【渋谷区立松濤美術館】没後120年 エミール・ガレ展 奇想のガラス作家

アイティーエル株式会社では、一人でも多くの方が美術館や博物館を訪れるきっかけとなるべく、2020年7月より【ミュージアム・レポート】を開始いたしました。

困難な状況下においても美術館・博物館ではさまざまな企画や対策をおこなっていることから、全てのアートシーンに対してこれからも変わらず応援していくべく、アイティーエルも継続して情報を発信していきたいと思います。

今回は、渋谷区立松濤美術館にて開催中の『没後120年 エミール・ガレ展 奇想のガラス作家』をご紹介します。

ガラスの天才アーティストのエミール・ガレとは?

展示風景:『没後120年 エミール・ガレ展 奇想のガラス作家』(渋谷区立松濤美術館)

エミール・ガレ(1846-1904)は、19世紀末のヨーロッパで花開いた装飾芸術運動「アール・ヌーヴォー」の旗手のひとりとして知られる工芸家であり、草花、昆虫などをモティーフにした美しい曲線と鮮やかな色彩が特徴のガラス作品を数多く制作し、ガラス工芸を芸術に高めた作家です。

1846年フランス・ロレーヌ地方のナンシーに生まれたガレは、幼少の頃より詩、文学、哲学、鉱物学、植物学に深い関心を持ち、また一方では建築学や装飾美術を身につけていきました。

1867年からは父の経営するガラス工場でデザイナーとして働く傍ら、ガラス製品の基礎から様々な実践的技法を習得していきました。こうして後のガレ作品の素地となる広範な教養、独創的なデザインを実現する技術と知識が構築されていったのです。

展示風景:ガレが手がけた寄木細工の家具_エミール・ガレ《小卓(チョウ)》1900-1902年松江北掘美術館所蔵

1877年工場の経営を父から引き継いだガレは、それまでに身につけた広範な教養とガラス製作技術を背景に、それ以前のガラス工芸とは全く異なる、斬新な作品を次々に生み出してきました。

1889年と1900年のパリ万博への出品作品はグランプリを受賞し、ここでガレは名声を高めました。

ガレは可憐でありながら、エネルギーみなぎる作品は、日本でも人気が高く、国内の多くのコレクターから愛されてきました。

自然をモチーフにしたアール・ヌーヴォーとは?

展示風景:『没後120年 エミール・ガレ展 奇想のガラス作家』(渋谷区立松濤美術館

アール・ヌーヴォー(フランス語: Art Nouveau)は、19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパを中心に花の様式と謳われた美術的運動です。

花や植物などの有機的なモチーフや自由曲線の組み合わせによる従来の様式に囚われない装飾性や、鉄やガラスなどを使用し華やかで美術的な製品が作られました。

ガレが、植物や樹木、昆虫といった「自然」をモチーフとしていたことはよく知られており、その背景には彼自身の植物に対する深い興味と愛情、さらには「自然の中にこそ美が存在する」という美意識があったとされています。

本展覧会について

展示風景:エミール・ガレ《猫型置物》1865-1890年代 大一美術館所蔵

ガラスの天才アーティスト・ガレの没後120年を記念して開催される本展は、これまで紹介される機会が少なかった国内の個人コレクターによる秘蔵品や私立美術館による所蔵品からなる約120点の貴重な作品を中心に、ガレの足跡を紹介していきます。

芸術はもとより、詩、文学、哲学、鉱物学、植物学などの幅広い知識を有しながら、それを生かしてガラス作家、アートディレクター、植物学者として多彩な活動を展開していきました。

多岐にわたる仕事の中で自然美を追求していく情熱と信念を持ち続けたガレの生き方は、さまざまに変化する時代を生きる現代の私たちにとってとても大きな力を与えてくれるでしょう。

さまざまな技法でみるガレ作品

展示風景:『没後120年 エミール・ガレ展 奇想のガラス作家』(渋谷区立松濤美術館)

会場では、初期の作品にはじまり、円熟期の代表作品、没後制作された量産品など、ガレの創造の成果だけでなく、その継承まで全体像を見つめる三章構成で紹介しています。

何層ものガラス層を重ねて生まれる複雑な色味の被せガラス、ガラス質の絵の具を低温で焼いて着彩するエナメル彩色、ガラスに別のガラスの塊を貼りつけて浮き彫りの状態を作り出すアプリシオンなど、いずれも高度な技術を要する類い稀な加飾法のもの制作された作品たちがご覧になれます。

展示風景:『没後120年 エミール・ガレ展 奇想のガラス作家』(渋谷区立松濤美術館)
     左から、《壺(貝)》1901年頃、《花器(タツノオトシゴ)》1901-1903年、《花器(海藻、貝殻)》いずれもエミール・ガレ作 個人蔵

陶芸や木工芸において多様な作品を創出したエミール・ガレは、寄木細工を指す象嵌技術であるマルケットリーというガラス工芸を導入し、独自のスタイルを模索しながら表現の世界を深化させていきました。

そして、ガラスの素地に立体的で流動的な加飾を取り入れ、さらに一つの作品の中でいくつもの技法を重ねて用いることで、ガラスを独創の工芸へと押し上げていったのです。

最後に

展示風景:エミール・ガレ《花器(プリムラ)》1906年 個人蔵

「自然を前にして感動すること。この無垢な美しさに心打たれること。命あるもののうつろいの早さを惜しむこと。傷心の日には、花という清らかはかない存在を心の友とすること。どれもが装飾芸術の秘訣なのです」。(E・ガレ)

という彼の言葉にもあるとおり、多様な技法によって生み出された美しくたおやかなガラス作品は、光によって刻々と変化する色彩や輝きが魅力であり、その作品で表現されている自然には普遍的な美を感じずにはいられません。

彼の作品に込められた情熱とともに、彼の人生の足跡に浮かび上がる信念を、本展覧会で確かめてみてはいかがでしょうか。

取材・撮影・文:新麻記子

【情報】
没後120年 エミール・ガレ展 奇想のガラス作家
会期:2024年4月6日(土)〜6月9日(日) 
   ※会期中、展示替えあり
   前期:2024年4月6日(土)~2024年5月6日(月・休)
   後期:2024年5月8日(水)~6月9日(日)
会場:渋谷区立松濤美術館
休館日:月曜日(4月29日、5月6日は開館)、4月30日、5月7日
ホームページ:https://shoto-museum.jp/exhibitions/203galle/