
アイティーエル株式会社では、一人でも多くの方が美術館や博物館を訪れるきっかけとなるべく、2020年7 月より【ミュージアム・レポート】を開始いたしました。
今回は、21_21 DESIGN SIGHTにて開催中のデザインを通して多様な視座を示してくれた巨匠たちの活動を振り返る企画展「デザインの先生」をご紹介します。
本展覧会について

考え、つくり、伝えつづけるデザインの行為は、生きることと切り離せません。企画展「デザインの先生」は、これまでとは異なる角度でデザインを再照明し、先人たちの思想や哲学を通して、デザインの根源に触れようとする展覧会です。
代表作をはじめ、残されたことば、記録映像などを通して各氏の人間性に迫り、それぞれのデザイン活動に目を向けると、私たち一人ひとりが考え、主体的に行動し、進んでいくことをまさに期待していたのだということも知ることでしょう。
デザインの先生たち

今回フォーカスするのは次の6名、本展では彼らを「デザインの先生」として紹介します。
- ブルーノ・ムナーリ(イタリア生まれ、1907–1998年)
- マックス・ビル(スイス生まれ、1908–1994年)
- アキッレ・カスティリオーニ(イタリア生まれ、1918–2002年)
- オトル・アイヒャー(ドイツ生まれ、1922–1991年)
- エンツォ・マーリ(イタリア生まれ、1932–2020年)
- ディーター・ラムス(ドイツ生まれ、1932年–)
- デザイン教育の現場で未来を担う人材を育んだ人物も含まれますが、それだけでなく信念と希望を胸に活動することで各時代の先を探り、社会の新たな局面をもたらした人物であるという点で共通しています。
- 会場では、また、マックス・ビルやオトル・アイヒャーに学び、後に生涯にわたって親交を深め、日本におけるデザイン学の礎を築いた向井周太郎(1932–2024年)の視点にも触れていきます。
デザインは才能ではない!多層的な関係の中で育つ!

建築、素材研究、グラフィック、ファッション、プロダクトデザイン、あらゆる領域において、名だたるデザイナーが自らの言葉で語り、その代表作や活動の軌跡を提示。
デザインとは、個々の才能の話ではなく、「誰かの影響」「環境の連鎖」「言語化できない習慣」「偶然の出会い」という、多層的な関係の中で育つものだということに気づかされることでしょう。
デザイナーの息遣いや手のリズムまで感じ取れるような展示から、デザイナーの背景にある思考・態度・姿勢が世代を超えて形を変えていき、もっと日常的で、もっと人間的で、“影響の形”として受け継がれ、来場者はその連鎖の“途中”も追体験することができます。
不思議と“学んでいる感覚”が湧き上がる

本展覧会は、“わかりやすい物語”に頼らず、教科書的な歴史をたどる展示でもありません。それでも会場を歩いていると不思議と“学んでいる感覚”が湧き上がってきます。
学校の教室のような机や椅子、黒板や記号をあえて排し、スケッチや言葉、プロセスの痕跡を“素材”として扱うことで、デザイナーの思考を自分の身体感覚の中に落とし込める構造になっています。
- ・イントロダクション:先生とは誰か?
デザインの学びを支えた人物・環境を広義にとらえる入口。 - ・デザイナー自身が語る映像と言葉
肉声、インタビュー、言葉の断片、写真、資料などによる個々のストーリー。 - ・先生の教えを可視化する作品展示、活動の紹介
数々の代表作や人間性に触れることで、先生たちの教えに触れる。 - ・学びを受け継ぐ場としてのデザイン教育
デザインの先生たちが関わった大学での試みを紹介。
・来場者のための“ひらく学び”- 書籍コーナー、観察・思考のための仕掛け。
最後に

6名のデザインの先生たちの「活動の痕跡」「言葉」「作品」というミニマルな要素で豊かな思考を深められる本展覧会は、デザインを仕事にしている人にも、そうでない人にも、刺さる内容だと思います。
社会のこの先に向けて、デザインの視点に基づき「問い」そのものを投げかけることが、これまで以上に期待されているいま、デザインが担う役割もより広く、より深くなっています。
忘れてはならない先人たちの活動の軌跡を振り返ったうえで、社会に対してどのようなメッセージを投げかけていけるのか、そのことの重要性についても多くの皆さんと考えてみましょう。
【情報】
企画展「デザインの先生」
会期:2025年11月21日(金)- 2026年3月8日(日)
会場:21_21 DESIGN SIGHT
閉館:火曜日、年末年始(12月27日 – 1月3日)
時間:10:00 – 19:00(入場は18:30まで)
ホームページ:https://www.2121designsight.jp/program/design_maestros/