60年におよぶ画業をたどる大規模展覧会が開幕!
新型コロナウイルス感染症の変異株により、日々増加傾向にある感染者数に伴いまして、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、気軽に訪れられない日々が続いています。
現在、新しい生活様式のもと検温や消毒など徹底した感染症対策を行いながら、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべ く、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。
そのような経緯から東京国立近代美術館にて開催中の「ゲルハルト・リヒター展」をご紹介します。
弊社サイトでご紹介させていただいた箱根・ポーラ美術館の「ポーラ美術館開館20周年記念展 モネからリヒターへ―新収蔵作品を中心に」をはじめ、上野・国立西洋美術館の「自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで」など、今年の夏、ゲルハルト・リヒターの作品がご覧になれる展覧会がさまざまな美術館で企画・開催されています。
今回、こちらの記事ではそのうちの一つである、日本では16年ぶり、東京では初となる美術館での大規模な個展として開催している東京国立近代美術館の「ゲルハルト・リヒター展」を取り上げたいと思います。
ドイツが生んだ現代美術の巨匠であるゲルハルト・リヒターは、油彩画、写真、デジタルプリント、ガラス、鏡など多岐にわたる素材を用いて、具象表現や抽象表現を行き来しながら、人がものを見て認識する原理自体を表すことに一貫して取り組んできたアーティストです。
待望の大規模個展となる本展覧会では、同氏が手元に置いてきた初期作や最新のドローイングを含む122点を通じて、一貫しつつも多岐にわたる60年の画業を紐解いています。
会場では、初期のフォト・ペインティングからカラーチャート、グレイ・ペインティング、アブストラクト・ペインティング、オイル・オン・フォト、最新作のドローイングまで、リヒターがこれまで取り組んできた多種多様な作品をご紹介しています。
特に注目はホロコーストが主題となっている日本初公開の大作《ビルケナウ》(2014年)。
第二次大戦時にアウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所でひそかに撮影された写真のイメージを出発点とし描かれた抽象画で、近年作家自身にとっても重要な位置を占めるという作品とされており、幅2m×高さ2.6mの作品4点で構成されている絵画作品です。
展示室では、これらの絵画作品と組み合わせて《グレイの鏡》と同寸法の複製写真作品とともに展示されており、ぜひ会場でその組み合わせの意図など、考えを巡らせて鑑賞を楽しんでみてください。
会場では特定の順路は設けられておらず、来場者が鑑賞順に縛られずに展示室を往還しながら、リヒターの作品を楽しむことができます。
人がものを見て認識する原理自体を表すリヒターの多岐にわたる60年の画業をご覧になりに、ぜひ会場に足を運んでみてくださいね。
取材・撮影・文:新麻記子
【情報】
ゲルハルト・リヒター展
会期:2022年6月7日(火)~10月2日(日)
会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
休館日:月曜日(ただし7月18日、9月19日は開館)、7月19日(火)、9月20日(火)
開館時間:10:00~17:00(金曜・土曜は10:00~20:00)※入館は閉館30分前まで
詳細:https://richter.exhibit.jp/