【大原美術館】コレクション

国内で鑑賞できる貴重な西洋と日本の近現代の絵画が集結!

美術館外観

まだまだ新型コロナウイルス感染症により、美術館、博物館、ギャラリーなどの文化施設に、気軽に訪れられない日々が続いています。

しかし、そんな状況下に負けじとオンラインチケットで密を防ぎ、検温や消毒など徹底した感染症対策を行いながら、運営に努める施設関係者の思いに応えられるように、一人でも多くの方が美術館を訪れるきっかけとなるべく、展覧会の模様を伝える【ミュージアム・レポート】をスタートしました。

今回は、岡山県の人気スポットである倉敷美観地区内に佇み、豊富な近現代美術中心のコレクションを堪能できる、大原美術館をご紹介します。

美術館外観

伝統的な建物が作り出す町並みや、倉敷川沿いのレトロモダンな風景など、趣ある景観が楽しめる倉敷美観地区にあり、歴史とアートが交差する美しいこの土地のシンボリックな存在の大原美術館。

地元の実業家である大原孫三郎(おおはらまごさぶろう)が、親交の深い岡山県出身の洋画家・児島虎次郎(こじまとらじろう)を通じて作品収集させ、1930年に日本初の西洋美術中心の私立美術館として創立しました。

美術館は「本館」「分館」「工芸・東洋館」3つの建物に分かれており、20世紀・21世紀の西洋美術や日本美術、民藝、東洋古美術、古代オリエント・イスラム、ヨーロッパの古美術など、多岐にわたるジャンルの作品がご覧になれます。

今回、コロナ禍でエリアを縮小していることもあり、「本館」を中心にレポートします。

美術館外観

入館してギリシア・ローマ風の古典様式の門を潜って第一展示室に歩みを進めると、大原美術館の設立に貢献した岡山県出身の洋画家・児島虎次郎による『和服を着たベルギーの少女』がお出迎え。

日本と西洋のエッセンスが合わさり、華やかな色彩が印象的な本作は、大原美術館の理念や倉敷という街の文化を象徴する作品のようです。

また、作品の裏側に回るとこの1点:モーリス・ドニの『波』が展示され、その横には学芸員さんによるメッセージボードがあり、作家や作品について深く知ることのできるので、そちらも合わせて目を通してみてください。(※作品の時期によって解説は変更あり)

その他にも、児島虎次郎がクロード・モネのアトリエを訪れて直談判し、モネ本人が特にお気に入りだった作品を 譲ってもらったというエピソードがある『睡蓮』をはじめ、ルノワール、セザンヌ、ゴーギャンなど、印象派を代表する有名画家による数多くの名画が展示されています。

第一展示室から開放感ある吹き抜けに移動し、階段を登って第二展示室に移動すると、そこにはフォーヴィスムのマティスやキュビスムのピカソなど、20世紀を代表する有名画家たちの作品がご覧になれます。

その中でも、会場を訪れた者を圧倒的な迫力で魅了するのが、展示壁一面に7枚にわたって描かれている、レオン・フレデリックの『万有は死に帰す、されど神の愛は万有をして蘇らしめん』。

本作の一部には戦争で亡くなった娘が描かれており、簡単には手放せないほど思い入れがありましたが、虎次郎が直接作家のアトリエを訪ねて、熱意を伝えて購入にこぎつけたそうです。

この作品からは、戦争に対する憤りや深い悲しみ、平和への希望が伝わってきますね。


そして、大原美術館を訪れたら必ず鑑賞していただきたいのがエル・グレコの『受胎告知』。

かぎりなく深い神秘的な闇に包まれた夜空に、突然眩いばかりの光芒を発して天使が登場し、キリストを身ごもったことを聖母マリアに告げる、ドラマティックなワンシーンを描いています。

グレコ作品を国内で鑑賞できるのは岡山の大原美術館と東京の国立西洋美術館の2館しかないんです。

エル・グレコ《受胎告知》1590年頃-1603年

その他、本館のエリアでは藤田嗣治や青木繁など日本近代美術を代表する画家の絵画作品や、普段は「分館」にて鑑賞できる現代美術の絵画作品など、本絵画・彫刻合わせて約90点を常時展示しています。

今回、取材に訪れたタイミングがよかったのか…「工芸・東洋館」の入口の池にはモネの邸宅から株分けされた睡蓮が咲いていました。

先述にもあるように、児島虎次郎がモネ本人と交流があったことを考えると、日本にもたらしてくれた文化的財産だけでなく、日本とヨーロッパの橋渡となる役割を担ってくれていたのだと想像できることでしょう。

大原美術館を訪れた際には、本物の西洋絵画に触れる機会が少なくなった時代に、絵画を学ぶ人たちのために 優れた作品をもたらしてくれた、大原孫三郎と児島虎次郎の2人の友情に思いを馳せながら、絵画鑑賞を楽しんでみてください。

また、同じ美観地区内にある元中国銀行の建物を美術館にリノベーションし、2021年10月から「新児島館(仮称)」として暫定開館するそうです。

そちらの吹き抜けの空間には現代作家のヤノベケンジ氏による大型の作品展示と、ミュージアムショップによる期間限定ショップを展開します。

自由に入館できる館となる新しいアートスポットに注目ですね!

取材・文:新麻記子 撮影:樋口代華

大原美術館 コレクション
会場:大原美術館
住所:岡山県倉敷市中央1丁目1-15
営業時間:9:00~17:00(16:30入館締切)
定休日:月曜日(祝日の場合は開館)
料金:大人1500円、高校生以下500円
公式サイト:https://www.ohara.or.jp/
※コロナ禍のため開館日や開館時間に変更がある場合がございます。 公式サイトやSNSを参考になさってください。