【郡山市立美術館】巨匠ハインツ・ヴェルナーの描いた物語(メルヘン) 現代マイセンの磁器芸術

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アイティーエル株式会社では、一人でも多くの方が美術館や博物館を訪れるきっかけとなるべく、2020年7月より【ミュージアム・レポート】を開始いたしました。
今回は、郡山市立美術館にて開催中の『巨匠ハインツ・ヴェルナーの描いた物語(メルヘン) 現代マイセンの磁器芸術』展をご紹介します。

本展覧会について

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300余年前、ヨーロッパで初めて硬質磁器を生みだしたドイツの名窯であるマイセン。
その白磁は、18世紀の誕生以来、王侯貴族の権威や富、洗練された美意識を体現する存在であり続けてきました。その一方で、マイセン磁器は単なる装飾品や実用品にとどまらず、絵画や彫刻と同様に「物語」を宿す芸術表現の場でもありました。
本展覧会「巨匠ハインツ・ヴェルナーの描いた物語(メルヘン)―現代マイセンの磁器芸術―」は、そのマイセンの伝統を重んじながらも、現代性を取り入れ、新たな表現を模索した絵付師、ハインツ・ヴェルナー氏の仕事を通して、磁器芸術の奥行きと可能性を改めて提示するものです。
ヴェルナー氏は、マイセンの中でもとりわけ「物語性」に富んだ絵付で知られる作家です。
ドイツの物語をはじめとするヨーロッパのメルヘンや寓話の世界を、磁器という制約の多い素材の上に、軽やかさと緊張感をもって描き出しました。その作品群は、観る者を一瞬で日常から切り離し、幻想と記憶のあわいへと誘います。

マイセン磁器と絵師の伝統

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マイセン磁器は1709年、ヨーロッパで初めて硬質磁器の製法に成功したことから始まります。以来、マイセンは、造形、白磁の質、そして絵付において独自の完成度を築いてきました。
なかでも絵付は、熟練した職人が一筆一筆手作業で施す極めて高度な工程であり、画家としての力量と磁器素材への深い理解が不可欠とされています。
18世紀には神話や宮廷文化、19世紀には風俗画や歴史画が多く描かれ、時代ごとに主題や表現は変化してきました。しかし20世紀後半以降、マイセンは伝統の再現にとどまらず、現代的感性をもった作家による自由な表現を積極的に取り入れるようになりました。
その象徴的存在が、ハインツ・ヴェルナー氏です。

ハインツ・ヴェルナー氏という絵付師について

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ハインツ・ヴェルナーは、マイセン磁器製作所において長年にわたり第一線で活躍してきた絵付師です。
ヴェルナー氏はマイセン近郊のコズヴィッヒに生まれ、マイセンの養成学校を経て、1948年に20歳でマイセン磁器製作所に入り、生涯にわたってマイセンの仕事をつづけました。
彼の描きだす装飾は、線のしなやかさ、鮮やかで美しい色彩、構図のバランス、マイセンの伝統を継承しつつ、アトリエの周りの美しい自然はもちろん、物語(メルヘン)を着想源にして常に新しく展開していきました。
磁器という小さな画面の中に、複数の登場人物や物語を巧みに配置し、素敵なワンシーンを切り取り、心ときめく世界を作り上げていると感じられることでしょう。

磁器の上に描かれるメルヘンの世界

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本展覧会で中心的に紹介されるメルヘンなシリーズの『ほら吹き男爵の冒険』や『アランビアンナイト』などをご覧ください。
ハインツ・ヴェルナーの描くメルヘンは、平面表現とは異なり磁器という立体的な器形に応じて、物語は周囲を巡りながら、時に重なり合って展開していきます。

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例えばプレート作品では、中央に象徴的な人物像を配し、縁へと視線を導くように背景や脇役が配置されています。カップや花瓶では、持ち手や曲面が構図の一部として取り込まれており、器全体がひとつの物語の空間となっています。
色彩は淡く、しかし決して弱々しくない。マイセン特有の白磁の輝きを活かしながら、赤や青、金彩が要所で効果的に用いられています。

最後に

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本展覧会は、ヴェルナー氏個人の技巧の高さだけではなく、彼の仕事を通して浮かび上がる現代におけるマイセンの姿勢を感じていただける内容になっています。
300年以上の歴史を誇るブランドでありながら、過去の様式に安住せず、物語性や詩情といった人間的価値を軸に、現代的表現を模索し続けている点にも注目してみてください。
大量生産やデジタル技術が主流となった現代社会においてヴェルナーによる装飾のマイセン磁器は時間と手間を惜しまない手仕事の価値を主張しながら、想像力を取り戻すための現代的な提案をしているといえるでしょう。

情報

巨匠ハインツ・ヴェルナーの描いた物語(メルヘン) 現代マイセンの磁器芸術
会期:2025年11月22日(土)~2026年1月18日(日)
会場:郡山市立美術館 1階企画展示室
時間:9時30分~17時00分(展示室への入場は16 時30 分まで)
休館:毎週月曜日(1月12日は開館、翌日休館)
年末年始(12月28日(日曜日)~1月5日(月曜日))
ホームページ:https://www.city.koriyama.lg.jp/site/artmuseum/163773.html
【巡回展】(予定)
・愛知県陶磁美術館 会期:
・細見美術館 会期: