【麻布台ヒルズギャラリー】「オラファー・エリアソン展: 相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」

展示風景:《蛍の生物圏(マグマの流星)》2023年 オラファー・エリアソン

アイティーエル株式会社では、一人でも多くの方が美術館や博物館を訪れるきっかけとなるべく、2020年7月より【ミュージアム・レポート】を開始いたしました。

困難な状況下においても美術館・博物館ではさまざまな企画や対策をおこなっていることから、全てのアートシーンに対してこれからも変わらず応援していくべく、アイティーエルも継続して情報を発信していきたいと思います。

今回、ご紹介するのは麻布台ヒルズギャラリーにて開催中の「オラファー・エリアソン展: 相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」です。

麻布台ヒルズギャラリーについて

ギャラリーの外観

11月24日(金)より東京・麻布にオープンしたアートやエンタメなどを発信する麻布台ヒルズは、“Green&Wellness”をテーマとした多様な都市機能が揃い、全体で面積約9,300m² の文化施設を展開しています。

ヒルズ内の中央広場を中心に奈良美智氏をはじめとするさまざまなパブリックアートがご覧になれるほか、2024年2月にはお台場で世界中から圧倒的な人気を博した「森ビル デジタルミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」の開館予定です。

その中のガーデンプラザA内にある美術館仕様の設備を備えている『麻布台ヒルズギャラリー』では、開館記念展として「オラファー・エリアソン展: 相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」を開催しています。

オラファー・エリアソンとは?

撮影:Lars Borges

アイスランド系デンマーク人であるオラファー・エリアソン(1967年、デンマーク生まれ)は、環境問題などの社会的課題への積極的な取り組みで世界的に注目されているアーティストです。

1995年、ベルリンに移住し、スタジオ・オラファー・エリアソンを設立。スタジオのチームは、職人をはじめ、建築家、研究者、管財人、料理人、 美術史家、専門技術者、アーキビスト、プログラマーからなる大規模なメンバーによって構成されています。

1997年以来、絵画、彫刻、写真、映像、建築、デザイン、ドローイング、インスタレーションなど、ジャンルを横断する多様な作品を発表し、世界の主要美術館で個展を開催しています。

展示風景

エリアソンの作品は、知覚、身体化された体験、エコロジーへの関心を原動力とし、自然現象やその要素である色彩、光、動きを用いて、鑑賞者を新たな知覚体験へ誘い、世界の在り方や自然との関係性についての新たな解釈をうながします。

人間と自然環境との間に生じるもつれに焦点を当て、未来を形作る上で私たちが共有する責任について問いかけ、美術館やギャラリーの枠を超えるエリアソンの実践は、インスタレーション、絵画、彫刻、写真のほか、建築、公共空間との関わり、美術教育、政策立案、気候変動対策など多岐にわたります。

2019年には国連開発計画による再生可能エネルギーと気候変動対策の親善大使に任命され、2023年には第34回高松宮殿下記念 世界文化賞の彫刻部門を受賞しました。

本展覧会について

展示風景:《瞬間の家》 (2010年)

本展覧会では、麻布台ヒルズ森 JPタワーのオフィスロビーに設置された、 オラファー・エリアソンによる新作のパブリックアート《相互に繋がりあう瞬間が 協和する周期》(2023年)で取り組んだ主題を軸に、新作インスタレーションや水彩絵画、ドローイング、 立体作品を通し、線や振る舞い、動きなどのモチーフを探求します。

ギャラリー内では、彼が手がける全長20mの大型インスタレーションのほか、世界初公開の作品や食のコラボレーション企画が楽しめる、期待が高まる本展覧会の見どころをお伝えします。

副題:相互に繋がりあう瞬間が協和する周期について

写真:《相互に繋がりあう瞬間が協和する周期》(部分) 2023年 展示風景: 麻布台ヒルズ森 JPタワー オフィスロビー、2023年 撮影:木奥 恵三

新作のパブリックアート《相互に繋がりあう瞬間が協和する周期》(2023年)は、天井高約15mの吹き抜け空間に連続的に吊るされた、直径約3mにおよぶ4つの彫刻により構成されています。

スタジオ・オラファー・エリアソンが長年続けてきた幾何学的形体の研究や地質学的な時間に対する概念的な問いに基づき、初めて再生金属が使われました。

彫刻の形状は、ひとつの点がねじれながら移動する軌跡を描いたもので、人々の行動、求心力、自由に動くダンスなど、あらゆるものの運動を表現するかのようでもあります。

徐々に複雑になるこれらの形は、 振動を表すリサジュー曲線に着想を得て、そこからダイナミックな立体に転換され、菱形、凧型、三角形で構成される十一面体を繋ぎ合わせることで全体が形作られています。

お土産にできるドローイング

展示風景より《終わりなき研究》(2005年)

会場では、光と水を使った大型インスタレーション 《瞬間の家》(2010年)をはじめ、複雑に屈折する光を内包する幾何学立体の《蛍の生物圏(マグマの流星)》(2023年)、 太陽光や風といった動力で描いた新作ドローイングなど、自然現象から幾何学、物理や動作パターン、色彩学に関する研究に裏付けられた、知覚に訴えかける作品群を紹介します。

その中でも、特に筆者が素敵だと感じたのは、19世紀の数学者が発明した機械ハーモノグラフを使用し、太陽光や風力などの自然エネルギーと、振り子の動力のみで稼働し、ドローイングを生成する《終わりなき研究》(2005年)です。

こちらは3つの振り子を動かすことで、そのうちの2つの振り子の連結部に取り付けられたペンが、もうひとつの振り子にある台に置かれた紙に、振り子の運動のリズムが描き出され、動かす角度や力の加減により、ドローイングのできあがりが異なります。

鑑賞者は自らこの機械を操作して描かれたドローイングを持ち帰ることができるので、展覧会鑑賞の思い出としていいと感じました。(※有料オプションなので注意してください)。

食を通じた日本初のコラボレーション!

店内風景:スタジオ・オラファー・エリアソン キッチンとのコラボカフェ

麻布台ヒルズギャラリーカフェでは、本展覧会の会期中限定で、 スタジオ・オラファー・エリアソン・キッチン(※)とコラボレーションし、東京近郊の食材を使用した特別メニューを考案しています。

ベルリンにあるエリアソンのスタジオに日本からシェフを派遣し、本展覧会のためのオリジナルメニューを共同開発。スタジオの創作的な家庭料理を楽しみながら、彼らの姿勢や環境に対する考え方に触れることができます。

スタジオ・オラファー・エリアソン・キッチン(※)… 週に3日食事が提供され、スタジオのチーム全員と、訪れたゲストやコラボレーターが家庭的なスタイルで分かち合います。オーガニックで、CO2排出量を抑えたヴィーガン・ベジタリアン対応の食事には、 近郊の有機農場で採れた旬の野菜が使われています。

取材・撮影・文:新麻記子

麻布台ヒルズギャラリー開館記念
「オラファー・エリアソン展:相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」
会期:2023年11月24日(金)~2024年3月31日(日)
会場:麻布台ヒルズギャラリー(東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザAMB階)
開館時間:月水木日 10:00-19:00
     火    10:00-17:00
     金土祝日・休日の前日   10:00-20:00
ホームページ:https://www.azabudai-hills.com/azabudaihillsgallery/sp/olafureliasson-ex/