【パナソニック汐留美術館】『 開館20周年記念展 ジョルジュ・ルオー ― かたち、色、ハーモニー ―』

ジョルジュ・ルオーの開館記念展以来となる本格的な回顧展

2020年、猛威を振るった新型コロナウイルス感染症により、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、なかなか訪れられない日々が続きました。

しかし、新しい生活様式のもと事前予約をはじめ、検温や消毒など徹底した感染症対策を行い、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべく、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。

そのような経緯から、パナソニック汐留美術館にて開催している『開館20周年記念展 ジョルジュ・ルオー ― かたち、色、ハーモニー ―』をご紹介したいと思います。

2023年4月にパナソニック汐留美術館は開館20周年を迎えました。

フランスの画家ジョルジュ・ルオーの作品約260点をコレクションし、調査・研究の成果に基づき、ルオーを端緒とした「近代美術」、ならびに社業と関わりの深い「建築・住まい」「工芸・デザイン」をテーマとした企画展を年4回ほど開催。

開催した展覧会は86回を数え、150万人以上もの鑑賞者が訪れ、コンパクトな美術館ならではの個性ある鑑賞空間を提供してくれています。

展示室の床、壁面、ミュージアムショップなど設備の改修を行った、そんな2023年4月8日(土)よりリニューアルオープンした、パナソニック汐留美術館にて開催中の『開館20周年記念展 ジョルジュ・ルオー ― かたち、色、ハーモニー ―』の詳細や見どころをお伝えします。

19世紀末から20世紀前半のフランスで活躍した、最も革新的な画家のひとりであるジョルジュ・ルオー。

晩年の輝くような色彩で描かれた油彩、デフォルメされた親しみやすい人物像は、多くの人を魅了し続けており、「画壇」や「流派」とは一線を画し、ひたすら自己の芸術を追求した孤高のアーティストでした。

本展覧会では、フランスや国内美術館より、フランスを代表する画家ジョルジュ・ルオーの本邦初公開作品を含む初期から晩年までの代表作が集結する、開館記念展以来となる本格的な回顧展です。

パリのポンピドゥー・センターが所蔵する晩年の傑作《かわいい魔術使いの女》や《ホモ・ホミニ・ルプス(人は人にとりて狼なり)》、手紙やルオーの詩などを含む約70点が会場に並びます。

ルオーが、自身の芸術を語るのに繰り返し用いたことばである「かたち、色、ハーモニー」をキーワードに、画家が影響を受けた同時代の芸術や社会の動向、二つの大戦との関係にも触れながら、ルオーの装飾的な造形の魅力に迫ります。

特に筆者が注目したのは、ルオーに「かたち、色、ハーモニー」の形成に影響を与えた、モローやセザンヌなど同時代に活躍した芸術家との関係を浮き彫りにした第1章「国立美術学校時代の作品―古典絵画の研究とサロンへの挑戦」のコーナーでした。

1890年、パリ国立高等美術学校に入学したルオーは、ギュスターヴ・モローのアトリエに入門し、古典絵画の研究に励むとともに、自由で革新的な教育を受けました。

会場では、この時期に描いたルオー最初期の貴重な習作、デッサン、サロン出品作品を紹介するほか、師モローの作品もあわせて展示し、ルオーがモローから受け継いだものを見つめます。

その後、裸婦と水浴図、サーカスと裁判官、そして人間の苦悩と希望を表すように宗教画へと主題が変化しながらも、重要なモティーフとして、構図や色彩構成を変化させ、繰り返し描かれています。

最初期から最晩年への劇的な移り変わりとともに、最後の10年間では色彩がますます輝きを増し、形体と色彩とマティエールとが美しいハーモニーを奏でる油彩画が数多く生まれます。

ぜひ本展覧会にて現実の社会や文化に向けられた画家のまなざしとともに、ルオーが追い求めた独自の芸術スタイルを間近で鑑賞してみてください。

取材・撮影・文:新麻記子

【情報】
『開館20周年記念展 ジョルジュ・ルオー ― かたち、色、ハーモニー ―』
会期:2023年4月8日(土)〜6月25日(日)
会場:パナソニック汐留美術館
時間:午前10時~午後6時(ご入館は午後5時30分まで)
   ※5月12日(金)、6月2日(金)、6月23日(金)、6月24日(土)は夜間開館 午後8時まで開館(ご入館は午後7時30分まで)
休館日:水曜日(ただし5月3日、6月21日は開館)
HP:https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/23/230408/