)ー9月10日(金)、1月1日(土)
アクセス:JR渋川駅よりバス15分「グリーン牧場前」下車徒歩5
URL:https://www.haramuseum.or.jp/jp/arc/