【三菱一号館美術館】『三菱創業150周年記念 三菱の至宝展』

国宝12点、重要文化財31点、絢爛豪華な数々の至宝に注目!

展示風景 手前:重要文化財《木造十二神将立像》 奥:国宝 俵屋宗達《源氏物語関屋澪標図屏風》

まだまだ新型コロナウイルス感染症により、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、気軽に訪れられない日々が続いています。

しかし、そんな状況下に負けじとオンラインチケットで密を防ぎ、検温や消毒など徹底した感染症対策を行いながら、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべく、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。

今回、丸の内・三菱一号館美術館にて開催中の『三菱創業150周年記念 三菱の至宝展』をご紹介します。

《伊勢物語》室町時代 16世紀 (公財) 静嘉堂蔵

三菱…その名前を聞けば誰しもが何かしらの事業を思い浮かべることでしょう。それだけ三菱は、私たちの暮らしにとって身近な存在といえるのです。

三菱の創業者である岩崎彌太郎は、生活に困り地下浪人へと没落していた、岩崎家の9代目として生まれました。24歳のときには初めて藩に取り立てられて、32歳で土佐藩開成館長崎商会の主任となり、35歳のときには大阪に三菱の創業となる九十九(つくも)商会を設立しました。

彌太郎は、明治10(1877)年に起きた士族の反乱・西南戦争で、持てる力の全てを注いで政府軍の輸送に当たったことにより、海運業は当時の日本で王座の位置を占めるに至ったそうです。海運業以外に炭坑・鉱山経営、造船業、銀行業、倉庫業、保険業など、幅広く今日の三菱に通じる事業を多角的に展開しています。

岩崎彌太郎の銅像

その後、2〜4代社長をつとめた、彌之助、久彌、小彌太は、多数の文化財に関心を抱き、当時の学者や芸術家とも交流し、社会に貢献する広い視野を持って、収集に努めたそうです。その収集品は静嘉堂と東洋文庫に収蔵されています。

本展では、初代岩崎彌太郎から小彌太にいたる、芸術文化の研究・発展を通じた社会貢献の歴史をたどります。静嘉堂と東洋文庫の所蔵する国宝12点、重要文化財31点を含む美術工芸品や古典籍など、三菱経済研究所の所蔵作品をあわせた貴重な作品群100点余りを展示。

三菱一号館美術館で、静嘉堂と東洋文庫の所蔵品が一堂に会する大変貴重な本展の見どころをお伝えします。

マルコ・ポーロ 口述 ルス・ティケッロ / 著『東方見聞録』1664年 刊、アムステルダム / 東洋文庫所蔵 (公財)

まず、貴重な品々が展示されている会場内で…特に注目して欲しいのが茶道具のコレクションから、世界の至宝とも言うべき国宝の《曜変天目》。

完成は世界でわずか3点しか現存しておらず、再現不可能とされています。小彌太は「天下の名器を私に用うべからず」として生涯一度も使用しなかったそうです。

漆黒の器で内側には星のようにもみえる大小の斑文が散らばり、斑文の周囲は暈状の青や青紫で、角度によって玉虫色に光彩が輝き移動し、「器の中に宇宙が見える」とも評されている茶碗です。

その他にも、重要文化財31点や歴史的価値のある品々が展示されています。

国宝《曜変天目(稲葉天目)》建窯 南宋時代(12-13世紀) (公財)静嘉堂所蔵

また、私たちが小・中学校の歴史の授業で学んだマルコポーロの『東方見聞録』などもあり、歴史的価値のあるものが所蔵されていることにとても驚きました。

起業家スピリッツ溢れる岩崎家の社会貢献に裏打ちされた類まれなコレクションの内容から、国立美術館が所蔵していそうなものを、一族経営の会社が所有していることに驚きを隠せません。

それだけ当時の学者や芸術家とも交流を通じて、何事も見極められる先見の目があったことが伺えます。
文化的方面で三菱が果たした役割に関心を抱きながら、日本東洋文化の素晴らしさを堪能できる、本展覧会に足を運んでみてはいかがでしょうか?

取材・執筆・撮影:新 麻記子

【情報】
『三菱創業150周年記念 三菱の至宝展』
会期:6月30日 ~ 9月12日 ※展示替えあり
会場:三菱一号館美術館
時間:10:00から18:00まで
   金曜日は20:00まで
夜間開館の詳細は公式サイトをご覧ください。
休館:月曜
   月曜日が祝日の場合は月曜日開館し翌日休館、1月1日休館、展示替え期間
8月10日は休館、7月26日・8月30日・9月6日は開館
HP:https://mimt.jp/kokuhou12/