【上野の森美術館】『VOCA展 2022 現代美術の展望 ─新しい平面の作家たち 』

豊かな絵画体験が堪能できる、新人画家にとっての登竜門『VOCA展』

新型コロナウイルス感染症の変異株により、日々増加傾向にある感染者数に伴いまして、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、気軽に訪れられない日々が続いています。

現在、新しい生活様式のもとオンラインチケットで密を防ぎ、検温や消毒など徹底した感染症対策を行いながら、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべ く、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。

そのような経緯から、上野の森美術館にて開催している『VOCA展 2022 現代美術の展望 ─新しい平面の作家たち』をご紹介します。

『VOCA展』とは、1994年より毎年春期に開催している「平面」作品を対象とした展覧会です。

日頃から公平な立場で作家たちと接している美術館学芸員、ジャーナリスト、研究者などが40歳以下の若手作家1名(組)を推薦し、その作家に抽象、具象、素材は問わない平面作品の新作出品を依頼します。

こうしたシステムにより、全国各地で活躍する優れた未知の才能を紹介しつつ、平面の領域で国際的にも通用するような将来性のある若手作家の支援を目的にしています。

数々の作品のなかから選考委員会が、VOCA賞、VOCA奨励賞、VOCA佳作賞を授賞。(※大原美術館賞は、館の代表者がVOCA賞以外から選定)

このうちVOCA賞は、第一生命保険株式会社に買い上げられ、同本社の1階ロビーで公開されるほか、全入賞者に対して第一生命ギャラリーでの個展の機会が提供されています。

大原美術館賞 小森紀綱『絵鑑賞』

今年の『VOCA展 2022』では33組によるアーティストの作品がご覧になれます。

その中から、今年のVOCA賞は川内理香子さんに決定したほか、VOCA奨励賞には鎌田友介さん、近藤亜樹さん、VOCA佳作賞には谷澤紗和子さん、堀江栞さん、大原美術館賞には小森紀綱さんが選ばれました。

その中でも、VOCA賞に選ばれた川内理香子さんの作品『Raining Forest』は、厚塗り絵具の層上に線が刻まれ、心の中の内なるエネルギーが表にあらわれ、圧倒的な存在感が示されています。

絵具層から、植物、動物、内臓、文字が、自然に浮かび上がってきているように見え、ただ作品を見るだけではなく、読み解く楽しさに満ち溢れていました。

VOCA賞 川内理香子 『Raining Forest』

その他、VOCA奨励賞・鎌田友介さんの作品『Japanese houses (Taiwan/Brazil/Korea/U.S./Japan)』は、ひとつの平面に海外で積み重ねてきたリサーチの成果をまとめ上げ、歴史を読み直す透徹した眼差しが印象的でした。

そして、同じくVOCA奨励賞・近藤亜樹さんの作品『ぼく ここにいるよ』は、命をめぐる物語性の豊かさが目を惹き、絵画の可能性を拓くひとつの道を示したとも言えるでしょう。

このように、VOCA展の特徴は平面を200×400×25cm以内の規定の中に作家が思考を巡らせる一方で、選考作品はジャンルや技法の多彩さが感じられ、実にバラエティに富んでいることです。

ぜひ、そんな面白い作品に出会える新人画家にとっての登竜門の本展覧会に足を運んでみてください。

VOCA奨励賞・近藤亜樹の作品『ぼく ここにいるよ』

取材・撮影・文:新麻記子

【情報】
『VOCA展 2022 現代美術の展望 ─新しい平面の作家たち 』
会期:2022年3月11日(金)〜3月30日(水)
会場:上野の森美術館
時間:10:00〜17:00
   *最終入場閉館30分前まで
公式サイト:https://www.ueno-mori.org/exhibitions/voca/2022/