作品を展示するための「ハコ」である美術館の裏側に迫る!
新型コロナウイルス感染症の変異株により、日々増加傾向にある感染者数に伴いまして、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、気軽に訪れられない日々が続いています。
現在、新しい生活様式のもとオンラインチケットで密を防ぎ、検温や消毒など徹底した感染症対策を行いながら、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべ く、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。
そのような経緯から静岡県立美術館にて開催している『大展示室展』をご紹介します。
富士山、三保松原をはじめ数多くの景勝地に恵まれた静岡県。
風光明媚な日本平の麓に建つ静岡県立美術館は、文化の拠点として“開かれた美術館”を目指し、企画展や収蔵品展はもとより、講演会、講座、シンポジウム、ワークショップなどを開催しています。
緑溢れる立地環境にふさわしい作品収集をコンセプトに、17世紀以降の東西の風景画、富士山をモチーフにした作品、静岡県ゆかりの作家や作品など幅広く収集。
また、その迫力とスケールに飲み込まれるようなロダンの《地獄の門》を中心とする32体の彫刻を、明るい大空間を散策しながら鑑賞することができる「ロダン館」も人気です。
そんな静岡県立美術館では、約半年間の改修工事を終え、『大展示室展』を開催しています。
本展では展示室の様々な機能を一挙に紹介。作品を展示するための「ハコ」である美術館の展示室には、安全に、そして快適に作品を見てもらうために、実にさまざまな工夫が込められています。
会場では、作品を入れるケースをはじめ、壁、台車、道具、照明など欠かせない道具はもちろん、普段はひっそりと身を隠す美術館の裏方スタッフの声などもご覧になれます。
その中には、アイティーエル株式会社のカッタースポットの照明器具も展示されており、足元のスイッチボタンで異なる表情を生み出す性能を体感してみてください。
また、静岡県立美術館創設期の資料から、1/3世紀前の人々が描いた夢の姿を目にしながら、駿府公園のお堀の中に出来る計画が変更され、今の場所に建設されたことなどが伺えることでしょう。
その他、ローカルCMの絵コンテや地方新聞の掲載記事をはじめ、時代とともに移り変わってきた『入館者〇〇万人達成』のロゴ、1994年3月にオープンしたロダン館についてなど、その軌跡を辿ることができます。
そして、4月1日(金)より静岡県立美術館の収蔵品情報をデジタルアーカイブとして公開。
そちらでは、オーギュスト・ロダン≪地獄の門≫の3Dモデルと、池大雅≪蘭亭曲水・龍山勝会図屏風≫(国指定重要文化財)の超高精細画像をご覧になることができます。
また、館長・木下直之がプロデュースする動画も公開されているのでそちらもお見逃しなく!
この春、約半年間の改修工事を終えて再始動した静岡県立美術館。
今後は、日中国交正常化50周年を記念し、約半数が日本初公開作品となる『兵馬俑と古代中国 ~秦漢文明の遺産~』、富士山をはじめとした日本各地の風景を描いた『絶景を描く-江戸時代の風景表現-』、いま最も勢いのあるアーティスト鴻池朋子の『鴻池朋子展 (仮)』、明治以降に描かれた日本画を集中的にご覧いただく『近代の誘惑―日本画の実践』などが企画されています。
ぜひ、静岡に足を運んだ際はぜひ足を伸ばしてみてはいかがでしょうか?
取材・撮影・文:新麻記子
【情報】
『大展示室展』
会期:2022年4月2日(土)~2022年5月15日(日)
会場:静岡県立美術館
時間:10:00~17:30(展示室の入室は17:00まで)
休館:毎週月曜日(ただし、5月2日(月)は開館)
入場:一般=300円
70歳以上・大学生以下=無料
ホームページ:https://spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/exhibition/detail/92