アイティーエル株式会社では、一人でも多くの方が美術館や博物館を訪れるきっかけとなるべく、2020年7月より【ミュージアム・レポート】を開始いたしました。
困難な状況下においても美術館・博物館ではさまざまな企画や対策をおこなっていることから、全てのアートシーンに対してこれからも変わらず応援していくべく、アイティーエルも継続して情報を発信していきたいと思います。
今回は、21_21 DESIGN SIGHTにて開催中の企画展「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」をご紹介します。
未来のかけらについて
本展覧会は、先端技術や研究における先駆的な眼差しとデザインが出合うことで芽生えた、未来のかけらたちを紹介しています。
展覧会ディレクターには、幅広い工業製品のデザインや、先端技術を具現化するプロトタイプの研究を行うデザインエンジニアの山中俊治を迎えます。
山中が大学の研究室でさまざまな人々と協働し生み出してきたプロトタイプやロボット、その原点である山中のスケッチを紹介するとともに、専門領域が異なる7組のデザイナー・クリエイターと科学者・技術者のコラボレーションによる多彩な作品を展示します。
科学とデザインの実験室
未来…その言葉を聞いてあまりに壮大で漠然としており、誰もがその曖昧な輪郭を掴むことは難しいでしょう。
しかし、私たちが未来をはっきりと描くことができなくても、クリエイターたちによって生み出された「未来のかたち」を通じて、その一部にそっと触れてみることができます。
最先端のロボティクス、積層造形、構造形態学、身体拡張、バイオエンジニアリングなどの研究者と、デザイナーやアーティストたちとタッグを組んで、さまざまな未来のかたちを錬成します。
会場では、最先端の科学技術とデザインが融合し、未来に対するさまざまな可能性について思いを馳せ、より美しく、好奇心にあふれた、より魅力的な世界を想像したプロトタイプが展示されています。
多様な視点が交わり、想像力が紡がれる会場で、科学とデザインが織りなす無数の可能性と、まだ見ぬ未来の世界に向かうデザインの楽しさを体感する機会となることでしょう。
筆者一押しの『自在肢(JIZAI ARMS)』
サイボーグの概念が提唱されてから半世紀、今日、ウェアラブル技術やロボット工学・制御技術を駆使したデジタルサイボーグ「自在化身体」の研究・開発が着目されています。
さまざまな素晴らしいプロトタイプが展示されるなか、特に筆者が推したいのは山中研究室+稲見自在化身体プロジェクトによる『自在肢(JIZAI ARMS)』というプロトタイプです。
こちらは複数の自在化身体間のインタラクションを探るためにデザインされ、6つのターミナルを持つベースユニットと、着脱式ロボットアームからなるウェアラブルシステムです。
まさにマーベルコミックの代表作品の一つ『スパイダーマン』に出てくる、代表的な宿敵の一人であるドクター・オクトパスを彷彿とさせますが、日常生活において両手が埋まっていて、もう何本か手があったら助かるのに…といった場面において、4本の触手があったら便利なことこの上ない作品ですね。
最後に
終盤では、自在化身体研究をテーマに制作された遠藤麻衣子監督による短編映画『自在』の世界観が展示されています。
この映画には、研究者が設計・製作した実機が数多く登場し、それらがもたらす未知なる体験をもとに、独自の映像世界がつくられていますが、とんでもない想像を超えるSFではなく、近い未来が予期されているように感じました。
ぜひ科学とデザインが織りなす無数の可能性や、技術の面白さと美しさが同居する本展覧会を通じ、まだ見ぬ未来の世界に向かうデザインの楽しさを体感してみましょう。
取材・撮影・文:新麻記子
【情報】
企画展「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」
会期:2024年3月29日(金)- 8月12日(月・休)
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
休館日:火曜日
開館時間:10:00 – 19:00(入場は18:30まで)
ホームページ:https://www.2121designsight.jp/program/future_elements/