【群馬県立館林美術館】開館20周年記念 フランソワ・ポンポン展 動物を愛した彫刻家

愛らしい動物彫刻を生み出し、これまでの歴史を変えた、革新者のフランソワ・ポンポン

新型コロナウイルス感染症の状況が落ち着きつつあり、なかなか気軽にとまではいきませんが、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、訪れられることでができるようになりました。

現在、新しい生活様式のもとオンラインチケットで密を防ぎ、検温や消毒など徹底した感染症対策を行いながら、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべ く、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。

そのような経緯から、群馬県立館林美術館にて開催している『開館20周年記念 フランソワ・ポンポン展 動物を愛した彫刻家』をご紹介します。

平成13年10月26日、群馬県立近代美術館に次ぐ2館目の県立美術館として開館した群馬県立館林美術館。

近現代美術における豊かな創造の歩みを理解するための作品を収集することをもとに、「自然と人間」をテーマとして、調和、共生、対峙などの様々な関わりを表現した作品を収集しています。

当館では、国内で唯一のまとまったポンポンの作品や資料をコレクションし、長年にわたって調査研究をつづけてきました。

そんな群馬県立館林美術館で開催中の本展覧会では、当館が所蔵するポンポン作品はもちろん、フランスの美術館からの借用作品を加えて、初期から晩年までの代表作を紹介、さらに写真、絵はがき、道具などの豊富な資料を通して、ポンポンの美しい動物彫刻の誕生の背景と魅力に迫ります。

《フランソワ・ポンポンと鳩ニコラ》 撮影年不詳 群馬県立館林美術館

フランソワ・ポンポン《コゼット》1888年 群馬県立館林美術館

フランソワ・ポンポンは20世紀前半のフランスにおいて革新的な動物彫刻を生み出した彫刻家です。

近代彫刻の父と言われるオーギュスト・ロダンの下彫り職人をしていた彼は、ボリュームと動きの表現を学びました。その後、動物観察から身体や動作などの特徴を掴み、古代エジプト美術や日本美術にならい、形態の単純化を試みるようになっていきます。

そして、細部を削ぎ落として滑らかで洗練されたフォルムの作品を生み出し、それまで細かく毛並みを再現するような写実的表現が主流であった動物彫刻において、ルネサンス以来格が低いとされてきた動物彫刻の歴史に大きな革新をもたらしました。

フランソワ・ポンポン《シロクマ》1923-1933年、群馬県立館林美術館

しかし、ポンポンが彫刻家として認められたのは、晩年の1922年、67歳の時です。

サロン・ドートンヌにて長さ2.5mの大きな石膏の《シロクマ》を出品し、しなやかで力強い生命感と堂々とした安定感から、この作品で初めて高く評価され一躍有名になりました。

彼の作品の特徴は、鳩、猫、犬など身近な動物、豚、牛など農場でみる家畜、キリン、ヒグマ、シロクマなど動物園で見ることのできる異国の動物までを題材にし、生命感のあるフォルムと美しいシルエットを与えていることです。

そして、幸福さをたたえたポンポンの彫刻は生きる喜びを体現し、鑑賞者に幸せな気持ちと微笑みをもたらします。

フランソワ・ポンポン《斑点のある豹》(1921-1922年)、《黒豹》(1925年)、《黒豹》(1922-1924年)群馬県立館林美術館

フランソワ・ポンポン《猪》群馬県立館林美術館、《子豚》ディジョン美術館(パリ、国立自然史博物館より寄託)

会場ではこれまで全国を巡ってきた作品とともに、群馬県立館林美術館のポンポン関連資料から約90点余りを合わせて展示。

さらに、当館敷地内にある彼のアトリエを再構成した別館「彫刻家のアトリエ」や、彫刻作品の制作過程を追うコーナーもあるので、より深くポンポンのことがお楽しみいただけると思います。

私たちのよく知る動物たちが愛らしさを残した作品となり、見る人を幸せな気持ちにさせてくれる本展覧会に、ぜひ足を運んでみてください。

別館「彫刻家のアトリエ」

取材・撮影・文:新 麻記子

【情報】
企画展示 開館20周年記念 フランソワ・ポンポン展
会期:2021年11月23日(火・祝)~2022年1月26日(水)
会場:群馬県立館林美術館
開館時間: 午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:毎週月曜日(祝日・振替休の場合はその翌日。ただし、4月29日から5月5日までの間及び8月15日を含む週は休館しません)年末年始(12月29日から翌年1月3日まで)このほか、展示替え等のため臨時に休館する場合があります。
観覧料:一般900円(720円)、大高生450円(360円)