【I’Museum Center(市原歴史博物館)】「上総、そして市原へ―昔と今をつなぐ旅―」

展示風景(常設展示室)

2020年、猛威を振るった新型コロナウイルス感染症により、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、なかなか訪れられない日々が続きました。

しかし、新しい生活様式のもと事前予約をはじめ、検温や消毒など徹底した感染症対策を行い、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべく、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。

そのような経緯からI’Museum Center(市原歴史博物館)にて開催している「上総、そして市原へ―昔と今をつなぐ旅―」をご紹介したいと思います。

I’Museum Center(市原歴史博物館)とは?

I’Museum Center(市原歴史博物館)外観

「I’Museum Center(市原歴史博物館)」は、昨年11月に千葉県・市原市内の歴史遺産の価値や魅力を伝えるため、先人たちによって培われてきた貴重な歴史・文化や交流を支える拠点施設として開館しました。

いちはらは旧石器時代(約35000年前)からの歴史があり、悠久の歴史を積み重ねてきた地です。

I’Museum Center(市原歴史博物館)では、市内に点在する歴史遺産を「歴史のストーリー」として整理し、歴史の歩みを展示するだけでなく、さまざまな体験学習を通じて、分かりやすく伝えています。

本館では、市内に点在する歴史遺産をストーリー化し、来場者に分かりやすく掲示するとともに、市内の歴史遺産を巡るさまざまな見学ルートを整備してご紹介しています。

市内全域をフィールドミュージアム(屋根のない博物館)とし、「歴史をつなぐ」取り組みを行うことで、市内の歴史遺産の価値を高め、郷土への誇りと愛着を育んでいます。

「上総、そして市原へ―昔と今をつなぐ旅―」について

展示風景(灰釉花文浄瓶)

市原市の各時代の歴史は、東京湾と養老川との地理的・風土的関わりが密接にみられることから、「東京湾と養老川が織りなす市原の歴史への旅」を基本テーマとし、各展示へとつながる構成となっています。

常設展示では古代から近現代までの歴史を、市内で発掘された遺物や資料のみで表現し、6つの基本テーマのもと定期的に展示替えを行いながら構成しています。

見どころ①約35000年前の痕跡からスタート

展示風景(貝塚出土の貝や骨)

市原市内には約35000年前から先人たちによって培われてきた貴重な歴史遺産が数多く残されています。

その中でも、縄文時代の暮らしの豊かさがわかる貝塚は、全国に2443箇所ありますが、千葉県はそのうちの約3割が分布する全国一の貝塚密集地帯なのだそう。

会場の「歴史のストーリー」の冒頭では、その様子がわかる貝塚の剥ぎ取り断面だけでなく、そこから知恵と工夫から生み出された道具や、多彩な食材に恵まれた食生活がわかる展示があります。

ぜひ期待を胸にこれからはじまる長い時を経て、現代まで数多く残された歴史遺産を、ご覧になってみてください。

見どころ②いちはらの至宝「王賜」銘鉄剣の展示

展示風景(「王賜」銘鉄剣)

会場では、5世紀に造られた「稲荷台1号墳(山田橋)」から出土した実物の鉄剣を展示しています。

鉄剣は長さ約73cmほどに復元でき、剣の持ち手寄りの部分に、「王賜」ではじまる銀象眼の銘文が発見されました。当時のヤマト王権の大王が古墳の被葬者に鉄剣を授けたことを表現したものと考えられます。

また、発掘調査で出土した古墳時代の銘文入りの刀剣は全国でも8例しかなく、とても貴重な鉄剣を360度じっくり観察することができます。合わせて、鉄剣の意義や王が誰なのかも紹介しています。

見どころ③五大力船の舵

展示風景(民族展示室)

「五大力船」は、江戸時代から昭和初期まで江戸東京との間で活躍した海川両用の貨客船です。船の長さは最大20mに及び、舵も3.5mもあり迫力があります。

会場では、五大力船の舵としては現存する唯一の資料が展示されており、とても貴重なのでぜひご覧になってみてください。

見どころ④歴史体験館

木挽き体験(歴史体験館)

「I’Museum Center(市原歴史博物館)」 に隣接する「歴史体験館」では、市内の発掘現場、竪穴建物、古墳、納屋風建物を再現しています。

また、そちらでは実際の遺物を発掘する「発掘体験」をはじめ、古墳時代の暮らしを体験できる「古墳時代の生活体験」、「古代衣装体験」、昔の生活道具や農具を使って遊ぶ「少し昔のくらし体験」など、来場者に向けたさまざまな体験プログラムが用意されています。

会場にある「納屋風建物」や「竪穴建物」は、左官の技術を使った土壁塗りや、建物に使用する木材の加工技術など、市民とのワークショップを通して開館前に作成したそうです。

見どころ⑤市民と作り上げた市内の歴史フィールドマップ

展示風景(フィールドガイダンス)

館内のエントランスには市原市内の歴史遺産をまとめた大きなフィールドマップを展示しています。

引き出しには国分寺台をはじめ市内の歴史スポットやそれらを巡る散策コースなどが紹介されており、実際にスポットを訪れるとQRコードの看板があるので、そちらを読み込むとさらに詳しい情報を知ることができます。

市内の歴史フィールドマップは、市民の協力を得てつくられており、今後もさまざまなスポットを増やしていくそうです。

最後に

展示風景(イノシシ形土製品)

「I’Museum Center(市原歴史博物館)」は、本館を拠点に市民とともに博物館ならびに市原市の歴史を作り上げています。

そして、人と人、地域と地域を結び付ける取り組みを通して、地域の活性化や歴史遺産を支える人づくりを進めており、歴史博物館の在り方として、とても面白いと感じました。

今後も、「I’Museum Center(市原歴史博物館)」が作り上げていく企画展及び、さまざまな体験プログラムやフィールドマップがどのように展開されていくのか楽しみですね。

ぜひ、「I’Museum Center(市原歴史博物館)」に足を運んでみてはいかがでしょうか。

取材・撮影・文:新麻記子

【情報】
I’Museum Center(市原歴史博物館)
開館時間:9:00~17:00
休館日:月曜日(ただし祝日の場合、翌平日)・年末年始
場所:千葉県市原市能満1489
観覧料:一般300円 高校生200円 中学生以下無料団体(20人以上)は各100円引き
問い合わせ先:0436-41-9344
HP:https://www.imuseum.jp/