【龍谷ミュージアム】秋季特別展「博覧 -近代京都の集め見せる力-」

今日に至るまでの博覧会や博物館の歩みを疑似体験できる

新型コロナウイルス感染症の変異株により、日々増加傾向にある感染者数に伴いまして、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、気軽に訪れられない日々が続いています。

現在、新しい生活様式のもと検温や消毒など徹底した感染症対策を行いながら、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべ く、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。

そのような経緯から龍谷ミュージアムにて開催中の秋季特別展「博覧 -近代京都の集め見せる力-」をご紹介します。

龍谷ミュージアムは、インドでの仏教の誕生からアジアへの広がり、日本国内の仏教の展開までを視野に入れ、仏教を中心とする文化財を広く公開することを通じ、仏教を身近に感じられる、日本初の仏教総合博物館です。

龍谷大学の長い歴史の中で蓄積してきた研究成果や貴重な学術資料などにより、仏教の誕生から現代の仏教までの流れを幅広く紹介するシリーズ展に加えて、特定のテーマに基づいた特別展や企画展なども開催しています。

また、シルクロード最高の仏教美術・誓願図が描かれた、石窟寺院の壁画を原寸大で復元されている、「ベゼクリク石窟大回廊 復元展示」は、壮大なスケールと色彩の鮮やかさは圧巻です。

そんな龍谷ミュージアムにて開催されている本展覧会では、集めて見せる試みとして開催された2つの博覧会と2つの博物館を取り上げ、当時の主催者側の展示に込めた強い思いを探ります。

「博覧」とは趣味や研究、社会の発展のため、ある種のモノや資料を広く集め、一般に公開するという意味です。そして、その催しが博覧会であり展示会で、その常設の機関が博物館です。

明治時代から昭和戦前期にかけて、京都で開催された博覧会や展示会、開設された博物館では、さまざまな手法を用いて展示資料を集め、見せ方(展示手法)や意匠(展示造作)にも工夫を凝らしていました。

会場では、日本初の「博覧会」と称された「京都博覧会」、明治初期から継続された浄土真宗の法灯を伝える大規模な展覧会「西本願寺蒐覧会(しゅうらんかい)」、仏教を児童に伝える博物館「仏教児童博物館」、京都で先駆的な自然史系博物館「平瀬貝類博物館」を紹介しています。

浄土真宗の法灯を伝える大規模な展覧会「西本願寺蒐覧会」では、全国各地から人力で仏像などの法宝物を京都に運び込んだことから、その当時の人々が抱く信仰心の強さを感じることができます。

また、京都で先駆的な自然史系博物館「平瀬貝類博物館」では、今では一般的となっているミュージアムショップが開設され、そこでのグッズの売上が運営資金の一部となっていたそうです。

会場構成や展示方法から伺える主催者側の情熱はもちろん、展示作品や関連資料から当時の様子が感じられ、今日に至るまでの博覧会や博物館の歩みを疑似体験できます。

こうして美術館や博物館で開催される展覧会や博覧会が当たり前になっている今、改めて先人の情熱があったからこそ、私たちは作品を鑑賞できているのだと感じました。

取材・撮影・文:新麻記子

【情報】
秋季特別展「博覧 -近代京都の集め見せる力-」
会期:2022年9月17日(土)~11月23日(祝・水)
   前期:10月16日(日)まで、後期:10月18日(火)から
   ※9月19日(祝・月)、10月10日(祝・月)は開館。9月20日(火)、10月11日(火)は休館
会場:龍谷ミュージアム
時間:午前10時~午後5時
※10月7日(金)・21日(金)は午後8時まで。入館は閉館時間の30分前まで
休館:月曜
ホームページ:https://museum.ryukoku.ac.jp/exhibition/2022/hakuran/