【東京国立近代美術館】『ガウディとサグラダ・ファミリア展』

今尚世界中の人々を魅了しつづけるガウディの偉業に迫る!

展示室入口

2020年、猛威を振るった新型コロナウイルス感染症により、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、なかなか訪れられない日々が続きました。

しかし、新しい生活様式のもと事前予約をはじめ、検温や消毒など徹底した感染症対策を行い、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべく、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。

そのような経緯から東京国立近代美術館にて開催中の『ガウディとサグラダ・ファミリア展』をご紹介したいと思います。

アントニ・ガウディとは?

写真:展示風景(学生時代の設計図など)

スペイン、カタルーニャ地方のレウス出身のアントニ・ガウディ(1852-1926)は、19世紀から20世紀にかけてのモデルニスモ期のバルセロナを中心に活動した建築家です。

サグラダ・ファミリア聖堂、カサ・ミラ、グエル公園をはじめとしたアントニ・ガウディの建築群は、ユネスコの世界文化遺産に登録されています。

写真:アントニ・ガウディ《クメーリャ革手袋店ショーケース、パリの万国博覧会のためのスケッチ》1878年 レウス市博物館

一度見たら忘れることのできないそのユニークな建築は、今尚世界中の人々を魅了しつづけるとともに、様々な芸術分野に影響を与えてきました。

ガウディは「人間は創造しない。人間は発見し、その発見から出発する」という彼の言葉のとおり、古今東西の建築や自然を丹念に研究することから、革新的な造形の契機をつかんでいきました。

本展覧会の見どころ

写真:展示風景

本展では、長らく「未完の聖堂」と言われながら、いよいよ完成の時期が視野に収まってきたサグラダ・ファミリア聖堂に焦点を絞り、ガウディの建築思想と創造の源泉、さらにはこの壮大な聖堂のプロジェクトが持っていた社会的意義を解き明かします。

図面のみならず膨大な数の模型を作ることで構想を展開していったガウディ独自の制作過程や、多彩色のタイル被覆、家具、鉄細工装飾、そして彫刻を含めたガウディの総合芸術志向にも光を当てています。

100点を超える図面、模型、写真、資料に加え、最新の技術で撮影された建築映像もまじえ、時代を超えて生きつづけるガウディ建築の魅力に迫ります。

ガウディの創造の源泉

写真:展示風景

会場では、「歴史」「自然」「幾何学」の3つのポイントから、ガウディ独自の建築様式の源泉とその展開に迫ります。

その独創性は、西欧のゴシック建築やスペインならではのイスラム建築、さらにカタルーニャ地方の歴史や風土など、自らの足元を深く掘り下げることで、時代や様式を飛び越える革新的な表現に到達したことにあります。

写真:左:アントニ・ガウディ《カサ・ビセンス、鉄柵の棕櫚の模型》1886年頃、右:アントニ・ガウディ《カサ・ビセンス、正面のセラミックタイル》1883年頃、いずれもサグラダ・ファミリア聖堂

筆者が特に関心を持ったのは、自然が生み出す形の神秘を貪欲に吸収し、そこから独自の法則を生み出したことがわかる展示でした。

植物のスケッチから、《カサ・ビセンス、鉄柵の棕櫚の模型》を生み出したり、鍾乳洞からヒントを得て、1878年パリ万国博覧会における水族館やカサ・バッリョの内観を制作したり、その自然の侵食造形をそのまま建築デザインに生かしています。

総合芸術であるサグラダ・ファミリア聖堂

1883年にサグラダ・ファミリア聖堂の二代目の建築家として就任したアントニ・ガウディは、1926年に亡くなるまでサグラダ・ファミリア聖堂の設計と建築に心血を注ぎました。

ガウディは図面のみならず、膨大な数の模型をつくり、それに修正を加えながら、外観や内部構造を練り上げていきました。

写真:展示風景

聖書の内容を表現する彫刻に取り組むほか、光と色の効果や音響効果にも工夫を凝らし、総合芸術の聖堂を構想しました。

ガウディ独自の制作方法をアトリエの情景とともに紹介しながら、残された写真と彼の手による模型や彫刻をもとに、計画案の変遷を明らかにしていきます。

最後に

写真:展示風景

偉大な建築家であるアントニ・ガウディとサグラダ・ファミリア聖堂のすべてが分かる圧巻の本展覧会。

サグラダ・ファミリア聖堂は、新型コロナウイルスの影響で一時中断していましたが、2020年秋に建設が再開し、2021年にはマリアの塔が完成しました。聖堂中央の最も高いイエスの塔は2026年までの完成を予定しているそうです。

これまで「未完の聖堂」と言われながらも、いよいよ完成の時期が視野に収まってきているこの機会に、ガウディ建築の豊かな世界に、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

取材・撮影・文:新麻記子

【開催要項】
ガウディとサグラダ・ファミリア展
会期:2023年6月13日(火)~9月10日(日) ※会期中一部展示替えあり
会場:東京国立近代美術館 1階企画展ギャラリー
住所:東京都千代田区北の丸公園3-1
開館時間:10時から17時まで、金・土曜日は20時まで(いずれも入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(ただし7月17日は開館)、7月18日(火)
展覧会公式サイト:https://gaudi2023-24.jp/

巡回:佐川美術館(2023年9月30日~12月3日)
   名古屋市美術館(2023年12月19日~2024年3月10日)