【国立工芸館】めぐるアール・ヌーヴォー展 モードのなかの日本工芸とデザイン

十人十色のアール・ヌーヴォー表現が大集合

新型コロナウイルス感染症の変異株により、日々増加傾向にある感染者数に伴いまして、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、気軽に訪れられない日々が続いています。

現在、新しい生活様式のもとオンラインチケットで密を防ぎ、検温や消毒など徹底した感染症対策を行いながら、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべ く、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。

そのような経緯から、国立工芸館にて開催している『めぐるアール・ヌーヴォー展 モードのなかの日本工芸とデザイン』をご紹介します。

東京国立近代美術館工芸館は、2020年10月より国立工芸館として、東京都の皇居のほとり北の丸から、石川県金沢市の本多の森に移転し、新たなスタートを切りました。

その建物は明治時代に建てられた、かつて旧陸軍の庁舎だった旧陸軍第九師団司令部庁舎(1898年建造)と、かつて将校の社交場だった旧陸軍金沢偕行社(1909年建造)を、石川県と金沢市が移築・整備し、展示棟と管理棟として活用。

建物の窓枠などの外観は、建設当時の色が再現されており、往時の姿を伝えているそうです。

そんな国立工芸館にて開催中の『めぐるアール・ヌーヴォー展 モードのなかの日本工芸とデザイン』では、アール・ヌーヴォーの時代を代表するアーティストの作品とともに、アール・ヌーヴォーの表現を取り入れた日本人アーティストの作品を展示し、同時代の日本の工芸やデザインの展開をご紹介します。

フランス語で「新しい芸術」を意味するアール・ヌーヴォーは、19世紀末から20世紀初頭にかけて広くヨーロッパで流行しました。

過去の装飾様式から脱却して自然の形態へと立ち返り、植物や女性をモチーフとして想像力の赴くままに展開させ、流麗で装飾性豊かな表現に大きな特色があります。

アール・ヌーヴォーの源泉にはジャポニスム、すなわち日本美術からの影響があったのですが、それがいわば逆流現象を起こして日本のアーティストに作用し、最先端の芸術運動を意味するとともに、自らの姿を映し出す鏡となりました。

会場では、1860年代から1920年代まで、ジャポニスムからアール・ヌーヴォーにいたるヨーロッパの装飾芸術の流れと、アール・ヌーヴォーを受容した日本美術を、代表的な作家の作品で概観しています。

アール・ヌーヴォー時代を代表するアンリ・ヴァン・ド・ヴェルド、アルフォンス・ミュシャ、エミール・ガレから、アール・ヌーヴォー風の表現を取り入れた杉浦非水、浅井忠、神坂雪佳、初代宮川香山、板谷波山まで。

建築や家具をはじめ、ジュエリーやガラス、イラストや絵画、陶芸や漆器などの工芸など、十人十色のアール・ヌーヴォー表現が大集合しています。

19世紀後半のヨーロッパの人々は、なぜそれほど日本美術に熱狂したのでしょうか。

その理由のひとつは、当時の西洋の価値観ではとらえきれない日本人の自然観が、美術にも率直に表れていたことにあります。

そして、日本の装飾芸術の誇るべき特質として、自然の中で季節を感じる暮らしから、身近な草花や小さな虫に寄り添う姿は、ジャポニスムやアール・ヌーヴォーの時代に限ったものではないことがわかります。


そこに通底する自然への眼差しが現代まで引き継がれている様相を多彩な作品で辿ることができる本展覧会。

今回、東京国立近代美術館のコレクションに京都国立近代美術館が所蔵する関連作品も加え、アール・ヌーヴォーをさまざまな視点で考えます。

異なる文化が出会い、巡り巡って互いに響き合うダイナミズムや、優れた工芸品を生み出す日本の繊細な感性に触れることができる本展覧会に、足を運んでみてはいかがでしょうか。

取材・撮影:文:新麻記子

【情報】
めぐるアール・ヌーヴォー展 モードのなかの日本工芸とデザイン
会場:国立工芸館(石川県金沢市出羽町3-2)
会期:2021年12月25日(土)- 2022年3月21日(月・祝)
時間:9:30 – 17:30
   ※入館時間は閉館30分前まで
休館日:月曜日(3月21日は開館)
ホームページ:https://www.momat.go.jp/cg/
チケット:新型コロナウイルス感染症予防対策のため、事前予約制(日時指定券)を導入します。
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