【岩槻人形博物館】『開館記念名品展 雛人形と犬筥・天児・這子』

『人形の産地』岩槻から人形文化の魅力を発信!

新型コロナウイルス感染症により美術館・博物館・ギャラリーなどに気軽に足を運べなくなってしまいました。

そんな状況下に負けじと感染症対策をきちんと行いながら、運営に努める施設関係者への思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけになること考え、美術館・博物館・ギャラリーの様子を伝える【ミュージアムレポート】をスタートすることとなりました。

そのような経緯から、今回はその第二弾として、岩槻人形博物館をご紹介します。

今年2月、日本有数の『人形の産地』として知られるさいたま市岩槻に、人形をテーマとした日本初の公立博物館となる「さいたま市岩槻人形博物館」が開館しました。

日本有数の人形産地として知られているさいたま市の岩槻。江戸時代に花開いた衣裳人形や木目込人形の伝統技術が今日に受け継がれ、人々に愛される各種の人形を世に送り出しています。

この「さいたま市岩槻人形博物館」では、伝統ある日本人形文化を国内外に発信し、その魅力や奥深さを伝えることを目的としています。

そして、人形や人形文化に関する資料の収集・保存、調査研究が行われ、常設展、企画展、講座やワークショップなどの教育普及活動などを通して、多くの人々に人形への親しみを持ってもらえるような企画に取り組んでいます。

現在、新型コロナウイルス感染拡大防止のガイドラインに沿って、感染対策を行ったうえで、6月2日(火)より再開。

常設の 展示室1 では、どのように人形が作られているのか、道具や材料の展示や文献や資料をもとに、伝統的な技術をわかりやすく紹介しています。

つづく 展示室2 では、人形玩具研究家・日本画家として活躍した西澤笛畝(にしざわてきほ) が収集したコレクションを中心に、優美で華やかな雛人形、胡粉の白い肌が印象的な御所人形、彩色が美しい嵯峨人形、小さくても精巧な加茂人形や芥子人形、着せ替えを楽しめる市松人形など、日本の伝統的な美意識に基づき作られた人形がご覧になれます。

数々の展示品の中でも、私たちの生活において比較的馴染みのある雛人形。

“3月3日の雛祭り”で知られる桃の節句に、女の子の成長・健康・幸せを祈り、室内に飾るご家庭もあることでしょう。

雛人形の展示では、歴史を紐解いていけば自立型と端座型の形態のほか、京都と江戸の地域で表情や着物の違いはもちろんのこと、倹約を推奨する奢侈禁止令によりとても繊細なものが作られたことが伺えます。

企画の 展示室3 では、国の自粛要請と緊急事態宣言に伴い、わずか9日間で閉幕した「開館記念名品展 雛人形と犬筥・天児・這子」が開催中。

本展では、館所蔵の寛永雛、次郎左衛門雛など、雛人形の名品をお披露目するほか、人形のルーツとされる希少な犬筥(いぬばこ)、天児(あまがつ)、這子(ほうこ)を展示しています。

なかでも、その犬筥は迫力と造形的な美しさで岩槻人形博物館を代表する名品です。

人形は、病などの災厄から人を守る役割が期待され、信仰的背景のもと誕生しました。

健やかな日々の願いが数々の人形に託した背景に思いを馳せてみると、人から人への思い遣りなど、さまざまな側面に気づくことができるかもしれません。

コロナ禍で思いやりが必要な昨今だからこそ、改めて大切なことを見つめ直せる展示に、足を運んでみてはいかがでしょうか。

取材・執筆・撮影:新 麻記子

『開館記念名品展 雛人形と犬筥・天児・這子』

会期:2020年7月11日(土)~2020年8月23日(日)
会場:さいたま市岩槻人形博物館
住所:〒339-0057 埼玉県さいたま市岩槻区本町6丁目1-1
時間:午前9時~午後5時
   ※入館は閉館時刻の30分前まで
休館:月曜日
   ※8月10日(月・祝)は開館
HP:https://ningyo-muse.jp/