【横浜・そごう美術館】『アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで』

会場入口

2020年、猛威を振るった新型コロナウイルス感染症により、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、なかなか訪れられない日々が続きました。

しかし、新しい生活様式のもと事前予約をはじめ、検温や消毒など徹底した感染症対策を行い、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべく、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。

そのような経緯から横浜・そごう美術館にて開催される『アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで』をご紹介したいと思います。

本展覧会について

展示風景:写真撮影可能エリア

19世紀後半にイギリスで興ったアーツ・アンド・クラフツ運動は、産業革命以降急速に失われつつあった手仕事による制作活動を取り戻すこと、さらには、生活と芸術の一体化することを目指しました。

中心人物となったウィリアム・モリス(1834-1896)の思想と実践は、同時代の作家に広く受け入れられ、イギリス全体、そして世界各地へと広まります。アメリカでは、建築家フランク・ロイド・ライト(1867-1959)らも参加し、運動は新たな展開を見せました。

展示風景:手前ウィリアム・モリス《格子垣》1864年

手仕事の復興を目指したアーツ・アンド・クラフツ運動は、美術や工芸、建築だけにとどまらず、産業や人々の生活文化にも影響を与え、その思想は現代の日本にも息づいています。

本展では、各地の歴史や文化を反映し発展したアーツ・アンド・クラフツ運動の歩みを、テキスタイルや壁紙・家具・金工など、約170点の作品を通じて紹介します。

そもそも、アーツ・アンド・クラフツ運動って?

展示風景

アーツ・アンド・クラフツ(芸術と工芸)運動とは、19世紀後半のイギリスで興った造形芸術の運動です。

19世紀後半、イギリスで興った産業革命は大量生産により安価な商品の製造が可能となりました。しかし、誰にでも手に取りやすいというメリットの反面、デザイン性に欠けた粗悪品が世に溢れてしまい、手仕事による制作活動は急速に失われつつありました。

展示風景

そんな世の中の流れを危惧したイギリスの思想家兼デザイナーであるウィリアム・モリス主導のもと、職人らの手仕事による制作活動を取り戻し、生活と芸術の一体化を目指した、機能的な中世の手工業的プロダクトへの有り様へ回帰しようという運動が生まれました。

この運動は19世紀末から20世紀初頭にかけて、モダニズムによって鎮火していきますが、ヨーロッパ諸国をはじめ、東アジア、北米、また日本の民藝運動にも影響を及ぼし、のちに興るアール・ヌーヴォーへ大きな影響を及ぼし、現代においてもその思想は現代においても手仕事を愛する人々の心に残っています。

運動の中心人物となったウィリアム・モリスとは?

展示風景 ウィリアム・モリス《いちご泥棒》1883年

19世紀イギリスにおいてアーツ・アンド・クラフツ運動の中心人物となったウィリアム・モリスは、「モダンデザインの父」と称される偉人で、芸術家だけでなく詩人、作家、思想家、活動家など多方面で活躍し、手工芸の美しさを復興し暮らしに芸術を取り入れようと試みました。

彼は、花、鳥、草木などの自然物をモチーフとしたパターン・デザイン理論の発展と実践に力を注ぎ、中世からの天然染料による染色法によるテキスタイルの制作に一層集中し、その繊細かつ深みのある風合いから唯一無二の作品を生み出しました。

会場では、モリスの多様な仕事の中から、壁紙、ファブリック、そして晩年のライフワークとなったケルムスコット・プレスなど代表作が展示されており、その中でも人気作《いちご泥棒》(1883)、《クレイ》(1884)などがご覧になれます。

アーツ・アンド・クラフツ運動の展開

展示風景

モリスの思想と実践は当時の人々に大きな影響を及ぼしました。

ウォルター・クレインやヴォイジー・ド・モーガン、アシュビーら芸術家たちは、壁紙・タイル・家具・金工など様々な分野にわたって作品を生み出しました。

また、世界各地へと広がったアーツ・アンド・クラフツ運動は、その地の文化や風土、社会情勢を反映し展開していきます。

展示風景 リバティ商会の作品より

イギリスを中心としたアーツ・アンド・クラフツ運動は、リバティ商会をはじめとする企業の活動によっても広がりを見せ、機械工業を柔軟に取り入れることで、独自の発展を遂げていきました。

会場では、ティファニー・スタジオやフランク・ロイド・ライトなどの作品を紹介し、アーツ・アンド・クラフツ運動の豊かな展開をご覧いただけます。

最後に

展示風景

19世紀後半のイギリスで興った造形芸術の運動は、美術や工芸、建築だけにとどまらず、産業や人々の生活文化にも影響を与え、手仕事を愛するすべての人々だけでなく、作品を見て心震わせる鑑賞者にも、時代を超えてその思想が息づいていることも理解できました。

ぜひ、テキスタイルや壁紙・家具・金工など、約170点もの展示作品を通じ、各地の歴史や文化を反映し発展していった、アーツ・アンド・クラフツ運動の歩みがわかる本展に足を運んでみてはいかがでしょうか。

取材・撮影・文:新麻記子

【情報】
「アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで」
会期 2023年9月16日(土)〜2023年11月5日(日)
会場 そごう美術館
住所 神奈川県横浜市西区高島2-18-1 そごう横浜店 6階 Google Map
時間 午前10時~午後8時
*入館は閉館の30分前まで。
*そごう横浜店の営業時間に準じ、変更になる場合がございます。
休館日 会期中無休
入館料 一般1,200円(1,000)円、大学・高校生1,000(800)円、中学生以下無料
*消費税含む。
*( )内は、前売および以下をご提示の方の料金です。
ホームページ:https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/