【21_21 DESIGN SIGHT】「2121年 Futures In-Sight」展

100年後の未来を思い描きながら
「問い」と「インサイト (視座・洞察)」を考えてみよう。

新型コロナウイルス感染症の変異株により、日々増加傾向にある感染者数に伴いまして、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、気軽に訪れられない日々が続いています。

現在、新しい生活様式のもとオンラインチケットで密を防ぎ、検温や消毒など徹底した感染症対策を行いながら、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべ く、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。

そのような経緯から、21_21 DESIGN SIGHTにて開催されている「2121年 Futures In-Sight」展をご紹介します。

「21_21 DESIGN SIGHT」という名称は、英語で優れた視力のことを「20/20 Vision (Sight)」と表現することから、先を見通す場としての役割とともに、「未来」に向けた想いを込めて、名付けられたそうです。

そんな当館にて開催中の本展覧会では、100年後の世界に想いを巡らせるところから、本展の構想がスタートしました。

「Future Compass」(未来の羅針盤)というツールをきっかけに、未来を思い描くだけではなく、現在を生きる私たちの所作や行為、創造物に内在する未来への視座を、多様な参加者たちとともに可視化していくことを試みています。

身近な存在からまだ見ぬ他者、それらをめぐるさまざまな時間軸へ思いを馳せる中から生まれた未来にまつわる多彩な視座は、会場に集結して複数形の未来を形成していくものとなるでしょう。

古くから人々は、明日の天気から国の繁栄まで、まだ見ぬ先の世界を捉えるために、さまざまな予言や予測を行ってきました。

近年では、情報解析や計測に関するテクノロジーの著しい進歩に伴い、より精緻な予測が可能になっているように感じられるかもしれませんが、そもそも「未来」は過去の延長線上にだけ存在するわけではありません。

現在、私たちは世界的なパンデミックを体験し、生活様式やコミュニティのあり方、コミュニケーションの手法などにはじまり、物事の考え方や価値観など、ありとあらゆるものが劇的に変化していく様子を目の当たりにしています。

そのことは「未来」がいかに未知なるものであるかを私たちに強く実感させることとなりました。

会場では、デザイナーやアーティスト、思想家、エンジニア、研究者などが「Future Compass」(未来の羅針盤)から選んだ「言葉」、導き出した「問い」、創造物にした「インサイト(視座・洞察)」を展示しています。

参加作家が自身の専門領域や生活哲学に基づきながら形にしたものには真に迫る勢いがあり、遠くもない未来に対しての考察を通じ、思わずドキッとするような不安を抱いてしまうものもあれば、より生活が豊かになるためのものもあるので、ご覧になりながら想像を膨らませてみてはいかがでしょうか。

きっと、それらを未来を思い描きながら作品鑑賞することで、会場を訪れた現在を生きる私たちの所作や行為が変わり、また多彩で多様な未来が展開されるきっかけとなることでしょう。

ぜひ本展の主旋律となる「Future Compass」の展示とともに、「未来」を考える際に必要となるさまざまなコンテンツを楽しんでみてください。

取材・写真・文:新麻記子

【情報】
「2121年 Futures In-Sight」展
会期:2021年12月21日(火)~2022年5月8日(日)
会場:21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2
時間:10:00~19:00(入場は18:30まで)
休館日:火曜日(12月21日、5月3日は開館)、年末年始(12月28日~1月4日)
ホームページ:http://www.2121designsight.jp/program/2121/