【群馬県立近代美術館】『佐賀町エキジビット・スペース 1983–2000-現代美術の定点観測-』

日本の現代美術の歩み

画像2美術館入口

新型コロナウイルス感染症により美術館・博物館・ギャラリーなどに気軽に足を運べなくなってしまいました。

そんな状況下に負けじと感染症対策をきちんと行いながら、運営に努める施設関係者への思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけになること考え、美術館・博物館・ギャラリーの様子を伝える【ミュージアムレポート】をスタートすることとなりました。

『Go To トラベル』や『Go To イート』のキャンペーンもはじまり、ぜひ地方の美術館にも足を運んでみてはいかがでしょうか?

そのような経緯から、今回は群馬県立近代美術館をご紹介します。

画像1美術館外観

画像3館内エントランスホール

現在、群馬県立近代美術館にて開催中の『佐賀町エキジビット・スペース 1983–2000-現代美術の定点観測-』。

1983年に開設し、2000年に閉鎖した『佐賀町エキジビット・スペース』を振り返る本展覧会は、多種多様な表現を用いるアーティストが手掛けた作品より、日本の現代美術の軌道を辿ることができます。

画像4『佐賀町エキジビット・スペース』展示室入口

画像5展示風景 「佐賀町エキジビット・スペース」の模型と過去の展覧会風景写真

画像6展示風景 「佐賀町エキジビット・スペース」の過去の展覧会風景写真

日本の現代美術が飛躍的に発展した1980年代、世界のアートシーンでは、ドイツのクンストハレ(コレクションを持たない美術館)や、アメリカのPS1(廃校となった公立小学校を改修し展示ギャラリーとアーティスト・イン・レジデンスを併設)が先鞭をつけるなど、新しい作家を生むインフラストラクチャーの開発が多く見られました。

そのような状況のなか、パルコなどの企画広告ディレクターを務めるほか、服飾やデザインの企画展キュレーションや、『無印良品』の立ち上げにも携わった小池一子は、東京都江東区佐賀にあった食糧ビルを修復し、『佐賀町エキジビット・スペース』を開設しました。

「美術館でも商業画廊でもない」もう一つの美術現場を提唱した『佐賀町エキジビット・スペース』は、発表の場を求めるアーティストに寄り沿う姿勢を打ち出す実験的な展示空間として、美術、デザイン、ファッション、建築、写真といった従来のジャンルを超えた、日本初の「オルタナティブ・スペース」として海外からも注目される存在となりました。

会場では、17年間で関わった400人を超えるアーティストによる、全106回の企画展からスペースで発表された作品の一部を展示しています。その他、展覧会風景写真や図録・チラシ類のアーカイブとともに、日本の現代美術の歩みをご覧になれます。

画像7展示風景 立花文穂『UMEBOSHI』1994、他作品

画像8過去のアーカイブ資料 展覧会DMやチラシなど

画像9展示風景 左:ヨルク・ガイスマール『Clothes Make People 1991』(全20作品中の12点)、右:岡村桂三郎『Untitled 』1998

発足当初の作品を掘り起こすことでミッションの初心に帰り、終幕に至る作品展示の系譜から示唆を得たものを選び、当時の作品が生まれた状態での展示を試みています。

展示作品のなかには、キャプションに2020年制作と記載されているものもありましたが、本展展示に合わせて作家によって微調整が加えられたものだそうです。

例えば、自身を西洋美術史の有名絵画作品に描かれている人物に扮する《セルフポートレート》で有名な森村泰昌さんの作品『踏み絵』は、当時のスペースで展示された際には室内全体をピンクの照明で覆っていたそうです。しかし、本展では他作家作品も展示されることから、『踏み絵』の額縁に合わせてピンクの照明が降り注ぐ演出に変わっています。

画像10展示風景 森村泰昌の作品群

画像11 森村泰昌 『踏み絵』1990

会場には、国内外ともに高い評価を受けているアーティストの作品が展示されており、その作品サイズも小さいものから展示室の一室にも及ぶほど大きいものまで、大変見応えのある作品展示でした。

それと同時に、アーティストだけでなく、来場者から愛されながら、日本の現代美術の一時代が築かれた『佐賀町エキジビット・スペース』の存在の大きさを感じました。

ぜひ、17年にわたって日本の現代美術を定点観測してきた『佐賀町エキジビット・スペース』の回顧展をご覧ください。

また本展覧会に足を運んだ際には、豊富な作品を所蔵しているコレクション展や、可愛いアートグッズなどを販売しているショップ、美味しいお食事が楽しめるカフェも合わせて楽しんでみてはいかがでしょうか。

画像12 展示風景

画像13 展示風景 みねお あやまぐち『Outer Inner Colour』1986

画像14 展示風景 廣瀬智史『マーレ・ロッソ』1998

【情報】
佐賀町エキジビット・スペース 1983-2000 現代美術の定点観測
会期:2020年9月12日〜12月13日
会場:群馬県立近代美術館 展示室1
住所:群馬県高崎市綿貫町992-1
電話番号:027-346-5560
開館時間:9:30〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(祝日の場合は翌日)
料金:一般 830円 / 大学・高校生 410円 / 中学生以下無料
サイト:http://mmag.pref.gunma.jp/exhibition/index.htm#kikaku

ライタープロフィール:新 麻記子(しんまきこ)

アート専門WEB媒体の運営・編集・ライターを経て、フリーランスに転身。
現在、アート・エンタメメディア『La vie pianissimo』と日本酒メディア&コミュニティ『酒小町』にて編集者をつとめ、その他寄稿WEB媒体ではアート・カルチャー系を中心にライターとして執筆活動中。
アート・カルチャーの架け橋になりたいというの想いからClassyAcademy代表の石井江奈と対話型鑑賞会【Classyアート鑑賞会】の企画・運営をおこなうナビゲーターのほか、ギャラリー&ダイニングバー『ワインワークス南青山』や他ギャラリーにてブッキングやイベントを企画するアートディレクターや、作品展示のPVやアーティストのMVを手掛ける映像ディレクターとしても活動しています。

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