【西美術館】19世紀・20世紀 ガラス工芸品との出会い

アール・ヌーヴォー期、アール・デコ期のガラス工芸品に触れられる

2020年、猛威を振るった新型コロナウイルス感染症により、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、なかなか訪れられない日々が続きました。

しかし、新しい生活様式のもと事前予約をはじめ、検温や消毒など徹底した感染症対策を行い、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべく、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。

そのような経緯から、北海道・小樽にある歴史的建造物を活用した西美術館をご紹介したいと思います。

北海道にある小樽は、明治から昭和初期にかけて北の貿易の要として栄え、かつて「北のウォール街」と呼ばれるほど北海道の経済の中心だったそうです。

そんな小樽は芸術と歴史が響き合い、見る者を惹きつけてやまない、東洋一を誇るステンドグラスや文化財となっている4つのアートスポットがあります。

その中のひとつである西美術館は、北海道・小樽にある小樽運河の浅草橋の袂に建ち、旧浪華倉庫をリノベーションし、小樽芸術村の新しい施設として、2022年にオープンしました。

引用:https://www.luckland.co.jp/result/others/post_380.html

倉庫を活用した大空間では、19世紀後半から20世紀初頭にヨーロッパで制作された貴重なステンドグラスをはじめ、アール・ヌーヴォーやアール・デコのガラス工芸品、家具、磁器などの西洋美術品をお楽しみいただけます。

一階入口では、アール・ヌーヴォーのさきがけとなるジャパニズムの典型的な作品「花と鳥のいる風景」をはじめ、ルネ・ラリック、エミール・ガレ、ドーム兄弟、ガブリエル・アージー・ルソー、ヴィクトール・アマルリック・ワルターによる素晴らしいガラス作品が展示されています。

さらに奥に歩みを進めると、ギリシア・ローマ時代のモザイクタイルなどの美術品他、各時代毎の流行や特徴を捉えたインテリアから当時の暮らしが感じられる空間展示、そして19世紀後半から20世紀初頭にヨーロッパで制作された貴重なステンドグラスが壁一面に展示されています。

2階の展望ラウンジではステンドクラスの技法についての説明だけでなく、高級磁器を集めたマイセンルームでは、20世紀初頭に活躍したマイセンの作家であるシューリッヒが手がけた人形や装飾品などがご覧いただけます。

数々の作品から特に筆者がおすすめしたいのは、アール・ヌーヴォーのさきがけとなるジャパニズムが感じられる、ラリック、ガレ、ドーム兄弟などのガラス芸術家たちの作品です。

日本の美術品・工芸作品が持つ色彩や構図から着想を得た作品は、色とりどりの草花が咲き乱れ、バッタやトンボが飛び交う独特の世界で、時に繊細で時に大胆に描かれ、鑑賞者の心を捉えて離しません。

また、ランプ、スタンド、花瓶(形状が違う3種)、酒器(グラスやデカンター)など、同じ作風で統一されているシリーズをまとめて鑑賞することができるだけでなく、それぞれ大きさや使用用途が異なる器でありながらも、その表現の違いに魅せられました。

今回取材させていただいた西美術館を含め、歴史的文化施設をリノベーションし、新しくアートスポットとして生まれ変わった他3つの美術館は、「小樽芸術村」と呼ばれています。

ぜひ北海道・小樽に足を運んだら、「小樽芸術村」を巡りながら、芸術と歴史に触れてみてくださいね。

取材・撮影・文:新麻記子

【情報】
西美術館
場所:〒047-0031北海道⼩樽市港町6-5
時間:[5~10月] 9:30〜17:00 [11~4月] 10:00~16:00 ※入場は閉館30分前まで
定休日:[5~10月] 無休 [11~4月] 毎週水曜(祝日の場合はその翌日)
入場料金:一般 1,500円、学生 1,100円
ホームページ:https://www.nitorihd.co.jp/otaru-art-base/stained-glass-museum/
※ 企画展などにより、臨時休館や休館日変更の場合あり。