【パナソニック汐留美術館】「開館20周年記念展 コスチュームジュエリー 美の変革者たち シャネル、スキャパレッリ、ディオール 小瀧千佐子コレクションより」

2020年、猛威を振るった新型コロナウイルス感染症により、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、なかなか訪れられない日々が続きました。

しかし、新しい生活様式のもと事前予約をはじめ、検温や消毒など徹底した感染症対策を行い、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべく、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。

そのような経緯からパナソニック汐留美術館にて開催される「開館20周年記念展 コスチュームジュエリー 美の変革者たち シャネル、スキャパレッリ、ディオール 小瀧千佐子コレクションより」をご紹介したいと思います。

コスチュームジュエリーとは?

展示風景

20世紀はじめ、ポール・ポワレが嚆矢となり、シャネルによって広く普及したコスチュームジュエリー。

本物の貴金属や宝石は使用せずデザイン性にこだわったイミテーションの装飾品で、本物の貴金属の代わりにメッキ加工を施した合金を使用していたり、宝石の代わりにガラスや樹脂を使用しています。

各ブランドのオートクチュールコレクションのために生み出されたため、トレンドやコンセプトに合わせ、ファッション性を重視してつくられており、デザイン性が優れているのが特徴です。

また、宝石や貴金属といった素材の既成概念から解放され、衣服との組合せの魅力によりパリのモード界では不可欠の要素となり、やがてアメリカにも注目されるようになり、世界中へと広がっていきました。

本展について

展示風景

本展は、コスチュームジュエリーの展開を包括的に紹介する日本初の展覧会です。

ディオールやスキャパレッリなどオートクチュールのコレクションのために生み出された作品はもちろん、それらのブランドからの依頼も受けたジュエリー工房による卓越した技術の精緻なネックレスやブローチに、リーン・ヴォートランやコッポラ・エ・トッポらによる独創的な逸品、そしてミリアム・ハスケルやトリファリに代表される、幅広い層に支持されたアメリカン・コスチュームジュエリー。

これらを、国内随一の小瀧千佐子氏によるコレクションから、選りすぐりの400点あまりの作例を通じて紹介するとともに、各デザイナーが素材の自由を獲得することで生み出した、それぞれの様式美を探ります。

本展の見どころ

オートクチュールメゾンとジュエリー職人のコラボレーション

展示風景

大胆さや繊細さ、豪奢さや可憐さ、新しさや古典回帰など、服飾のデザイナーの求めるいかなる方向性のジュエリーデザインも、高い技術を持った職人や工芸家がかたちにしました。

富や地位の象徴としてではなく、あくまでも美しい装いのための要素として、そのデザインと着け心地の良さを実現するために、高い技術と的確な素材選定で制作されたそうです。

『第Ⅰ章 美の変革者たち オートクチュールのためのコスチュームジュエリー』では、20世紀パリを中心としたヨーロッパのオートクチュール界におけるコスチュームジュエリーの諸相と各メゾン(ブランド)のコラボレーションによる展開がご覧になれます。

展示作品からヨーロッパのコスチュームジュエリーが醸し出す美しさの理由を探ってみてください。

独創的で斬新、アートピースに昇華したコスチュームジュエリー

コッポラ・エ・トッポ 《チョーカー「花火」》デザイン:リダ・コッポラ、1968年、クリスタルガラス、ガラスビーズ、ワイヤー、メタル、小瀧千佐子蔵

故郷イタリアの素材であるヴェネチアのガラスビーズを好んで使用したリダ・コッポラや、若い時期からアトリエで鋳造や彫刻制作を行っていたフランスのリーン・ヴォートランなど、素材の扱いに長け、斬新な造形力に満ちたデザイナーによる、他に類を見ない装身具が多数出品されます。

『第Ⅱ章 躍進した様式美 ヨーロッパのコスチュームジュエリー』では、それぞれに特徴的な熟練した技術をもって制作し、古びることのない作品を多く生み出したコスチュームジュエリーの工房(アトリエ)を紹介しています。

いずれの作品も身に着ける事の出来るアート作品ともいえるでしょう。

幅広い層に支持され愛用されたアメリカのコスチュームジュエリー

展示風景

ヨーロッパで生まれたコスチュームジュエリーは、1940年代以降はハリウッド映画に登場する女優たちのスタイルから、コスチュームジュエリーはアメリカの女性たちにも人気となり広まっていきました。

また、戦争の影響によりユダヤ系の腕の良いジュエリー職人がアメリカへ移住したことも、アメリカのコスチュームジュエリーが大きく花開いた要因の一つです。

『第Ⅲ章 新世界のマスプロダクション アメリカのコスチュームジュエリー』では、ヨーロッパの伝統的なコスチュームジュエリーから、使用される素材など自由度を増して発展していった、アメリカのコスチュームジュエリーがご覧になれます。

最後に

スキャパレッリ《ネックレス「葉」》デザイン・制作:ジャン・クレモン、1937年頃、クリアエナメル彩メタル、メタルメッシュ、個人蔵

コスチュームジュエリーの歩みを400点あまりの作例を通じて包括的に紹介する本展。

会場では、所狭しと作品が展示されており、作品との距離も近くで楽しめるので、デザイナーたちが生み出した造形や職人たちによる繊細な手仕事をじっくりと鑑賞できるのも嬉しいポイントです。

本物の貴金属や宝石は使用しないイミテーションの装飾品にもかかわらず、作家たちの手に汗滲む努力の結晶であるとともに、自由な発想と独創的なデザインからなる、美しいコスチュームジュエリーは、当時のセレブリティはもちろんのこと、私たち鑑賞者の心をも虜にすること間違いなし!

ぜひ心躍るコスチュームジュエリーの世界に浸ってみてはいかがでしょうか。

取材・撮影・文:新麻記子

【情報】
開館20周年記念展 コスチュームジュエリー 美の変革者たち
シャネル、スキャパレッリ、ディオール 小瀧千佐子コレクションより

会期:2023年10月7日~12月17日
会場:パナソニック汐留美術館
時間:10:00~18:00
   11月10日・12月1日・15日~16日/~20:00(いずれも入館は閉館30分前まで) 
休館:毎週水曜(12月13日は開館)
ホームページ:https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/23/231007/#exhibition-detail-moredetail