【東京都美術館】「永遠の都ローマ展」

展示風景

2020年、猛威を振るった新型コロナウイルス感染症により、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、なかなか訪れられない日々が続きました。

しかし、新しい生活様式のもと事前予約をはじめ、検温や消毒など徹底した感染症対策を行い、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべく、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。

そのような経緯から東京都美術館にて開催される「永遠の都ローマ展」をご紹介したいと思います。

本展覧会について

展示風景

永遠の都ローマ- 2000年を超える栄えある歴史と比類なき文化は、古代には最高神をまつる神殿がおかれ、現在はローマ市庁舎のあるカピトリーノの丘を中心に築かれました。

そんなローマの7つの丘の1つ、カピトリーノの丘に建つ、カピトリーノ美術館は、1734年に一般市民への公開が始まり、世界最古の美術館のひとつと言われています。

本展では、その所蔵品を中心に、建国から古代の栄光、教皇たちの時代から近代まで、約70点の彫刻、絵画、版画等を通じて、「永遠の都」と称されるローマの歴史と芸術を紹介します。

また、今年は日本の明治政府が派遣した「岩倉使節団」がカピトリーノ美術館を訪ねて150年の節目にあたり、この節目の年にローマの姉妹都市である東京、さらに巡回する福岡を会場として、同館のコレクションをまとめて日本で紹介する初めての機会です。

永遠の都、2000年の美をめぐる

展示風景、第4章絵画館コレクション

会場では、建国神話にはじまり、古代ローマ時代の栄光、芸術の最盛期を迎えたルネサンスからバロック、そして芸術家たちの憧れの地となった17世紀以降の時代まで、2000年の美をめぐり生み出された壮大なる歴史をたどります。

その素晴らしい多岐にわたる充実したコレクションを所蔵しているカピトリーノ美術館のはじまりは、ルネサンス時代の教皇シクストゥス4世がローマ市民に4点の古代彫刻を寄贈したことにさかのぼります。

古代遺物やヴァチカンに由来する彫刻、またローマの名家からもたらされた絵画などの作品は、古代ローマ帝国の栄光を礎に、ヨーロッパにおける政治、宗教、文化の中心地として発展したローマの歩みそのものにも重ねられます。

本展の見どころ

ローマの誕生、狼と双子の作品を探してみよう!

《カピトリーノの牝狼(複製)》20世紀(原作は前5世紀)ローマ市庁舎蔵

本展では、ローマの誕生のシンボルともいえる作品「カピトリーノの牝狼」を出発点として、古代ローマの建国を伝える伝承や神話を紐解いていきます。

ローマ建国神話は、ウェルギリウスの叙事詩 『アエネイス』 のなかで、ギリシアのトロイアを脱出し、苦難の末にイタリアに上陸した勇者アイネイアスの子孫たちの歴史として語られています。

そのエピソードの代表格といえるのが、軍神マルスと巫女レア・シルウィアの間に生まれ、テヴェレ川に捨てられた双子ロムルスとレムスが、牝狼のお乳を飲んで育てられたという物語です。

1章では、乳を飲む双子の彫像が付け加えられた《カピトリーノの牝狼(複製)》を展示し、同作の修復をめぐる研究成果を踏まえつつ、メダル、ブロンズ製の鏡、祭壇の古代彫刻などを通して、その表現の伝統を辿っていきます。

会場では、その他にも双子と狼が描かれた作品があるので探してみてくださいね。

頭部だけで1.8m!迫力の巨大展示!

展示風景:《コンスタンティヌス帝の巨像の左足(複製)》2021年(原作は312年頃)ローマ文明博物館蔵、《コンスタンティヌス帝の巨像の頭部(複製)》1930年代(原作は330-37年)ローマ文明博物館蔵など

2章では、古代ローマ帝国の栄華を象徴する《コンスタンティヌス帝の巨像》の一部を原寸大で複製した作品を展示しています。

コンスタンティヌス帝は、306年〜337年まで皇帝の位につき、帝国の改革に力を発揮した人物とされています。腐敗したローマを離れてビザンティウム(現:イスタンブール)に都を移し、コンスタンティノポリスと名付けました。

頭部だけで1.8mものスケールをもつコンスタンティヌス帝の巨像は、実際の人間の5倍ものサイズであったことが分かっており、かつてその頭部の上には王冠がつけられていたと考えられています。

迫力ある巨大彫刻を間近でご覧いただき、ローマ皇帝だからこそなしえた、そのダイナミックな古代芸術を体感してください。

初来日!門外不出の傑作《カピトリーノのヴィーナス》

《カピトリーノのヴィーナス》2世紀 カピトリーノ美術館蔵

カピトリーノ美術館以外では滅多に見る機会がない、門外不出の傑作《カピトリーノのヴィーナス》が、初来日を果たし東京会場のみで公開されるのも、本展の大きな見どころのひとつです。

古代ギリシア最大の彫刻家プラクシテレスの女神像(前4世紀)に基づく2世紀の作品で、ルーヴル美術館の《ミロのヴィーナス》などと並ぶ、古代ヴィーナス像の傑作として知られています。

最後に

展示風景

会場では、ローマの観光地としても人気の高いカピトリーノ美術館のコレクションのなかから選りすぐりの名品がご覧いただけます。

「永遠の都」と称されるローマの歴史と芸術、2000年を超える栄えある比類なき文化に、思いを馳せながら会場を巡ってみてはいかがでしょうか。

取材・撮影・文:新 麻記子

【情報】
永遠の都ローマ展
会期:2023年9月16日〜12月10日
会場:東京都美術館
住所:東京都台東区上野公園8-36
電話番号:050-5541-8600 
開室時間:9:30〜17:30(金〜20:00)※入室は閉室の30分前まで
休室日:月、9月19日、10月10日(ただし、9月18日、10月9日は開室)
料金:[当日券]一般 2200円 / 大学生・専門学校生 1300円 / 65歳以上 1500円
※土日・祝日のみ日時指定予約制(当日の空きがあれば入場可)
公式サイト:https://roma2023-24.jp

巡回予定
会期:2024年1月5日~3月10日
会場:福岡市美術館
住所:福岡県福岡市中央区大濠公園1-6