【SOMPO美術館】ゴッホと静物画ー伝統から革新へ

2020年、猛威を振るった新型コロナウイルス感染症により、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、なかなか訪れられない日々が続きました。

しかし、新しい生活様式のもと事前予約をはじめ、検温や消毒など徹底した感染症対策を行い、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべく、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。

そのような経緯からSOMPO美術館にて開催される「ゴッホと静物画ー伝統から革新へ」展をご紹介したいと思います。

フィンセント・ファン・ゴッホとは?

フィンセント・ファン・ゴッホ《結実期のひまわり》1887年 ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファンゴッホ財団)

フィンセント・ファン・ゴッホ(1853〜1890年)は、オランダのポスト印象派の画家です。

1853年オランダ南部のフロート・ズンデルトで、牧師の息子として6人兄弟の長男として生まれました。

ゴッホは、画商の仕事をしても長続きせず、父と同じ牧師を目指すも上手くいかず、弟・テオのすすめから画家になることを志し、わずか10年の創作期間にも関わらず約2100点以上もの作品を制作しました。

彼は、身の回りにある物で静物画を描き、個性溢れる革新的な画風を確立し、本展覧会の目玉である《アイリス》や《ひまわり》などの名画を生み出し、西洋美術史において最も有名で影響力のある芸術家の一人として、20世紀初頭に出現した前衛芸術家たちにも大きな影響を与えました。

静物画とは?

展示風景

ヨーロッパの美術史において「静物画」が西洋画のジャンルとして確立したのは17世紀のこと。

静物画は、自然物(花、魚、獲物、貝殻、野菜、果物、台所、頭蓋骨など)や人工物 (パン、料理、楽器、書籍、ガラス盃、陶磁器、パイプなど)を対象とし、動かない物を描いた絵画作品のことです。

これらを描く作家は、対象物を自らの美的感性に基づいて自由に配列し、画面を構成していると考えられることから、物に込められた意味を知ることで、当時の人々の生活や考え方を知ることができます。

静物画はジャンル分けしてみると、花束、台所画、ヴァニタス、朝食画・晩餐画、コレクション画などさまざまなカテゴリーがあり、ヴァニタスでは「人生の空しさの寓意」をあらわしていたり、コレクション画では富を誇示していたり、さまざまな静物画には宗教画や寓意画の両面も持っています。

本展覧会について

フィンセント・ファン・ゴッホ《野牡丹とばらのある静物》1886-87年 クレラー=ミュラー美術館、オッテルロー

本展覧会は、17世紀オランダから20世紀初頭まで、ヨーロッパの静物画の流れの中にゴッホを位置づけ、ゴッホが先人達から何を学び、それをいかに自らの作品に反映させ、さらに次世代の画家たちにどのような影響をあたえたかを探ります。

会場では国内外25か所からの出展作品全69点のうち、ゴッホによる油彩画25点をご覧になれるだけでなく、17世紀の巨匠たちをはじめと、印象派、ポスト印象派、フォーヴィズム、表現主義などの画家の油彩画44点もあわせて展示してます。

また、SOMPO美術館ならではの「ひまわり」に焦点をあてたコーナーが設けられ、ゴッホやその他の画家たちによる「ひまわり」を描いた作品を紹介し、なぜ彼らがこの主題を描いたかを探っていきます。

見どころポイント

展示風景

本展覧会では、名だたる画家たち(クラウス、ドラクロワ、マネ、モネ、ピサロ、ルノワール、ゴーギャン、セザンヌ、ヴラマンク、シャガールなど)とともに、ゴッホの静物画が紹介されています。

弟・テオや妹・ウィレミーンへ綴った手紙から、自身が語った言葉が記載されたキャプションをもとに、他の画家とゴッホの作品を見比べてみると、先人たちの技法や色彩、その描き方を学んで、自分の表現を確立していく様子のほかにも、ゴッホから影響を受けた様子がご覧になれることでしょう。

右:フィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》1887年 SOMPO美術館所蔵
左:フィンセント・ファン・ゴッホ《アイリス》1890年 ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファンゴッホ財団)

例えば、筆跡が残る荒々しいタッチ、厚く塗った絵の具、鮮やかな色彩など、当時でも珍しい独特なスタイルだった、アドルフ=ジョゼフ・モンティセリの《花瓶の花》(1875年頃)や、シンプルな技法で同系色を重ねて描いたエドゥアール・マネの《白いシャクヤクとその他の花のある静物》(1880年頃)から、ゴッホが先人たちの作品を分析し、自分なりに力強く美しい花々を描きました。

こうした研究を重ねながら、色彩を自由に組み合わせ、色彩が持つ表現力を高め、感情をも表現したゴッホは、後のフォーヴィズムや表現主義など、20世紀の美術に大きな影響を与えていきました。

最後に

右:ポール・セザンヌ《ウルビノ壺のある静物》1872-1873年 上原美術館所蔵
左:フィンセント・ファン・ゴッホ《皿とタマネギのある静物》1889年頃 クレラー=ミュラー美術館、オッテルロー

《アイリス》《ひまわり》などをはじめ、25点ものゴッホ作品が集結する本展覧会。

国内外25か所からの出展作品全69点もの数々の静物画を通し、先人達から何をゴッホは学び、それをいかに自身の作品に反映させ、革新的な画風を確立していったのかに迫ることができます。

ぜひ、ゴッホ好きな方はもちろん、他画家が好きな方も楽しめること間違いなし!そして、静物画というジャンルから作家の生活や思考に触れられる本展覧会にぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

取材・撮影・文:新麻記子

『ゴッホと静物画―伝統から革新へ』 SOMPO美術館
開催期間:2023年10月17日(火)~2024年1月21日(日)
所在地:東京都新宿区西新宿1-26-1
アクセス:JR線新宿駅西口から徒歩5分、東京メトロ丸ノ内線新宿駅から徒歩5分
開館時間:10:00~18:00
            ※ただし11月17日(金)と12月8日(金)は20時まで
              ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし1月8日は開館)、年末年始(12月28日~1月3日)。
観覧料:一般2000(1800)円、大学生1300(1100)円、高校生以下無料
          ※当日券料金。()内は事前購入券料金。
            ※日時指定予約制。
公式サイト:https://gogh2023.exhn.jp/