【東京都庭園美術館】交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー

国やジャンルを越えた共鳴から生まれる、いくつもの「モダン」を体験しよう!

新型コロナウイルス感染症の変異株により、日々増加傾向にある感染者数に伴いまして、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、気軽に訪れられない日々が続いています。

現在、新しい生活様式のもと検温や消毒など徹底した感染症対策を行いながら、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべ く、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。

そのような経緯から東京都庭園美術館にて開催中の『交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー』をご紹介します。

1910年代から30年代は、ヨーロッパを中心に日本を含む世界各地で、さまざまなモダンの形があらわれた時代でした。

機能主義に基づく「モダニズム」は、今尚当時の中心的な動向とみなされていますが、その一方で大衆消費社会が進展したこの時代は、常に新しくあるために装飾することに価値が置かれた、儚き「モダニティ」の時代でもありました。

実際、この対立的に捉えられることの多い二つの「モダン」は、いくつものモダンの形をうちに含みながら、それらは複雑に絡み合い濃密な時代を作り上げていったのです。

当時の作家たちは、時間差なく情報を共有し、国やジャンルを越えて同期し合い、その範囲は、絵画、彫刻から、家具、食器、洋服、さらにそれらを収める建築や都市まで、いわば私たちの生活空間や身体活動全般におよんでいます。

生活と芸術を一致させようと総合芸術の実践を掲げたウィーン工房は、フランスのファッションデザイナーであるポール・ポワレと刺激し合い、一方で室内装飾や建築を手がけたロベール・マレ=ステヴァンなど同国のモダニストにも大きな影響を与えました。

ウィーン工房の生活全般への眼差しは、日本の森谷延雄や斎藤佳三にも共有されるものです。

同時性絵画で知られるソニア・ドローネーはファッションの仕事に専心し、建築や家具デザインを手がけたルネ・エルブストらモダニストは都市を彩るショーウィンドウデザインに大きな関心を払いました。

そして、ドイツのバウハウスでは女性作家が織物に新たな光を当て、また同校を離れた作家たちが、ブルク・ギービッヒェンシュタイン美術工芸学校を舞台に応用芸術教育に取り組むことになります。

1914年に勃発した人類史上初の世界大戦が象徴するように、この時代の最大の出来事は世界が一気に同期したということでした。
そこにはまるで平和への切なる願いが、アートやデザインを通じて繋がり、相互理解への道を模索しながら、努めるようにと訴えかけているように感じます。

本展ではおよそ400点の作品や資料をもとに、急速に変化する社会の中で作家たちがときに交わり、ポリフォニーのように共鳴しながら、探求したいくつもの「モダン」の形を紹介しています。

国やジャンルを越えた共鳴から生まれる、いくつもの「モダン」の形を、ぜひ会場を巡りながら体感してみてはいかがでしょうか。

取材・撮影・文:新麻記子

【情報】
交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー
会期:2022年12月17日(土)–2023年3月5日(日)
会場:東京都庭園美術館
休館:毎週月曜日(ただし1/9は開館)、年末年始(12/28-1/4)、1/10
開館時間:10:00–18:00(入館は閉館の30分前まで)
ホームページ:https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/221217-230305_ModernSynchronized.html