【SOMPO美術館】『フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線』

展示風景

アイティーエル株式会社では、一人でも多くの方が美術館や博物館を訪れるきっかけとなるべく、2020年7月より【ミュージアム・レポート】を開始いたしました。

困難な状況下においても美術館・博物館ではさまざまな企画や対策をおこなっていることから、全てのアートシーンに対してこれからも変わらず応援していくべく、アイティーエルも継続して情報を発信していきたいと思います。

今回は、SOMPO美術館にて『フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線』をご紹介します。

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックとは?

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《キャバレのアリスティド・ブリュアン》(文字のせ前)1893年 The Firos Collection

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(1864年〜1901年)は、パリの盛り場の退廃と熱狂を描出した、19世紀末のフランスを代表する画家・版画家です。

ロートレックは1864年由緒あるフランス貴族のもとに生まれ、乗馬や狩猟また素描に親しむ環境で過ごしました。彼は13歳と14歳の時の二度におよぶ両足の骨折がもとで脚の発育が停止し、その後本格的に絵画の道へ進むことを決意します。

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1882年パリに出て、レオン・ボナついでフェルナン・コルモンの画塾でアカデミックな画風を学び、エドガー・ドガや日本の浮世絵版画の影響のもと大胆な構図・画面構成を試みます。

1884年モンマルトルにアトリエを定めてからは、迅速かつ的確に対象の形態を捉える才能や、人物の内面や社会的内情を見出す観察力に秀でていたことから、それを活かして世紀末独特の厭世的・退廃的空気に覆われたダンス・ホールやキャバレなどの歓楽街で生活する人々を独特な現代的感覚によって表現。

1891年に手がけた「ムーラン・ルージュ」の石版画ポスターが一世を風靡し、以降多くのポスターを制作し、この分野を芸術の域にまで高めました。

本展覧会について

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本展覧会は、19世紀末のフランスを代表する画家・版画家のアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックの個人コレクションとしては世界最大級のフィロス・コレクションから約240点を紹介します。

会場では、フィロス・コレクションの最大の特徴である素描作品、状態の良いものを厳選して収集しているポスターを中心とした版画作品、雑誌や書籍のための挿絵、ロートレックが家族や知人にあてた手紙、ロートレックの私的な写真など、画家に肉薄した作品と資料で展示構成しています。

20年以上にわたり収集しているフィロス・コレクションは、アメリカや中国でコレクションを紹介する展覧会が開催されていますが、日本での開催は今回が初めてとなります。

本展覧会の見どころ

世界最大級のコレクション、日本初上陸

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本展覧会では、ロートレックの紙作品(グラフィック)のコレクションとしては、パリのルーヴル美術館やアルビのロートレック美術館に次ぐ規模を誇るフィロス・コレクションが日本で初めて紹介されます。

19世紀末に独自の画境を開いたロートレックは生涯約30点ものポスターを制作し、会場では一世を風靡した彼のポスターから21点が出品され、何処かで見慣れたものや新たに目に触れるものもあります。

ロートレック作品を20年以上にわたり収集しているフィロス夫妻によると「ロートレックが手がけたポスターの展示では“文字を載せる前の状態”」に注目して鑑賞してほしいと語っていました。

何故ならば原画に直接文字を載せているものは、のりなどの使用により質が下がってしまうこと。それに対して文字載せ前では宣伝に使われていないので、とても質としては高いのだそうです。合わせて、鉛筆の素描にはじまり、石版、文字のせ前の刷り、完成品まで、一連の制作過程をご覧になれます。

また、アーティストがビジュアル化したかった状態のままで残っていることも重要視し、コレクションに努めたと報道内覧会のトークで教えてくれました。

世紀末パリ、キャバレ劇場の喧騒が聞こえる

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伯爵家に生まれ、画業のためパリに出たロートレックは、1884年頃からモンマルトにアトリエを構え、そこに生きる歌手や芸人、娼婦たちの姿を描きました。

会場では、浮世絵からインスピレーションを得た大胆な構図を生かしたポスターをはじめ、豊富な関連資料を合わせて展示することで、世紀末パリの街を彩り、時代を生きた人々の姿が浮かび上がらせます。

例えば、娼婦たちを描いた素描に目を向けると、誘惑するようなポーズを決めてエロティシズムを出すのではなく、私たちと何ら変わらない生活を送る日常的な姿を捉えており、今にも動き出しそうな生き生きとした様子を描いています。

彼の眼差しは、一般人でも、娼婦たちでも、階級など関係なく同じモデルとして捉えていることがわかります。

最後に

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完成作品から日々のスケッチまで、フィロス・コレクション最大の特徴である、素描約45点を紹介する本展覧会。

ロートレックの素早い描写を間近に感じ、彼が生み出す線の魅力を堪能しながら、ロートレックが何を見てそれをどのように描いたのか、その「視線」を感じながら疑似体験してみてください。

彼の頭の中で描いていたものに想いを馳せながら鑑賞することで、真の姿に迫っていくことができるかもしれません。

【展覧会情報】
「フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線」
会期:2024年6月22日(土)~9月23日(月・祝)
日時指定予約推奨
会場:SOMPO美術館(〒160-8338 東京都新宿区西新宿1-26-1)
休館日:月曜日(ただし7/15、8/12、9/16、9/23は開館)
開館時間:10時~18時(金曜日は20:00まで)※最終入館は閉館30分前まで
観覧料(税込):一般/事前購入券1,600円、当日券1,800円 大学生/事前購入券1,000円、当日券1,200円 高校生以下無料
HP:https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2023/lautrec/