【東京国立近代美術館】『隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則』

公共性にはネコちゃんの視点がキーポイント!

まだまだ新型コロナウイルス感染症により、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、気軽に訪れられない日々が続いています。

しかし、そんな状況下に負けじとオンラインチケットで密を防ぎ、検温や消毒など徹底した感染症対策を行いながら、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべく、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。

前回、建築家・隈研吾設計の廣澤美術館を取材した経緯から、東京国立近代美術館にて開催している『隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則』をご紹介します。

米TIME誌にて「2019年世界で訪れるべき最も素晴らしい場所100選」に選ばれた《V&Aダンディー》や《国立競技場》などの設計に参画するなど、これまで20か国を超す国々でプロジェクトを手掛け、現代日本を代表する建築家のひとりである隈研吾。

本展覧会では、隈研吾が手掛けた世界各国に点在する作品から公共性の高い建築68件を精選し、隈自身の5原則「孔」「粒子」「斜め」「やわらかい」「時間」に分類し、隈研吾本人による章解説や作品解説のもと、写真や映像作品、建築模型、モックアップ(部分の原寸模型)、前庭に展示されるトレーラーハウスを合わせ、合計74件を紹介しています。

また、瀧本幹也、藤井光、マクローリン兄弟など第一線で活躍するアーティストによる映像作品から、隈建築を造形性だけでなく、どのように使用されているか、どのように街と関係を結んでいるかといった観点などもご覧になれます。

《V&Aダンディー》2018

一見すると構造的で冷たいと感じてしまうような建築物…しかし、隈設計の建築物は少し違うと感じることでしょう。

隈研吾は、その土地の環境や文化に溶け込む建築を目指し、ヒューマンスケールのやさしく、やわらかなデザインを提案し、コンクリートや鉄に代わる新しい素材の探求を通じて、工業化社会の後の建築の在り方を追求しています。

本展覧会のなかで特に注目されているのはオリンピック会場のひとつでもある《国立競技場》ではないでしょうか。

競技後のインタビューゾーン(フラッシュインタビューゾーン)には、自身がデザインした大型の行灯のような照明があり、また大量につくられた競技場のなかから、約40点を厳選して展示しています。

さらに、ネコの視点から都市での生活を見直したユニークなリサーチプロジェクト《東京計画2020(ニャンニャン)ネコちゃん建築の5656(ゴロゴロ)原則》も発表。

今の時代、都市についてなにかを提案するのだとしたら、高度経済成長期のように都市を上から見るのではなく、下から見るべきであると考えた隈自身が着目したのは、なんと動物のネコでした!

隈が住んでいる神楽坂のカフェにいる半ノラのトンちゃんとスンちゃんに、Takramとの協働により神楽坂でのフィールドワークやGPS測定を実施させ、2匹のリサーチの成果をもとに3DCGやプロジェクションマッピングを用いて展示しています。

建物(ハコ)を脱出し、都市を自由に生き抜く半ノラ…ひと所に留まらずに自分で道を作って、たくましく生きるネコの生態は、コロナの渦中にいる私たちに暮らしのヒントを与えてくれます。

また、それぞれの建築模型には必ずネコが配置されています。見つけにくいものもありますが、ぜひ会場で探してみてください。

《東京計画2020(ニャンニャン)ネコちゃん建築の5656(ゴロゴロ)原則》2020

ボリュームたっぷりの隈ワールドに溢れる展覧会。きっと、コロナ禍というきわめて難しい時代のなかで開催される本展覧会が、新しい公共性や未来の都市のあり方について考える機会となるでしょう。

取材・執筆・撮影:新麻記子

【情報】
隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則
会期:2021年6月18日~9月26日
会場:東京国立近代美術館
住所:東京都千代田区北の丸公園3-1
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00~17:00(金土〜21:00) ※入館は閉館30分前まで。最新情報は美術館ウェブサイトにて要確認
休館日:月(7月26日、8月2日、9日、30日、9月20日は開館)、8月10日、9月21日
料金:⼀般 1300円 / 大学生 800円 / 高校生以下・18歳未満無料
HP:https://kumakengo2020.jp