【森美術館開館】森美術館開館20周年記念展「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」

モニラ・アルカディリ《恨み言》2023年と真珠の指輪

2020年、猛威を振るった新型コロナウイルス感染症により、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、なかなか訪れられない日々が続きました。

しかし、新しい生活様式のもと事前予約をはじめ、検温や消毒など徹底した感染症対策を行い、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべく、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。

そのような経緯から森美術館にて開催中の森美術館開館20周年記念展「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」をご紹介したいと思います。

本展覧会について

保良 雄《fruiting body》2023年

産業革命以降、特に20世紀後半に人類が地球に与えた影響は、それ以前の数万年単位の地質学的変化に匹敵すると言われています。この地球規模の環境危機は、諸工業先進国それぞれに特有かつ無数の事象や状況に端を発しているのではないかという問いから本展は構想されました。

会場では、4つの章にて国内外のアーティスト34名による、歴史的な作品から新作まで、多様な表現約100点を紹介しています。

本展のタイトル「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」は、私たちとは誰か、地球環境は誰のものなのか、という問いかけにもなっており、人間中心主義的な視点のみならず、地球を大局的な視点から見渡せば、地球上にはいくつもの多様な生態系が存在することに気付くことでしょう。

本展では、環境問題をはじめとするさまざまな課題について多様な視点で考えることを提案しています。

本展覧会の見どころ

展示風景 (手前)殿敷侃《山口—日本海ー二位ノ浜 お好み焼き》1987年 個人蔵 寄託:広島市現代美術館、(奥)谷口雅邦《発芽する?プリーズ!》 2023年

世界共通の喫緊の課題である環境危機に対し、世界16カ国、34人のアーティストが作品に込めたコンセプトや隠喩、素材、制作プロセスなどを読み解き、ともに未来の可能性を考えます。

ゲスト・キュレーターのバート・ウィンザー=タマキによる「第2章:土に還る 1950年代から1980年代の日本におけるアートとエコロジー」では、日本の社会や現代美術史をエコロジーの観点から読み解きます。

色彩で感情を表現した絵画にはじまり、真実を捉えたドキュメンタリー写真、視聴者の心に訴えかける生々しい映像、時代とともに表現媒体が移り変わっていく様子も感慨深いです。

ニナ・カネル《マッスルメモリー(5トン)》2023年

本展覧会では、できる限り作品というモノ自体の輸送を減らし、作家本人が来日して新作を制作してもらう計画から、身近な環境にあるものを素材として再利用した作品が多く出展されます。

例えば、貝殻を観客が踏みしめる感覚と音を体験できるニナ・カネルの作品は、観客によって粉砕された貝殻は、展覧会終了後にセメントの原料として、さらに再利用される予定だそうです。

また、出展アーティストはもちろん、美術館もその取り組みに一役買っており、前の展覧会の展示壁および壁パネルを一部再利用し、塗装仕上げを省くことで、環境に配慮した展示デザインとなっています。

最後に

アサド・ラザ《木漏れ日》2023年

本展覧会が定義する「エコロジー」は、「環境」だけに留まりません。

この地球上の生物や非生物を含む森羅万象は、何らかの循環の一部であり、その循環をとおしてこの地球に存在する全てのモノ、コトは繋がっていることが伝わっていきました。

そのような循環や繋がりのプロセスをさまざまな形で表現する現代アーティストたちの作品から、私たちが広大で複雑に絡み合う循環(エコロジー)の中にあることを想起させます。

工業化、近代化、グローバル化など、私たちが便利で快適になっている裏側で、地球環境が蔑ろになっていることから、毎年のように繰り返される自然災害が課題となっています。

しかし、このような環境危機は私たちの「選択」が招いた結果であり、現状を打破するには私たちの在り方を改めることはもちろん、自分の“こと”として捉えるのが必要だと感じました。

取材・撮影・文:新麻記子

【情報】
森美術館開館20周年記念展
「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」
会期:2023年10月18日(水)- 2024年3月31日(日)
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
開館時間:10:00-22:00
     (火曜日のみ17:00まで。ただし1月2日、3月19日は22:00まで)
     ※入館は閉館時間の30分前まで
     ※会期中無休
美術館公式サイト:https://www.mori.art.museum/jp/