【麻布台ヒルズ ギャラリー】「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」

アイティーエル株式会社では、一人でも多くの方が美術館や博物館を訪れるきっかけとなるべく、2020年7月より【ミュージアム・レポート】を開始いたしました。

困難な状況下においても美術館・博物館ではさまざまな企画や対策をおこなっていることから、全てのアートシーンに対してこれからも変わらず応援していくべく、アイティーエルも継続して情報を発信していきたいと思います。

今回は、麻布台ヒルズギャラリーにて開催中のポケモンと工芸の世界が楽しめる「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」(会期:2024111()202522())をご紹介します。

本展覧会について

吉田泰一郎《サンダース》

本展覧会は、2023年3月から6月まで国立工芸館(石川県)にて開催され、工芸の多種多様な素材と技法でポケモンに挑み、ひらめきと悶えと愉しみの中から生まれた約70点の作品が公開されました。

その後、アメリカにあるJAPAN HOUSE LOS ANGELESでの展示を経て、日本に凱旋し、滋賀・佐川美術館、静岡・MOA美術館の展示を終え、現在東京会場の麻布台ヒルズ ギャラリーにて開催中です。

日本を代表するゲーム・アニメの人気コンテンツである「ポケモン」と技術と美しいデザインを組み合わせた実用的かつ芸術品である「工芸」…正面切って出会わせたとしたらどんなかがく反応が起きるだろう。

会場では、ポケモンをテーマに人間国宝から若手作家まで20名のアーティストが、工芸の多種多様な素材と技法を用いて本気で挑み、作り上げられた作品から美とわざの発見が楽しめることでしょう。

多種多様な素材と技法で見えてくる新しいポケモンの世界

須藤玲子《ピカチュウの森》インスタレーション

陶磁器、染織、漆器、木竹工、金工、人形、七宝、紙工…多種多様な素材と技法を用いて、工芸の卓越した技によって生まれた作品は、ポケモンの世界の新しい可能性を見せてくれます。

ポケモンの姿かたちからしぐさや気配までを呼び起こした作品。進化や通信、旅の舞台、効果抜群のわざなどゲームの記憶をたどる作品。そして日々を彩る器をはじめ、着物や帯留など粋な装いに誘い込まれたポケモンたち…東京会場では新作が追加され、展示総数は約80点に及びます。

様々な伝統技術が使われた各ポケモンキャラクターの個性や世界観が反映された作品が楽しめます。

桑田卓郎《タイル(ピカチュウ)》《カップ(ピカチュウ)》《ボウル(ピカチュウ)》ピカチュウを転写した器が並ぶインスタレーション

吉田泰一郎による全長約2mにも及ぶ大迫力の《ミュウツー》、植葉香澄による美しい文様を纏った《蔦唐草文ジュペッタ》を含む新作に加え、桑田卓郎によるピカチュウをモチーフにしたカップとボウルは倍増され、新たにタイル576枚を加えたスケールの大きい作品として生まれ変わりました。

彫金によって”命を刻み起こす”金工作家・吉田泰一郎による全長約2mにも及ぶ大迫力の《ミュウツー》は、数ミリから数センチの繊細な金属片の組み合わせによって、表面の質感や色合いから卓越した技巧からミュウツーのキャラクターが持つ力強さと存在感でインパクトを与えます。

芸の技術と日本独自の美意識に基づき、伝統と現代の感性を融合させた陶芸家の桑田卓郎によるピカチュウをモチーフにしたカップとボウルには、一つ、一つ、金色の突起物に可愛らしいピカチュウの顔やモンスターボールがご覧になれるので、ぜひ作品を覗き込んでみてください。

紅型、友禅、小紋、着物技法を比べてみる!

水橋さおり《友禅訪問着「群」》《友禅帯「閃光」》

沖縄の型染「紅型」の技を継承する“紅型三宗家”のひとつである城間家16代目の城間栄市は、今回の制作イメージにポケモン原作の舞台のひとつである南国の「アローラ地方」を重ね合わせました。アダンの葉4枚を1単位とするパターンを作り、そこにピカチュウ、ライチュウ、モクロー、ニャビーらが来たという設定で、南国の風を受けながら楽しそうに躍動するポケモンたちの姿にワクワクとさせられます。

江戸時代に始まった着物の染色技術である友禅を用いる東京手描友禅作家の水橋さおりは、友禅の技法を駆使してとても丁寧な細かい染めで表現しています。色鮮やかなマゼンタの訪問着には、わたげポケモンのメリープとメリープが進化したモココが描かれています。近づいてよく見てみると、色違いが紛れ込んでいたり、文字が隠されていたり、伝統技術の中にも遊び心が詰まっています。

日本の伝統的な型染め技法のひとつである江戸小紋であり、代々続く江戸小紋染めの職人の家に生まれた小宮康義は、江戸以来の遊び心あふれる文様に絵解きの要素や現代感覚を盛り込んだ表現を展開しています。細かな仕事によって、遠くからは色無地に見え、近づくと充実の模様世界が広がる江戸小紋の着物には、隠れ上手なゴーストタイプのポケモンゲンガーとゴーストが見事に織り込まれています。

最後に

3段階で変形する金工作品でポケモンの“進化”を表現してる坪島悠貴《可変金物 ココガラ / アーマーガア》

陶磁器、染織、漆器、木竹工、金工、人形、七宝、紙工…多種多様な素材と技法を用いて、美しいデザインを組み合わせながら、生活に密着した日用品と装飾品であり、伝統と革新で生み出された数々の工芸品。

今回、日本を代表するゲーム・アニメの人気コンテンツのポケモンとのコラボレーションで、工芸品の長い歴史的・文化的価値を見つめ、鑑賞者に美しい価値と文化的な背景を伝える役割を果たしています。
会期中は、麻布台ヒルズギャラリー内のカフェではポケモンと工芸の世界観を反映したオリジナルメニューの提供をはじめ、ミュージアムショップでは展覧会限定のオリジナルグッズも販売されるなど、特別なコラボレーションによりポケモンの魅力と工芸の美が詰まったアイテムを手にすることができます。

会場で待ち構える作品との出会いははたして…ワクワク、うっとり、ニヤニヤそれともゾクッ?かけ算パワーで増幅した本展覧会に足を運んでみてはいかがでしょうか?

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【情報】
「ポケモン×工芸展ー美とわざの大発見ー」
会期:開催中~2025年2月2日(日)
会場:麻布台ヒルズギャラリー
開館時間:10:00~19:00(金、土、祝前日は~20:00)※入場は閉館の30分前まで
休館日:12月31日(火)
ホームページ:https://www.azabudai-hills.com/azabudaihillsgallery/sp/kogei-pokemon-ex/