【森美術館】森美術館開館20周年記念展「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」

現代アートは未知の世界との出会い!

ヤン・ヘギュ 展示風景:「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」 森美術館(東京)2023 年

2020年、猛威を振るった新型コロナウイルス感染症により、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、なかなか訪れられない日々が続きました。

しかし、新しい生活様式のもと事前予約をはじめ、検温や消毒など徹底した感染症対策を行い、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべく、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。

そのような経緯から、9月24日(日)まで森美術館にて開催中の森美術館開館20周年記念展「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」をご紹介したいと思います。

1990年代以降、現代アートは世界の多様な歴史や文化的観点から考えられるようになりました。

それは学校の授業で考える図画工作や美術といった枠組みを遙かに越えて、「国語」、「算数」、「理科」、「社会」など、あらゆる科目に通底する総合的な領域ともいえるようになってきました。

それぞれの学問領域の最先端では、研究者が世界の「わからない」を探求し、歴史を掘り起こし、過去から未来に向けて新しい発見や発明を積み重ね、私たちの世界の認識をより豊かなものにしています。

現代アーティストが私たちの固定観念をクリエイティブに越えていこうとする姿勢もまた、こうした「わからない」の探求に繋がっています。

「社会」の展示風景:「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」 森美術館(東京)2023 年

「哲学」の展示風景:「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」 森美術館(東京)2023 年

本展覧会では、学校で習う教科を現代アートの入口として、見たことのない、知らなかった世界に多様な観点から出会う試みです。

展覧会のセクションでは、現代アートを美術や図画工作といった教科の枠組みから解き放ち、「国語」、「社会」、「哲学」、「算数」、「理科」、「音楽」、「体育」、「総合」といった8つの科目別のセクションで紹介しています。

実際、作品は複数の科目や領域に通じており、作品を通して未知の世界に出会い、まさしく美術館がすべての人々に開かれた「世界を学ぶ教室」となる展覧会です。

政治性や社会性を伴う作品が全面に出ており、世界の多様性を見せるプラットフォームでありながら、同時に人類や地球の普遍的な法則を探し、国境や政治を越えて人類の共通基盤を改めて考え、多様性と普遍性の2つの観点から世界を学ぶことができるような内容となっています。

宮島達男《Innumerable Life/Buddha CCIƆƆ-01》2018年 森美術館(東京)2023 年

パンデミックによる移動・輸送制限等により、世界の美術館で自館のコレクションやローカルなアーティストの活動に改めて注目する動きが見られました。また、SDGsの観点からも、作品輸送をはじめ美術館活動に要するエネルギーに関して、改めて考える好機となりました。

会場では、54組のアーティストによる約150作品を展示しており、そのうちの約90点は「森美術館コレクション」からの出品となり、森美術館のこれまでの活動の軌跡をご覧になることができます。

現在約460点ほど作品を所蔵している「森美術館コレクション」は、展覧会を機に購入したものはもちろん、90年代以降のアジア・オセアニア地域を中心とした作品の収集に取り組んでいるそうです。

また、コレクションの形成が後発的だったことに加えて、企業美術館という立ち位置はもちろん、収蔵庫問題を考えて、数を減らす代わりにクオリティーを上げるという収集方針を打ち出しています。

イー・イラン 展示風景:「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」 森美術館(東京)2023 年

「理科」の展示風景:「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」 森美術館(東京)2023 年

森美術館が開館して20年。これまで59の企画展、72の小企画展、そしてラーニングをはじめ数々の関連プログラムを行ってきました。

展覧会の入口には、これまで森美術館で展示を行ったアーティストおよびユニット名を出身地域毎に示した世界地図が登場。総勢約1,600組の名前を総覧することができます。

また展覧会の出口では、20年の活動を振り返り、これまでの総入館者数やラーニング・プログラム数などを、数字とインフォグラフィックで紹介していきます。

ぜひそちらも合わせて、これまでの歴史と今、これからの未来に、思いを馳せながら、森美術館での作品鑑賞をお楽しみください。

取材・撮影・文:新麻記子

【情報】
森美術館開館20周年記念展「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」
会期:2023年4月19日(水)~ 9月24日(日)
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
開館時間:10:00~22:00
会期中無休
※会期中の火曜日は17:00まで
※ただし8.15(火)は22:00まで
※最終入館は閉館時間の30分前まで
ホームページ:https://www.mori.art.museum/jp