展示作品69点のうち59点が初来日!印象派の光と表現の展開を辿る展覧会
まだまだ新型コロナウイルス感染症により、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、気軽に訪れられない 日々が続いています。
しかし、そんな状況下に負けじとオンラインチケットで密を防ぎ、検温や消毒など徹底した感染症対策を行いながら、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべ く、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。
そのような経緯から、三菱一号館美術館にて開催中の「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜 ― モネ、ルノ ワール、ゴッホ、ゴーガン」展をご紹介します。
約50万点もの文化財を所蔵し、珠玉の印象派コレクションがある、エルサレムのイスラエル博物館。
印象派に先駆けたクールベ、コロー、ブーダン、そしてモネ、ルノワール、シスレー、ピサロ、この流れを発展させたポスト印象派のセザンヌ、ファン・ゴッホ、ゴーガン、さらに印象派の光と色彩の表現を独特の親密な世界に移し変えた、ナビ派のボナールやヴュイヤールまで。
本展では、同館所蔵が誇る印象派コレクションより69点を厳選し、うち59点が初来日を果たしました。
会場では、一章『水の風景と反映』、二章『自然と人のいる風景』、三章『都市の情景』、四章『人物と静物』とめぐりながら、バルビゾン派からナビ派まで外光から内なる光へと向かった画家たちの「光の系譜」をたどることができます。
今回、モネ愛好家の羨望の的であった、初来日を果たした連作の《睡蓮の池》は、「当たり年」と評される1907年のもの。
1907年、個展に向けて睡蓮の連作を手がけていたモネは、満足のいく仕上がりを目指し、何度も個展の開催を延期。1909年、自信作である48点を発表し、本作品はその出品作のうちの1点です。
今回の貴重な機会に合わせて、DIC川村記念美術館と和泉市久保惣記念美術館から取り寄せた、イスラエル博物館の同じ縦長の構図で描かれた《睡蓮の池》も別フロアにて展示しています。
睡蓮が浮かぶ穏やかな水面には、雲や空、木々が映り込み、池の外の情景を示唆しています。ぜひ光と影がドラマチックに移り変わる風景の輝きに注目して鑑賞してみてください。
また、現在東京都美術館で開催しているゴッホ展が記憶に新しいかと思いますが、本展覧会でもファン・ゴッホがパリやアルルで描いた《アニエールのボワイエ・ダルジャンソン公園の入口》《プロヴァンスの収穫期》《麦畑とポピー》をご覧になることができます。
ぜひ、新印象派の影響をうけた点描タッチで描かれた華やかなパリの様子を捉えた作品と、自身の表現へと昇華した光溢れるアルルの自然を捉えた作品を堪能してみてください。
また、青色と黄色の補色関係が印象的で、ゴッホの《ローヌ川の星月夜》を彷彿とさせ、印象派にも影響を受けたドイツの画家、レッサー・ユリィ《夜のポツダム広場》に注目する方もいらっしゃるはず。
傘をさし交差点を足早に渡る通行人の視点で描かれたこの作品は、濡れたアスファルトが反射し、怪しくネオンが光る情景から、鑑賞者は魅了されることでしょう。
この作品は、ミュージアムショップでもTシャツになったりと、グッズ展開されていますので、チェックしてみてください。
水の反射と光の動きから移ろいゆく自然の様子を捉えていた風景は、近代化していく新しい都市へと変わり、やがてそこに介在する人物や日々の暮らしを描くようになりました。
こうして光の系譜をたどっていくと、それぞれの画家たちが何を求めて、何を描こうとしていたのか、表現の展開に気づくことができるでしょう。
それぞれの画家の全盛期に制作された作品を含めた出品作のほとんどが、日本初公開となる大変貴重な機会ですので足を運んでみてください。
取材・撮影・文:新麻記子
【情報】
「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜 ― モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン」展
会期:2021年10月15日(金)〜2022年1月16日(日)
会場:三菱一号館美術館
時間:10時~18時
祝日を除く金曜と会期最終週平日、第2水曜日は21:00まで
休館:月曜日(11月29日、12月27日、1月3日・1月10日は開館)、12月31日、2022年1月1日
※いずれも最終入館は閉館30分前まで
公式サイト:https://mimt.jp/israel/