【中之島香雪美術館】企画展「中国の漆器」

貴重な中国の漆器コレクションに注目!

展示風景

新型コロナウイルス感染症の変異株により、日々増加傾向にある感染者数に伴いまして、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、気軽に訪れられない日々が続いています。

現在、新しい生活様式のもとオンラインチケットで密を防ぎ、検温や消毒など徹底した感染症対策を行いながら、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべ く、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。

そのような経緯から、中之島香雪美術館にて開催されている企画展「中国の漆器」をご紹介します。

館内ビル入口前

朝日新聞社の創業者である村山龍平が収集した、日本と東アジアの古い時代の美術品を所蔵する、中之島香雪美術館。

書跡、茶道具、刀剣・武具、仏教美術、近世絵画など多岐にわたる収集品を紹介し、あわせて日本の文化財を守ろうとした村山龍平の想いが詰まっている美術館です。

館内では、多彩な展示に対応する企画展示室をはじめ、村山氏が辿った歩みがわかる村山龍平記念室、そして国指定重要文化財「旧村山家住宅」に建つ茶室「玄庵」の再現展示が楽しめます。

そんな中之島香雪美術館にて開催中の本展覧会では、貴重なコレクションより中国の漆器の魅力に迫ります。

村山龍平記念室入口

茶室「玄庵」の再現展示

古くは漢代を中心として漆絵の技法が全盛を誇りましたが、唐代以降に漆を幾重にも塗り重ねることで厚みを出し、漆の層から細密な文様を彫り出す「彫漆(ちょうしつ)」の技法が登場し、宋代以降もっとも一般的な技法として広く行われました。

中国で漆器は生活品や装飾品として先史より作られ使われ、日本の伝統的な漆器では見られない多彩な技法が用いられています。

楼閣人物図堆朱輪花盆 明時代 永楽年間(1403-24) 個人蔵

この彫漆技法で飾られた盆や椀は、最表層が赤色のものを堆朱(ついしゅ)、黒色のものを堆黒(ついこく)の名称で珍重されました。

さらに複数の色漆を塗り重ねて彫る深さを変えることで、さまざまな色を出す「彫彩漆(ちょうさいしつ)」、なかでも花を赤色に、葉を緑色に、彫り表すものは「紅花緑葉(こうかりょうよく)」と称されています。

さらに、薄く切った貝片を用いて文様を作り出す螺鈿(らでん)、線彫りした区画内を色漆で埋めて文様をあらわす存星(ぞんせい)、漆の表面に金箔を貼る箔絵(はくえ)や動物の骨を嵌め込む嵌骨(がんこつ)といったさまざまな技法も考案され、中国漆工芸の世界はますます豊かなものとなっていきました。

手前 梔子尾長鳥文堆黒盆 元時代 14世紀 個人蔵

楼閣騎馬人物図螺鈿盆 明時代 15〜16世紀 香雪美術館

そんな中国の漆器は古くから日本へもたらされ、正倉院の宝物類からも明らかなように、奈良時代からの舶載例として知られ、時代を超えて大切に伝えられ、珍貴な品として重宝されています。

平安時代後期から室町時代には、禅宗寺院において什器や贈答品として用いられ、次第に武家へも広まって会所などの集まりの場で飾られました。

その後、江戸時代には茶の湯の世界で多く用いられるようになったそうです。

展示風景

本展は、これまであまり紹介されてこなかった香雪美術館の所蔵品を中心に、中国の漆器の魅力を広く知っていただく機会です。

中国の漆器は保存が難しいといった理由もあり、世界的に見てもまとまったコレクションはごくわずか。

そうした中で、今回公開することができているコレクションは、その質と量はもちろんのこと、用いられた技法の多様さでも、きっと屈指のものと言えるでしょう。

ぜひ、この貴重な機会を逃すことなく、本展に足を運んでみてはいかがでしょうか。

取材・撮影・文:新麻記子

【情報】
企画展「中国の漆器」
会場:中之島香雪美術館
会期:2021年12月11日(土)〜2022年2月23日(水・祝)
時間:10:00〜17:00 (最終入場時間 16:30)
   夜間特別開館は2月17日(木)10:00~19:30(最終入場時間 19:00)
休館:月曜日 
   祝日の場合は翌火曜日
HP:https://www.kosetsu-museum.or.jp/nakanoshima/