【東京都庭園美術館】キューガーデン 英国王室が愛した花々 シャーロット王妃とボタニカルアート

英国王室が愛した植物の絵画や陶器 美しいボタニカルアートを展示!

まだまだ新型コロナウイルス感染症により、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、気軽に訪れられない日々が続いています。

しかし、そんな状況下に負けじとオンラインチケットで密を防ぎ、検温や消毒など徹底した感染症対策を行いながら、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべく、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。

今回は、東京都庭園美術館にて開催されている『​​キューガーデン 英国王室が愛した花々 シャーロット王妃とボタニカルアート』をご紹介します。

ユネスコ世界遺産に登録されている英国王立植物園「キューガーデン」は、22万点を超えるボタニカルアートを所蔵している世界最大級の植物園です。

同園の歴史は古く、1759年にジョージ3世の母親であるオーガスタ皇太子妃によってキューガーデンが設立され、ジョージ3世とシャーロット王妃の時代にはその規模を拡張し、世界各地から様々な植物を収集していきました。

本展では、18~19世紀に制作されたキューガーデン所蔵の貴重なボタニカルアートコレクション約100点ほか、シャーロット王妃お気に入りのクイーンズウェアなど王室御用達となった数々の陶磁器を展示。

時代が大きく変革していく中で、英国において自然科学や植物画がどのように発展し、どのような歴史的背景を歩んできたのか、啓蒙思想や産業革命を背景とした英国における自然科学の発展やキューガーデンの歴史を紐解きます。

精緻な描写による科学的視点と、目を奪われるような美しさが共存する、ボタニカルアート。

『ボタニカルアート』とは「植物学的な芸術」という意味で、植物学の立場から品種の特徴が正確に描かれている絵画を示し、ゴッホの《ひまわり》のような心象を投影した草花を描いた絵画などとは異なります。

科学と芸術の融合から生まれた『ボタニカルアート』の起源は、有用な薬草を見分けるために、植物を調べて図化したことで、植物学の領域内で発展したものでした。

その後、医学・薬学の観点から制作されましたが、写本から写本へと写されてゆく過程において、医学的な実用書から美術的な鑑賞用のアートへと変化。

宮廷を中心とした貴族文化が栄えた17世紀~18世紀のヨーロッパでは、貴族や裕福な市民の間で植物への関心が高く、植物庭園やボタニカルアートの鑑賞が人気となり、この時代には多くの植物画家が活躍し、ボタニカルアートを愛好する人が増えていきました。

会場では、イギリスの国花であるバラをはじめ、チューリップ、ボタン、ランなどの植物だけでなく、イギリスの植民地から採取した大変珍しい植物のボタニカルアートも展示。

分類学の父リンネと親交のあったゲオルク・エーレットや、キューガーデン最初の専属画家フランツ・バウアーなどの、歴史に名を残す植物画家の貴重な水彩原画のほかにも、植物の背景に風景が描かれた特徴的な図版『フローラの神殿』や、現在もキューガーデンが刊行を続ける学術誌『カーティス・ボタニカル・マガジン』といった、ボタニカルアートの歴史を語る上で欠かせない出版物もご覧になれます。

また、当時の建築・工芸のデザインの主流であるジョージアン様式の部屋を部分的に再現し、ボタニカルアートを愛した人びとの暮らしなども紹介。

さらに、会場である東京都庭園美術館の庭園や隣接する国立科学博物館附属自然教育園には、ボタニカルアートで描かれている植物が実在しています。アートとしての草花を鑑賞した後には、リアルの草花を散策してみるのも楽しみ方のひとつですね。

近年、植物はガーデニングをはじめ、ファッション、インテリア、フード、美容など、ライフスタイルに浸透していますが、なかなか植物と人間との関係を考える機会がありません。

しかし、改めて目を向けることで日々の生活に彩りを与えるきっかけとなる、本展覧会に足を運んでみてはいかがでしょうか。

取材・撮影・文:新麻記子

【情報】
キューガーデン 英国王室が愛した花々 シャーロット王妃とボタニカルアート
会期:2021年9月18日(土)〜2021年11月28日(日)
会場:東京都庭園美術館
住所:東京都港区白金台5-21-9
時間:10:00〜18:00 (最終入場時間 17:30)
休館:月曜日
9月21日(火)
※ただし9月20日(月・祝)は開館
公式サイト:https://www.teien-art-museum.ne.jp/