2年ぶり…待ちに待った展覧会『ボストン美術館展 芸術×力』が開催中!
新型コロナウイルス感染症の変異株により、日々増加傾向にある感染者数に伴いまして、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、気軽に訪れられない日々が続いています。
現在、新しい生活様式のもと検温や消毒など徹底した感染症対策を行いながら、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべ く、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。
そのような経緯から東京都美術館にて開催中の『ボストン美術館展 芸術×力(げいじゅつとちから)』をご紹介します。
新型コロナウイルス感染症の影響で2020年に中止となってしまった『ボストン美術館展 芸術×力』が…いよいよ2年の時を経て開催されました。
本展覧会では、エジプト、ヨーロッパ、インド、中国、日本など、古今東西のさまざまな地域で生み出された約60点の作品をご紹介するとともに、芸術作品が本来担っていた役割に焦点を当て、力とともにあった芸術の歴史を振り返ります。
古今東西の権力者たちは、その力を示し、維持するために芸術の力を利用してきました。威厳に満ちた肖像画は権力を強め、精緻に描写された物語はその力の正統性を示します。
また、美しい工芸品は宮廷を彩り、ときに外交の場で活用されてきました。一流の画家や職人につくらせた芸術品は、今も見る人々を圧倒する荘厳な輝きを放っています。
会場では、世界有数のコレクションを誇るボストン美術館からエジプトのファラオをはじめ、ヨーロッパの王侯貴族、日本の天皇や 大名などの権力者たちに関わる作品がご覧になれます。
古代エジプトのファラオや19世紀のフランス皇帝ナポレオンなど、人々を圧倒するように統治者の姿として表現された絵画や彫刻。大きさや威厳のある表情にくわえ、贅沢な衣装、装身具や紋章などにより、富や知性、徳などが示され、その力が表現されています。
また、支配者の圧倒的な力と富の表象として意味が込められている調度品は、贅を凝らして荘厳壮麗に飾り立てられた華やかなくらしを彩ります。
宮廷の建築や庭園、室内の様子が描かれた作品のほか、元ファーストレディのアクセサリーやナポレオンの最初の妻ジョセフィーヌの住まいであったマルメゾン城の食器セットなどが紹介されており、さまざまな時代や地域の宮廷のくらしをご覧いただくことができます。
また、本展ではいずれも国内に存在すれば国宝!と言われている二大絵巻、《吉備大臣入唐絵巻》と《平治物語絵巻 三条殿夜討巻》が揃って里帰りを果たしています。
遣唐使として唐に渡った吉備真備が、現地で数々の難題を吹っかけられるも、鬼となった阿倍仲麻呂の助けを借りてこれをことごとく退ける説話を生き生きと描いた《吉備大臣入唐絵巻》と、平安時代末期の上皇派と天皇派の対立を背景に起こった平治の乱をテーマに緊迫する戦いの様子を描き、合戦絵巻の最高傑作のひとつに数えられる《平治物語絵巻 三条殿夜討巻》。
《吉備大臣入唐絵巻》は全期を通して4巻揃って展示されるので、直近で絵巻をじっくりとご覧になれる大変貴重なチャンスです。
多くの権力者たちは自らも芸術をたしなみ、自国の統治や外交に役立てただけでなく、またパトロンとして優れた芸術家を支援したほか、長い歴史の中でつくられた貴重な作品を収集・継承しました。
こうして彼らによって築かれたコレクションは、今日の美術館や博物館の礎ともなっています。
私たちが美術館や博物館に足を運んで鑑賞している作品は、時の権力者が所有し、愛でていたもの…それぞれの都市で栄えた歴史や文化、古今東西の権力者に思いを馳せながらご覧になってみてください。
※全てボストン美術館所蔵
取材・撮影・文:新麻記子
【情報】
ボストン美術館展 芸術×力(げいじゅつとちから)
会期:開催中~10月2日(日)
会場:東京都美術館 企画展示室
休室日:月曜日、9月20日(火)
※ただし、8月22日(月)、29日(月)、9月12日(月)、19日(月・祝)、26日(月)は開室
開室時間:9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)
夜間開室:金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)
チケット:日時指定予約制。当日券あり(ご来場時に予定枚数が終了している場合あり)。
展覧会公式ホームページ:https://www.ntv.co.jp/boston2022/