【Bunkamura ザ・ミュージアム】『マリー・クワント展』

ミニスカートブームを生んだ革新的デザイナー 日本初の回顧展

新型コロナウイルス感染症の変異株により、日々増加傾向にある感染者数に伴いまして、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、気軽に訪れられない日々が続いています。

現在、新しい生活様式のもと検温や消毒など徹底した感染症対策を行いながら、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべ く、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。

そのような経緯から Bunkamura ザ・ミュージアムにて開催している『マリー・クワント展』をご紹介します。

今では当たり前となっているミニスカートやタイツなどのアイテムを広く浸透させ、若い女性のための革新的なスタイルを打ち出したファッションデザイナーのマリー・クワント。

1950年代のロンドンのファッションシーンに彗星の如く登場してミニスカートを広め、1960年代のロンドンの若者文化である「スウィンギング・ロンドン」を牽引し、世界中を熱狂させました。

日本ではデイジーマークのコスメラインで広く知られており、若い女性のファッションに革命を起こすとともに、世界中にその商品を広めた女性起業家のパイオニアとして知られています。

そんな彼女の功績を示すアイテムとともに輝かしい業績を辿る本展覧会では、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)から来日する約100点の衣服を中心に、小物、写真、映像などを展示しています。

会場では、今日ではファッションスタイルとして当たり前となっているミニスカートやタイツはもちろん、コスメティックやインテリアまでライフスタイルに及んだ個性豊かなクリエーションはもちろん、

量産化時代の波に乗り世界的なブランド展開、斬新なビジネス手法を次々と採用していき、自らがファッションアイコンとなり、メディアに注目をあびた広報戦略からビジネスの先見性もご紹介しています。

特に筆者が注目をしたのは彼女のビジネスシーンとパイオニアとしての側面です。

マリー・クワントは伴侶であるアレキサンダー・プランケット・グリーンや実業家のアーチー・マクネアら有能なビジネスパートナーに支えられ、アメリカやオーストラリア、アジアに事業を拡大しました。

ブランドロゴの先駆けとなるデイジーマークの商標登録、現地企業に生産・販売を任せるライセンス契約、既製服の量産体制を確立していくなど、ビジネスの施策に先見性を見て取ることができます。

また、PVC(ポリ塩化ビニール)によるレインウェアやジャージー素材のドレスをヒットさせるなど、新素材を最大限に活用し、消費者の選択肢を広げていきました。

また、マリー・クワントは女性の権利を求める活動が盛んになり始めた当時、新しい女性のあり方を示しました。

女性にはふさわしくないとされていたパンツやジーンズをラインナップに加え、男性用スーツや軍服で用いられる生地を女性のカジュアルウェアに仕立て、ジェンダーや階級意識などのステレオタイプに果敢に立ち向かいました。

本展覧会は、新しいスタイルを生み出していったファションデザイナーとしての顔とともに、成功への扉を次々と開いた起業家としての歩みを濃厚に描き出していおり、女性だけでなく男性、いや誰しもが足を運び、多くを吸収して学ぶことのできる展覧会だと思います。

マリー・クワントの出身地のイギリスでは約40万人が訪れた注目の世界巡回展であり、日本では初の回顧展となる本展覧会にぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

取材・撮影・文:新麻記子

【情報】
『マリー・クワント展』
会期:11月26日(土)〜2023年1月29日(日)
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
休館日:1月1日(日・祝)
開館時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)
毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで) 、12月31日(土)は18:00まで
※状況により、会期・開館時間などが変更になる可能性あり
公式ホームページ:https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/22_maryquant/