
アイティーエル株式会社では、一人でも多くの方が美術館や博物館を訪れるきっかけとなるべく、2020年7月より【ミュージアム・レポート】を開始いたしました。
美術館・博物館ではさまざまな企画や対策をおこなっていることから、すべてのアートシーンに対してこれからも変わらず応援していくべく、アイティーエル株式会社も継続して情報を発信していきたいと思います。
今回は、パナソニック汐留美術館にて開催中のオディロン・ルドンの豊穣な画業をたどる「PARALLEL MODE オディロン・ルドン ―光の夢、影の輝き」(会期:4月12日(土)~6月22日(日))をご紹介します。
本展覧会について

本展覧会は、世界有数のルドン作品を収蔵している岐阜県美術館から出品される約80点の作品に加え、国内の美術館や個人に所蔵される優品、さらにパリのオルセー美術館所蔵の油彩画と木炭画など、約110点の作品によりルドンの豊穣な画業の全容を紹介する内容となっています。
会場では、ルドンの最初期から最晩年までの作品群をバランスよく網羅し、伝統と革新の狭間で近代美術の巨匠であるルドンが独自の表現を築き上げていく姿を紹介します。
印象派とも異なる世紀末の空気感をまとった“黒”の世界からはじまり、色彩の輝きに満ちた華やかな神秘的な絵画を描くようになった画業の変遷をじっくりと楽しめます。
オディロン・ルドンについて

オディロン・ルドン《自画像》1867年 油彩/板 41.7×32cm オルセー美術館 © GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
オディロン・ルドン(1840-1916)は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの画家です。
ルドンが生きた時代の欧州では、アカデミックな芸術に対して印象派や象徴主義などの新たな芸術潮流が起こり、さらにはフォーヴィスムやキュビスムなどの様々な前衛美術が台頭しました。また、この時代には、科学の発展による技術革新が社会構造や思想に多大な変化をもたらしました。
ルドンは、こうした変貌する社会と移り変わる芸術傾向と併走するかのように、作品発表の場や人脈を広げ、新しい画題に取り組んで木炭画や石版画からパステル画や油彩画へと表現媒体を変えていきました。
ルドンによる光と影が生みだす輝きを宿した夢幻の世界は、時代や地域を超えて多くの人々を惹きつけ、日本国内でもルドンの生前から彼の作品と芸術は紹介され、現代に至るまで、美術や文学、音楽、漫画など、幅広い分野でインスピレーションを与えつづけています。
本展覧会の見どころを注目作品
プロローグ:日本とルドン

日本におけるルドンの受容の歴史を紹介するセクションです。1912年に洋画家の石井柏亭が『早稲田文學』に掲載した評論がきっかけとなり、以降、竹内栖鳳や岡鹿之助などの日本画家がルドンの作品を所有し、日本の美術愛好家や芸術家たちを魅了してきました。このセクションでは、これらの日本人画家が所蔵していたルドンの作品を紹介し、ルドンの日本における受容の歴史をたどります。
第1章:画家の誕生と形成(1840–1884)

ルドンは、ボルドーで水彩画家スタニスラス・ゴランから素描を学び、1864年にパリに出て、ジャン=レオン・ジェロームの画塾で指導を受けました。帰郷後は版画家ロドルフ・ブレスダンから銅版画を学び、ボルドーの植物学者アルマン・クラヴォーを通して自然科学や文学、哲学の世界に触れ、その後の芸術表現の素地となる思想を形成していきました。この章では、郷里を描いた風景画から、木炭画、初期の石版画集まで、画家としての形成期の作品を展覧します。
第2章:黒の時代(1880–1890年代)

ルドンは、主に木炭画を制作し、奇怪な形態のモティーフが異様な雰囲気を醸し出す奇想の世界や、気球や電球など最新の技術への関心をモノクロームで表現していきました。また、石版画にも取り組み、『夢のなかで』(1879年)、『起源』(1883年)などの石版画集を立て続けに刊行しました。この章では、黒の時代の代表作を中心に展示し、ルドンの幻想的な世界観を堪能できます。
ルドン流の進化論とも称される『起源』は9点揃って展示。科学と芸術の融合を試みたルドンの独自の世界観を感じることができます。
第3章:色彩の時代(1890年代–1916)

オディロン・ルドン《窓》1906年頃 油彩/画布 69×50.3㎝ 岐阜県美術館
1890年代以降、ルドンはパステルや油彩を用いて、花や神話、宗教、人物などを主題とする色彩豊かな作品を手がけました。これらの作品には、19世紀後半から20世紀初頭へと至るモダニズムの諸相と接しながら、独自の表現を見いだしていくルドンの姿が見て取れます。この章では、色彩の時代の代表作を多数展示し、ルドンの画業の幅広さと深さを感じることができます。
ルドンの晩年の主要な画題の一つである「ステンドグラス」を描いた《窓》は東京展で初公開となっています。黒の時代の作品に見られる光と影の表現を、色彩を用いて探求しており、「黒」と「色彩の時代」をつなぐ重要な作品です。
【情報】
PARALLEL MODE オディロン・ルドン ―光の夢、影の輝き
会期:2025年4月12日~6月22日
会場:パナソニック汐留美術館
住所:東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00~18:00(5月2日、6月6日、20日、21日は〜20:00)
※入館は各閉館時間の30分前まで
休館日:水(ただし6月18日は開館)
ホームページ:https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/25/250412/