【トキワ荘マンガミュージアム】 特別企画展『トキワ荘のアニキ 寺田ヒロオ展』

地域へ、世界へ、マンガ・アニメ文化を発信!

新型コロナウイルス感染症により美術館・博物館・ギャラリーなどに気軽に足を運べなくなってしまいました。

そんな状況下に負けじと感染症対策をきちんと行いながら、運営に努める施設関係者への思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけになることを考え、美術館・博物館・ギャラリーの様子を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートすることとなりました。

そのような経緯から、今回は豊島区立トキワ荘マンガミュージアムにて開催中の特別企画展『トキワ荘のアニキ 寺田ヒロオ展』をご紹介します。

昭和27年、椎名町(現南長崎)にあった木造アパート「トキワ荘」に手塚治虫が入居。翌年、区内雑司が谷の並木ハウスへ転居し、『ジャングル大帝』をはじめ、『鉄腕アトム』や『リボンの騎士』などの名作を世に出しました。

その後、彼を慕っていた、寺田ヒロオ、藤子不二雄(藤子・F・不二雄、藤子不二雄(A))、石ノ森 章太郎、赤塚不二夫など、後のマンガ界をけん引する数多くの巨匠たちがその青春時代をトキワ荘で過ごし、互いに切磋琢磨しながらマンガという新たな表現文化を切り拓いていきました。

昭和57年、そのトキワ荘は解体されてしまいましたが、令和2年に現代にマンガ・アニメを核とする地域文化の継承・発展を目指す、マンガによる町づくりの発進拠点「トキワ荘マンガミュージアム」がオープン。

館内2階では、トキワ荘があった椎名町の歴史を紹介している常設展示室をはじめとし、トキワ荘の歴史やマンガ家の暮らし、共同炊事場やマンガ家たちの部屋を再現した展示や、マンガ家になりきってみよう!の体験コーナーがあります。(※現在、体験コーナーは新型コロナウィルス感染防止策として中止しております。)

特別企画展『トキワ荘のアニキ 寺田ヒロオ展』では、トキワ荘に入居したマンガ家のひとりである、寺田ヒロオを紹介しています。

マンガ家仲間からは”テラさん”の愛称で呼ばれ、年長者であるだけでなく、その優しさや頼もしさから、アニキ分として慕われていました。

そして、そのテラさんへの感謝の思いは、後年にマンガ家仲間が描いたマンガや、エッセイ、インタビューなどからも見て取ることができます。

しかし、寺田のマンガを目にする機会は少なく、どんな作品を描いていたのか、マンガ家としてどのような考えをもつ人物なのかを知らない人も多いことでしょう。

本展では、寺田の直筆原稿をはじめとした貴重な資料、寺田のインタビュー記事や寄稿文などをもとに、マンガに対する強い思いや、あまり知られていない作品なども紹介しています。

展示室には、寺田が描いた主要作品『背番号0』『もうれつ先生』『スポーツマン金太郎』が展示され、作品キャラクターたちが生き生きと画面上を行き交い、数多くの読者を魅了してきたことが伺えます。

寺田は、これこそ理想の子供雑誌だ!と感銘を受けた『漫画少年』から、「マンガは子どもたちが楽しみながら、心を清く正しく育てることができる」という考えのもと、子どもたちに対して優しい思いを込めて描いていたことがわかります。

また、良質なマンガを子どもたちに届けるために良質なマンガ家を発掘すべく、『漫画少年』への作品連載だけでなく、投稿マンガの選評コーナーの構成を担当するほか、『漫画少年』が廃刊後してもさまざまな雑誌に、「マンガの描き方」の掲載や新人賞の審査員を務めるなど、後進を育てる役割を担いました。

最後にご本人が週刊連載から身を引いたことに対して、本人の言葉を掲載したコーナーがありました。

寺田は自分が信じる「良いマンガ」を提供すべく、自分の中で信念を貫いた姿勢に感銘を受けました。

私たちの身近となっているマンガですが、今一度寺田ヒロオのマンガを通して、マンガの原点を振り返ってみてはいかがでしょうか?

取材・執筆・撮影:新 麻記子

展覧会名: 「トキワ荘のアニキ 寺田ヒロオ展」
会期: 2020年 10 月 30 日(金)~ 2021 年 1 月 11 日(月・祝)
現在、緊急事態宣言の発令により会期延長中!詳細はホームページにてご確認ください!
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)・年末年始
会場: 豊島区立トキワ荘マンガミュージアム 1 階企画展示室
企画展入場料(グッズ付き): 大人 500 円、小中学生 100 円、未就学児・障がい者手帳をご提示の方及び介助者( 1 名まで)無料 ※ミュージアムへの施設入館料は無料
HP:https://tokiwasomm.jp

ライタープロフィール:新 麻記子(しんまきこ)

アート専門WEB媒体の運営・編集・ライターを経て、フリーランスに転身。
現在、アート・エンタメメディア『La vie pianissimo』と日本酒メディア&コミュニティ『酒小町』にて編集者をつとめ、その他寄稿WEB媒体ではアート・カルチャー系を中心にライターとして執筆活動中。
アート・カルチャーの架け橋になりたいというの想いからClassyAcademy代表の石井江奈と対話型鑑賞会【Classyアート鑑賞会】の企画・運営をおこなうナビゲーターのほか、ギャラリー&ダイニングバー『ワインワークス南青山』や他ギャラリーにてブッキングやイベントを企画するアートディレクターや、作品展示のPVやアーティストのMVを手掛ける映像ディレクターとしても活動しています。

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