【21_21 DESIGN SIGHT】「ルール?展」

日常のさまざまな場面で遭遇するルールを見つめなおす

新型コロナウイルス感染症により美術館・博物館・ギャラリーなどに気軽に足を運べなくなってしまいました。

そんな状況下に負けじと感染症対策をきちんと行いながら、運営に努める施設関係者への思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけになることを考え、美術館・博物館・ギャラリーの様子を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートすることとなりました。

そのような経緯から21_21 DESIGN SIGHTにて開催中の企画展「ルール?展」を取材しました。

本展覧会では、法律家の水野 祐、コグニティブデザイナーの菅 俊一、キュレーターの田中みゆきの3名が展覧会のディレクターチームとなり、それぞれの視点を融合させて、新しいルールの見方・つくり方・使い方と、これからの展覧会のあり方をともに考えていきます。

日常のさまざまな場面で遭遇するルールの存在と影響を取り上げ、デザインによってどのようにかたちづくることができるのか多角的な視点から探り、展覧会という小さな社会のあり方に揺さぶりをかける鑑賞のルールや新たな創造のきっかけになる規制や制約の可視化、市民が社会課題の解決に取り組むシビックテックなどの仕組みづくりに着目します。

来場者同士で意見を交換してルールをつくったり、投票したことが展示に反映されたり、会場内にあるものの配置を自由に動かしたりして参加することで、社会を構成するルールづくりを体験することができます。

ルールは憲法や法律をはじめ、社会基盤となる公共インフラや公的サービス、当事者間の契約・合意、文化的背景に基づいた規則やマナー、家族や個人に無意識に根づく習慣、また自然環境の中から生まれた法則まで、多岐に渡り私たちの思考や行動様式を形成しています。

現在、それらのルールは産業や社会構造の変化、テクノロジーの進化などに伴い、大きな転換を迫られています。実態を捉えにくく形式的になりやすいものだからこそ、私たち一人ひとりが身の回りにあるルールを意識し、その存在を疑い、自分のこととして柔軟に考えることが求められているのではないでしょうか。

社会的ネットワークを構築できるサービスやウェブサイト全般を指すSNS。情報発信ツールとしての利便性はもちろん、組織内におけるコミュニケーションの活性化や、地域間における情報格差の解消につながるなど、幅広い分野で有用性が認められています。

そんな私たちの生活で欠かせないものになりつつあるSNSから、テクノロジーの進化で転換を迫られている事例を取り上げた、Whatever Inc.による作品《D.E.A.D Digitail Employment After Death》(2020年)をご紹介します。

人が死亡した場合には所有権などの財産的な権利は相続されますが、肖像権やプライバシーといった人格的な権利は相続されないとして民法896条但書に記されています。人格権に近いものを死後にも保護する裁判例や法律を持つ国家もありますが、現状では遺族の権利として認められているケースがほとんどです。

しかし、それだけで十分なのかどうかを問いかけてくれる本作品は、死後のルールメイキングに関する議論を始めるきっかけを与えてくれます。

多様なルールと交わり、日々更新し続けることで、私たちの社会とその未来の可能性はよりオープンで豊かな方へ押し広げられるのではないでしょうか。

私たち一人ひとりが未来をかたちづくる一員として、ルールとポジティブに向き合う力を養える本展覧会に足を運んでみてはいかがでしょうか。

取材・執筆・撮影:新 麻記子

ルール?展
会期:2021年7月2日~11月28日
会場:21_21 DESIGN SIGHT
住所:東京都港区赤坂9-7-6(東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン)
電話番号:03-3475-2121
開館時間:11:00~17:00(土日祝〜18:00)
※入場は閉館30分前まで。最新情報は公式ウェブサイトにて要確認
休館日:火(11月23日は開館)
料金:一般 1200円 / 大学生 800円 / 高校生 500円 / 中学生以下無料
HP:http://www.2121designsight.jp/program/rule/