【上野の森美術館】モネ展 連作の情景

会場入口、メインビジュアル

2020年以降、猛威を振るった新型コロナウイルス感染症により、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、なかなか訪れられない日々が続きました。

しかし、新しい生活様式のもと事前予約をはじめ、検温や消毒など徹底した感染症対策を行い、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべく、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。

そのような経緯から上野の森美術館にて開催される「モネ 連作の情景」をご紹介したいと思います。

本展覧会について

写真:展示風景、中央:《昼食》1868-69年 油彩、カンヴァス 231.5×151.5cm シュテーデル美術館 © Städel Museum, Frankfurt am Main

本展では、1874年に第1回印象派展が開催されてから150年の節目を迎えることを記念し、東京と大阪を会場に国内外のモネの代表作60点以上が一堂に会します。

モネの代名詞として日本でも広く親しまれている〈積みわら〉〈睡蓮〉などをモティーフとした「連作」に焦点を当て、時間や光とのたゆまぬ対話をつづけた画家の生涯を辿ります。

また、サロン(官展)を離れ、印象派の旗手として活動をはじめるきっかけとなった、日本初公開となる人物画の大作《昼食》を中心に、「印象派以前」の作品もあわせて紹介し、モネの革新的な表現手法の一つである「連作」に至るまでの過程を追っていきます。

クロード・モネとは?

展示風景、【第5章 「睡蓮」とジヴェルニーの庭】より《睡蓮の池の片隅》など

印象派を代表する画家のひとりである、クロード・モネ(1840-1926)。

その名は知らずとも、どこかで彼の作品を見かけた方もいらっしゃるのでは?『印象派』という絵画ジャンルの由来となった《印象、日の出》を生み出した画家です。

モネは、自然の光と色彩に対する並外れた感覚を持ち、柔らかい色遣いと温かい光の表現を得意とし、自然の息遣いが感じられる美しい作品を数多く残しました。

彼は「光の画家」という異名を持つほど、自然の中の“光の美しさ”に魅了され、その探求と表現方法の追求に生涯を捧げ、風景画に革新をもたらしました。

彼の残した功績は美術史に大きな影響を与え、ポスト印象派はもちろん現代アートに至るまで、後世へと受け継がれています。

モネが用いた技法とは?

展示風景

モネは時間の経過、天候や季節で変わる、光の印象を追いかけ、複数枚制作することもあったそうです。…そんなことが可能なのでしょうか?どのような技法を用いたのでしょう?

彼は、自らの目に映る光や揺れ動く風、そして感じる空気を表現するために、緻密で正確なデッサンに基づく写実性を捨てて感覚的に筆を走らせていく『早描き』と、パレットで混色せずにキャンバスに置いて描く『筆触分割』という技法を用いていることがわかっています。

刻々と時間が流れていくと光によって、風景の見え方が変わってくるので、カンヴァスを交換しながら1日に10〜12枚も同時進行で制作することもあったそうです。

モネの「連作」に注目!

展示風景、【第4章 連作の画家、モネ】より〈ウォータールー橋〉の連作

モネは「光」を捉えようと、各風景(積みわら、ウォータールー橋、睡蓮など)の連作を描きました。

同じ場所やテーマを一つの対象として、異なる天候、異なる時間、異なる季節を通し、一瞬の表情や時の移り変わりを写し取った「連作」は、巨匠モネの画業から切り離して語ることはできません。

移ろいゆく景色とその全ての表情を描き留めようとした、モネの時と光に対する探究心が感じられる「連作」は、モネの画家としての芸術的精神を色濃く映し出されています。

最後に…

会場入口、ジヴェルニーの庭のインスタレーション

モネは生涯を通して数々の苦難もありましたが、時間や光とのたゆまぬ対話をつづけ、数多くの美しい作品を手掛けました。

現在、上野の森美術館では本展覧会である「モネ 連作の情景」が開催中ですが、2024年には東京都美術館で「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」展、国立西洋美術館で「モネ 睡蓮のとき」の開催が決定しています。

そして、今後もモネの名を冠した展覧会は日本でも数多く開催されていくことでしょう。

鑑賞者の心を離さず、愛されているモネ…展示作品のすべてがモネ作品で構成され、壮大なモネ芸術の世界を堪能できる本展覧会に足を運んでみてください。

取材・撮影・文:新麻記子

【情報】
モネ 連作の情景
会期:2023年10月20日(金)~2024年1月28日(日)
会場:上野の森美術館
開館時間:9:00~17:00(金・土・祝日は~19:00)
     ※入館は閉館の30分前まで
休館日:2023年12月31日(日)、2024年1月1日(月・祝)
公式ホームページ:www.monet2023.jp

巡回展
会場:大阪中之島美術館 5階展示室
会期:2024年2月10日(土)~5月6日(月・休)